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第74話 ときめき?ふたりの事情聴取!

「で、なんなんですかあの娘」


「そんなもん、俺が知りてえわ」


クッチャクッチャとお行儀悪くデミグラスソースのかかったヒレカツを頬張り山盛りのキャベツを噛み締めるガメツ・ゴーツク神父を訪ねると、帰ってきたのはウンザリとしたような表情とため息だけだった。


「13使徒なんて呼ばれようが俺らは所詮ただの中間管理職だよ。女教皇と女だらけの異端審問官どもだけが真実を握ってて、こっちにゃ碌に事情を明かしもしねえ」


「それは単に、あなた方が信用ならないタヌキジジイどもだからってだけでは?」


「ちげえよ!女神教ってのは女好きの女どもの寄せ集めなのさ。男なんて不潔で汚らわしくて気持ち悪い、悍ましい生き物だからってんで、形ばっかりの13使徒なんて肩書きを与えて外国へ追いやって、本部は見目麗しい美女や美少女ばっかりがキャッキャウフフしてやがんだ」


紙ナプキンで口を拭い、グビグビとビールを飲み干したガメツの爺さん。ゲップとかクチャクチャ食いとか、そういう下品なことばかりしているからそう思われているのでは?とはあえて言わずにおく。


「聖女候補だから大事に面倒みろっていきなり言われてよお、しかも異端審問部隊『ディヴァインエイト』のリーダー、毒草のサミコのお出ましと来やがった。教会内でも俺はほとんどノータッチだぜ。ミサの時以外は近づかせてももらえねえからな」


「なるほど。メスガキ部隊の隊長までお出ましということは、確実に何かがあることは間違いなさそうですね」


こんな時、メーガーミーツに女神の連絡先でも登録されていたらよかったのに。さすがにプライベートな電話番号までは載っていなかったので、女神本人に訊くという裏技は使えない、か。


「それで?あなた、本当にローザ様という婚約者がありながらあの少女に誑かされてしまったのですか?」


「いや、それは誤解だよ。というか、えらく久しぶりだねホークくん」


「初めましてポーク・ピカタです。帝国からの留学生です」


「さすがにそれは無理があるのではないかしら?」


「初めましてお美しいお嬢さん。ピカタ商会社長のポーク・ピカタです。内乱・内戦・革命、クーデターに民族紛争等々、武器や兵器が御入用の際には是非御一報を。人材付きで派遣させていただきますので...冗談はさておき、お久しぶりですおふたりとも」


14歳になったピクルス殿下はますますイケメンに、ローザ様はとびっきりの美少女に成長していた。


「学院長に頼まれて、あの少女の素性を潜入捜査しているのですが、ご協力願えませんか?もちろん、報酬は弾みます。学院長が」


「ほとんど2年ぶりぐらいに再会した友人に対する態度がそれなの?あなた、酷く傲慢になったんじゃないかしら?」


「これはお耳が痛い。ですが、わたくしめはこの学院に入学した当初から既に傲慢でございましたとも。何せ悪名高きゴルド商会の跡取りでございますがゆえ。尤も、今はポーク・ピカタなる不慣れな異国の地にて戸惑いホームシックに苦しむ繊細な名もなき子豚でございますが」


無言でゲシっとローザ嬢に尻を蹴られた。うん、さすがに今のは俺が悪いな。


「申し訳ございません。何分、それなりに多忙な身でして、御無沙汰させていただいておりますこと真にお詫び申し上げます。殿下、ローザ様におかれましては御機嫌麗し..くはないようですね。あの少女絡みですか?」


「まあ、正直そうなんだよね。悪い子ではないんだけど、なんだか妙に馴れ馴れしいというか」


「女神教の後ろ盾がある以上、表立ってわたくしが文句を言うわけにも参りませんし」


ふむふむ。おふたりの話によれば、『王族だって貴族だって、この学院ではみんな平等なんでしょ?』と大義名分を利用して『ピクルスくん!』などと呼んで馴れ馴れしく付きまとう、お裾分けなどと称して手作りの焼き菓子を持ってこの王族専用部屋に押しかけてきて騎士に止められる、等々。


なんか、典型的な悪役令嬢もののヒロインちゃんって感じのムーブメントだな。実は転生者だったりしても俺は驚かんぞ。だが、転生者であったならば確実に女神経由のはずだが、あの男児趣味の女がわざわざ女を転生させるか?ひょっとして、前世では男だったTS転生者とか?


「殿下、『辛い時は無理して笑わなくていいんだよ』や『あなたの薄っぺらい作り笑い、なんだか気持ち悪い』などと彼女に言われませんでしたか?あるいはローザ様、『げ!?悪役令嬢!?』などと言われたりなどは?」


「ないなあ。さすがにそこまで行くと不敬すぎるでしょ。そんな失礼なことを言うほど悪い子、というわけでもなさそうだけど」


「わたくしも、面と向かって悪人面などと言われたことはさすがにありませんわね。ただ、行儀作法のなっていなさを注意した際に、反論されたぐらいで」


「...フフ」


急にピクルス王子が笑い出したので、ふたりしてキョトンと顔を見合わせてしまう。


「なんだかこうしていると、初等部に入学したばかりの10歳の頃を思い出すね」


「言われてみれば、そうですわね。あの頃も、こうして3人でピクルス様のお部屋で作戦会議をしていましたもの」


初等部から中等部へと進学するに際し学生寮も中等部用のものへ変わったが、内装などはさほど変化がないため、なんだか昔に戻ったような気になる。とはいえ、現在肉体年齢が9歳相当の俺はあの頃より下手すりゃ縮んでいるのですが。


今はふたりを見上げなければならないしな。14歳らしく相応の美少年美少女に成長したおふたりが、なんだか微笑ましげに俺を見下ろしてくる。なまじ姿があの頃と大差ないだけに、ますます懐かしく感じるのだろう。


「一時的とはいえ、またこうして君と共に学生生活を送ることができるというのは嬉しいよ」


「ええ、クラスこそ違いますが。お帰りなさいませ、ホーク様」


「ポー...ただいま戻りました。長らく御無沙汰してしまって、すみませんでした、ピクルス様、ローザ様」


参ったなこりゃ、一本取られた。

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