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37.帰って来たモーソイ

 俺は、ヘンリー王子に呼び出された。

 今後のダンジョン攻略について相談したいという事だ。


 入院中のロバート君を除くパーティー全員で、王子の執務室にお邪魔した。

 なぜか、妹のプラムまで付いて来た。



 王子の執務室には、モーソイがいた。

 プラムは、(アチャー、ついて来るんじゃ無かったー)って顔をしている。


 王子は、俺達が部屋に入ると間髪入れずに話し始めた。

「まず最初に状況を共有したいと思うのだが、すごい陣容だな。

 男性はブクロー氏一人で、美女を4人も連れてご登場とは」


「3人は、パーティーメンバーです。

 一緒に旅をしたので、王子も知っておられるメンバーです。

 もう一人は、妹のプラムです」


 王子が反応する。

「これは、美女と名高い3人と一緒にいても見劣りしない、本当に愛らしい妹さんですね。

 プラムさん。付き合っている方とかはいらっしゃるのですか?」

 王子の後ろで、聖女カマラさんが咳払いをしている。

「陛下、この様な場で女性を口説かれるのは、いかがなものかと」

 モーソイも苦虫を嚙みつぶしたような顔だ。


「お兄。ヘンリー王子って、遊び人なの?」

 プラムが小さな声で聞いてくる。

「いや、分からん。冒険中は、特に女好きな感じはしなかったけどな」


 しまった。静かな部屋なので、丸聞こえみたいだ。

 王子の顔が真っ赤だ。

「余、余は、女性に対しては、真面目だ。

 冒険パーティーも、ちゃんと王国で最高の陣容を基準にしている。

 ブクロー氏のようなハーレムパーティーなんて、組もうと考えたこともない」

 ええーっ? それじゃまるで、俺が遊び人みたいじゃないですか。


「プラムさん。『ティーヘイン・ショック』も今は男性の方が多いんですよ。

 俺も、女性に対しては真面目ですから」

 モーソイも乗っかってくる。


 俺も、俺も女性に対しては真面目ですからと言いたい。

「ブクちゃんは、女性の下着とかに興味津々だもんねー」

 ソラの一言で言えなくなった。


「お兄。それ本当?

 それって、私の下着にも劣情を感じたりしているの?」


「い、いや、実の妹の下着に興奮したりは……」


「「ゴホン」」

 さすが師弟関係だ。

 カマラさんとイノリが同時に、大きく咳払いをした。



「脱線したな。申し訳ない。

 まず最初に、状況を共有したいと思う」

 王子が、話を戻した。


 だが、ここで話を切られると、俺が女好きで女性の下着が好きで、自分の好みでハーレムパーティーを組んでいるみたいじゃないか。


「ここ数日アタイ達は、次の冒険に備えた準備しかしてませんよ。

 何も情報を出せませんけど」

 リサが、話の流れをぶった切るように、いきなり意見を言う。

 モーソイの存在が、気になるのだろう。声が大きい。


 王子が、リサを落ち着けようという感じで話す。

「それは、分かっている。

 我々のパーティーも似たようなものだ。

 ただ、我々は騎士団から補充を受けられるから、またフレッシュなメンバーが加わることになる。

 したがって、君たちより準備期間が短くて済むのは間違いない。

 君たちも、人員補充が必要なら言ってくれよ」


「リサが話の腰を折ってしまって、申し訳ございません。

 それで、状況の共有とはどのような内容でしょうか?」

 イノリが、王子に頭を下げる。


「うむ、まず我々は今回引き返したとはいえ、41階まで進出することが出来た。

 S級ダンジョン『悪魔の母(デモンズマザー)』は、恐らく50階までだと考えられる。

 あと5カ月の猶予に対して、君たちの速度なら3カ月かからずに踏破することも夢ではない」


「王子。単純計算すればそうかも知れませんが、今回の地下35階のような罠にかかれば、数か月停滞することも十分考えられます。

 油断するのは、危険です」

 イノリが、たしなめるように意見する。



「そうだな。それに対して、2通りの対策を考えている。

 その前提なんだが、ここにいるのは君たちも良く知っているモーソイ氏だ」


 ゲッ、まさかモーソイを俺たちのパーティーに入れろとか、モーソイのパーティに俺達を吸収とかじゃ無いだろうな。

 そんなことされたら、元通りのメンバーに戻ってしまう。

 そんで、リーダー交替とか…… それは、最低だな。


「アタイは、そいつとは関わりたくないぜ。

 クビにされちまったんだからな」

 リサが、自分の首にチョップを当てる仕草をする。


「それは、お前がブクローのやつと一緒にいたくて、俺をダマしたからだろうが」

 モーソイも言い返す。


 王子が、困った顔で二人を止める。

「二人とも待ってくれ。

 『ティーヘイン・ショック』は、チームワークが素晴らしいパーティーだったと聞いているんだが、違うのか?」


「はい、その通りです」

「いや、モーソイのやつがそんなこと言ってただけだ」

 モーソイとリサが同時に違う事を答える。


「ブクロー氏。どっちなんだ?」

 王子が、俺に振ってくる。


「チームワークはイケてましたけど、前衛の二人は仲が悪かったといったところでしょうか」

 無難に答える。


「まあ、それは良いとしてモーソイ氏は『ティーヘイン・ショック』で『アバドンのボレロ』攻略に出かけているはずが、ここにいる。

 疑問に思わないか?」


「ええ、とても」

 俺は、警戒しながら答える。


「実は、彼らはS級ダンジョン『アバドンのボレロ』を攻略して帰って来たんだ。

 S級ダンジョンは、世界に6個あってそのうちの一つを攻略したわけだ。

 最強ダンジョンを攻略できれば、それだけで大魔王の発生は防ぐことが出来るが、その他のダンジョンだと、残り5個中3個攻略しなければ、大魔王の発生を防げないことは知っているよね」

 王子は丁寧に説明してくれる。


「はあ」

 生返事になってしまう。

 『ティーヘイン・ショック』は、今の世界唯一のS級ダンジョン攻略パーティーってことだ。

 S級ダンジョンの中にも序列があるから、41階で引き返してきた俺達をどう考えるか次第だが。


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