21.最難関ダンジョン攻略開始
姫様を襲った生き残り3人に話を聞いたが、やはり俺の収納魔法の行き先は相当恐ろしい場所だったようだ。
薄っすら霧がかかっていて、広さは分からないが、見える10メートル四方には壁や天井は無かったそうだ。
腐った肉片や色んな物の破片が散らばっていたそうで、地獄のような光景らしい。
霧は、薄い緑色で毒を含んでいるのか、吸い込むと喉や肺が痺れるという。
おそらく、毒を持ったモンスターを丸ごと収納していたせいで、死体から毒が放出されたか、石につぶされて飛散したかのどちらかだろう。
今は転がる丸い石も無い。
フロアボスが、それまで収納していたモンスターを退治したはずだ。
モンスターの生き残りはほとんどいないだろう。
ただ、毒の霧が立ち込めているのは怖いな。
やはり、人間を収納するのは拙そうだ。
あと、いくら毒の霧が立ち込めていると言っても、フロアボスには全く効かなかった。
今回のフロアボスの場合は、収納から出てくる場所が袋の口の先だから効果抜群だったが、出し入れだけでは、意味がない。
フロアボスの場合は、倒さないとフロアから出られないことも分かった。
他のモンスターのように収納しただけだと、ダメだ。
敵を倒すのに、俺のスキルは役立たない。
そんなことを考えながら、パーティーの部屋に戻ると、部屋が金庫だらけになっていた。
「この大量の金庫は、何だ?」
どうやら皆、ダンジョンに持って行きたい荷物を金庫に詰めていたらしい。
「名前を覚えられないと思ったので、リストを作っておきました」
イノリが、紙を渡してくる。
ざっと見てみる。
「着替え用金庫、体力回復金庫、魔力回復金庫、治療薬金庫、燃料金庫、調味料金庫、……
すごい数だな、おい」
「食糧も持って行きたかったのですが、何カ月もかかるかも知れません。
金庫の中でも物は腐るので、調味料の金庫を用意しました」
さすがはイノリだ。
長期の地下迷宮攻略の時は、キノコやモンスターの肉を調理して食べないといけない。
あの金庫一杯の各種調味料があれば、かなり助かりそうだ。
「ボクのリストはこれだよ」
ソラも紙を渡してくる。
「戦うキンちゃん、毒のキンちゃん、いこいのキンちゃん、恥ずかしいキンちゃん、……
ソラの金庫はキンちゃんなんだな?」
「ブクちゃんも名前を付けてたからね。
ボクは、キンちゃんで統一したんだ」
恥ずかしいキンちゃんの中身が気になる。
「アタイは、これな」
リサのリストは、どれどれ。
「着替え入れ、おやつ入れ、武器の手入れ道具入れ。
おお、リサのはまとまっているな」
おやつ入れだけで大きな金庫を用意しているのが、リサらしい。
「自分は一つだけで十分なので、リストは作っていません」
ロバート君は、女性陣と違って荷物が少ない。
と言っても、みんなが用意した金庫は一個一個が俺のキンタ君たちの10個分以上の容量がありそうだけどな。
金庫で埋め尽くされていると食事も出来ないので、ドンドン収納していった。
その翌日、みんなで買い物して夜に激励会をした。
買い物に行ったせいで、女性陣の荷物がまた増えた。
そして、出発の日が来た。
検問所の前でプラムたちお見送りの人たちとお別れして、俺たちはダンジョンに入って行った。
「お兄、無事に帰って来てね」
プラムの心のこもった言葉が耳に残る。
前回同様、順調に進んでいく。
地下3階でルシアさん達は引き返していく。
化け物じみた強さのパーティーだから勘違いしそうになるが、このダンジョンの難易度は普通じゃない。
地下3階から地上に戻るのも、相当危険だ。
特に、姫様は無傷で生還しないといけない。
よく知らないが、王族の間でのもめごとが大変みたいだ。
ここで引き返しておかないと、危険なのだ。
本当の所、俺一人だったら最初のモンスターハウスすら突破できない。
目に付く敵を収納している間に、他のやつに攻撃されたら終わりだからな。
去り際にルシアさんが、俺の目をジッと見て話す。
「ブク様。戻って来られる前に、きっと手続きを済ませますからね」
「手続き? 何の手続き?」
横にいたソラが、質問する。
「オホホホ
私は、権謀詐術渦巻く王室で生きています。
戻って来られた時の、あなた方のお顔が楽しみですわ」
なぜかルシアさんは、ロバート君の方を注視して答えを返す。
ロバート君は、見つめられて戸惑っている。
「何か、嫌な予感がするわね」
イノリが、ソラと顔を見合わせている。
「ブクちゃん。何の手続きなの?」
ソラが聞いてくる。
「い、いや、何なんだろうな?
は、ははは」
ちょっと不自然かな。
イノリの目線が鋭い。
遠征一日目は、地下5階のボスフロアにテントを張って、ゆっくり休んだ。
このフロアは敵が来ない。
安心して、ぐっすり眠った。
ルシアさん達が抜けても、戦力の低下は全く感じられない。
「毎日5階層ずつ進んでいけば、毎日ゆっくり寝られるな」
リサが、能天気なことを言う。
「そんなことが出来たら、一週間で地下32階を越えていけることになります。
単純に、ここからは一日一階層以下しか進めないことも覚悟しないと、心が挫けますよ」
イノリが、甘い考えを嗜める。
リサとロバート君は、武器を大槌に持ち替える。
片側がハンマー、もう片側が斧になっている武器だ。
地下なので時間の間隔が失われそうだが、起きてから二人で武器の素振りなどをして、しっかり備えている。




