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18.パーティーの弱点

 今回の出陣の目的は、新メンバーの実力見極めと連携確認だ。

 地下3階で引き返すことになっているので、姫様たちは最後まで付き合うことになっている。


 前衛にリサとロバート君。

 ロバート君は全身をフルプレートメイルという金属製の甲冑で固めている。

 見かけによらず、力持ちのようだ。

 剣と盾を持って、まさに騎士団の精鋭って感じだ。


 その後ろに、ソラとイノリの戦闘支援コンビが並ぶ。

 そして、ルシア姫と護衛二人が付いて行き、しんがりは俺だ。


 まず、ルシア姫がリサに何かを渡しているのが見える。

「リサさん。あなたの弱点は魔法防御力が全く無いことです。

 ですから、この魔法防御のペンダントを付けて下さい」


「おお、そんな便利なものがあるのか。

 サンキュー」

 リサは、もらったペンダントを首からかける。


「ただし、魔力には限りがありますから、必要に応じてオン、オフを切り替えてくださいね」


「おう。アタイは絶対切り忘れるからな。

 ブク、管理を頼む」

 いきなり俺かよ。


 イノリが、口をはさむ。

「どうせ、定期的に聖なる魔力を補給しなきゃいけないんでしょ。

 私が魔力を注入する時に、ちゃんとチェックしてあげるから大丈夫よ」

 おお、助かる。


 ルシア姫が、俺の方に来る。

「それからブク様。

 あなたは、盾が大きすぎます。

 そんな盾では前が見えませんし、リサさん同様魔法は防げません。

 この盾を使って下さい」

 ルルさんから、上等そうな盾を渡される。


 今までのと大きさは、あまり変わらないけど随分軽い。

 それに、のぞき窓が付いていて前が見える。

 ファイアワンドとかで魔法を打ち出すための銃眼のような切り込みまであって、まるで俺専用みたいだ。


「ブク様の戦い方に合わせた、オーダーメイドですのよ」


「こりゃすごいや。姫様ありがとう」


「まあ、姫様なんて水臭い。

 ルシアとお呼びください」


 良いのかな? 不敬罪とかで捕まったりしないよね。

「じゃあ、ありがとう。ルシアさん」


「いいえ、ほんの気持ちですわ。ポッ」

 なんだ? 最後のは?


「ねえねえ、ボクたちのは?」

 ソラが聞く。


「あなた方への支援は、この遠征中の戦いを見て判断いたします。

 もし目に見えて弱点が無いようでしたら、下手にアイテムをお渡しすることで、かえって支障をきたすこともあり得ますから」


「別にお金でもらっても……フゴフゴ」

 ソラの口をイノリが塞いでいる。

「そうですわね。

 私たちには弱点なんかありませんから、今のままで大丈夫ですわ」




 さて、モンスターハウスのドアだ。

「入る時、たった一日でもモンスターが復活していたけど、地獄の瘴気っていうやつが働いているのかな?」


 質問すると、イノリが答えてくれる。

「恐らく、その通りでしょう。

 ただ、倒すたびにグール百匹分の瘴気を消費するのではないですか?

 だとしたら、何度も反復すれば魔王の復活を遅らせることも可能なのでは?」


「確かに、その通りです。

 攻略を進めれば、地獄の瘴気が消費されて魔王の復活が少しずつ遅くなるはずです。

 ただ、ここでグールを何百匹も倒すよりも、下層で上級の悪魔を倒す方が、はるかに地獄の瘴気を消費することにつながります」


「そうか、じゃあドンドン進んだ方が良いんだな」

 そう言うと、リサが扉を開ける。


「えっ、いきなり?」

 ロバート君が、驚いている。


 ゴイーンッ


 すごい音がする。

 ロバート君の兜の上から、リサのげんこつが落ちたのだ。

「おいロバ、ボーッとすんな!

 前衛が、敵を倒さないとパーティーが危なくなるだろ」


「はいっ」


 前衛の二人が飛び込んでいったので、茫然ぼうぜんと立っていたソラ達の目の前で扉が閉まってしまった。



 数分で扉が開いた。

 俺達が扉を通ると、またグールたちが湧いてきた。

 どうやら時間ではなく、こちら方向から扉を通るとモンスターが湧くようだ。


「ロバ! 右は任せた」


「はいっ、お任せください」


 前衛二人は中々強い。

 コンビネーションも即席コンビとは思えない。


「ハア、ハア、ロバ、お前、なかなかやるじゃん」

 敵を倒しきって、リサがロバート君とハイタッチしている。


「これは、すごい戦力アップしてるんじゃないか?」

 俺は思わず、つぶやいてしまった。


「アタイ達の目に狂いは無かったってことだよ」

 いや、リサ。お前、真面目に選んでなかっただろ。


「リサ先輩も、すごいっす。

 こんな戦えるパーティーに加入できて光栄っす」

 ロバート君、素直で可愛いな。



 前衛の二人の戦力がすごい。

 地下2階に降りる階段まで、あっという間だ。

 誰も傷一つない。

 何せ、前衛しか戦っていないのだから。


 いよいよ問題の地下墓地だ。


 チリーン


 あの黒いフードの修道士が3人並んで、こちらに向かってくる。

 隠れようともせずにイノリが、ズンズン前に出る。


「聖魔法、上級ハイグレードターンアンデッド」


 イノリが構えた、木で出来たスタッフから光が照射される。

 あの俺たちを苦しめた修道士が、何をすることもなく浄化されて消えてしまった。


 こ、こいつら何者?

 って、そうか。これがS級パーティーなんだ。


「地下3階も、地下墓地ですよね」

 イノリが確認する。


「そうですが、これでは弱点の診断など出来ませんね。

 地下4階まで、地下墓地が続くのです」

 ルシアさんは、『プリンス・プディング』が持ち帰った32階層までの情報を持っている。


「S級ダンジョンでは、5階層ごとにフロアボスを倒さないと進めないと聞いたことがあります。

 今回は地下5階まで行ってみてはどうでしょうか?」


「そうですね。少なくともそれ位は行かないと、このパーティーの力は見えませんね」

 聖女二人で相談して決めているが、一つだけ言わせてもらおう。

 (いや、実際には心の中でしか言わないが)

 このパーティーのリーダーは、俺だ。


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