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第52話 清潔感がないのはどうしようもないから

何はなくともやるべきことは、外見を取り繕うことだ。一体どんな食生活と怠惰な暮らしをしてきたのか、全身脂肪だらけでちょっと歩くだけでフウフウと呼吸が苦しくなって全身汗だくになってしまうような不潔なデブの姿はちょっと頂けない。


そんなわけで、俺はちょっとだけ体重を落とすことにした。じゃないと碌に歩き回れもしないからね、しょうがないね。脂肪が燃焼するイメージ。自分の体が引き締まっていくイメージ。魔法は便利だ。便利すぎて時々ちょっと怖くなる。


魔法で体内の脂肪を燃焼させ、重力で全身の筋肉に負荷をかけ、ボロボロにぶっ壊した筋繊維を回復魔法で回復させ超回復。その循環により、あっという間にほらスッキリ。


こんなもんかな?鏡がないので窓ガラスに映る自分を見やる。うん、悪くないんじゃないかな?


正直見苦しいとか、醜悪だとか、そういった感想しか抱けなかった全身脂肪の塊の醜いダルッダルのラード人間みたいな脂ぎったデブから、大学相撲部とかラグビー部とかにいそうな感じのリアリティのある筋肉デブに早変わり。


正直脂肪が酷すぎて肥大化した体じゃ満足にお風呂にも入れなかったからね、そりゃ面倒臭がって三日に一度ぐらいのシャワーだけで済ませてりゃ肌も荒れまくるし頭も体も痒くなるし異臭も発するわけだわ。


というか、この世界線のみんなはよくこんな奴と同じ教室で勉強できてたな。俺だったらちょっとというかかなり無理めかもしれない。せめて風呂ぐらいは入れよと言いたい。ゴルド商会が怖くて誰も言えなかったんだろうけど。


ついでにうざったく伸びたオカッパ頭も魔法の刃でバッサリ刈る。やっぱ短髪の方が手入れが楽でいいな。髪を切ったこともあり、かなり前の世界線の俺に印象が近づいてきている。


同時にそれは、この世界線のホーク・ゴルドから遠ざかっていくことでもある。少なくとも今の俺のこの姿を見て、ホーク・ゴルドだと確信できる人間はいないだろう。


精々が『ホーク・ゴルド...か?だよな?上手く化けたものだな!』とちょっと時間をかけて観察しなければ確信には至れない程度のカモフラージュは出来ているはずだ。そして戦場における数秒の価値は何よりも重い。


ここまできたらいっそデブをやめてスリムイケメンになればいいのにって?そこはほら、ダイエットってのは自分の力で頑張ってこそ意味があるものだと思うからさ。それに金持ちのイケメンなんていかにも女が群がってきそうで怖いじゃん?


美男美女は辛いぞ。美人だから、イケメンだから調子に乗ってるとかって逆恨みされて、陰口叩かれまくって、好きでもない奴からいやらしい目で見られて、最悪ストーカーされたり、襲われたりしかねないもんな。


特に日本ほど治安のよくないこの世界じゃあ、美少女がひとりで治安の悪い場所を歩こうものなら、強姦殺人の被害に遭って、しかもそれがたまたま馬車から目をつけた貴族の仕業だったりすると、遺族は泣き寝入りするしかないような世界だからな。


冷静に考えたら、この世界線での俺はもう金持ちじゃなくなったんだけどさ!HAHAHA☆


さて、行くか。出発前に風呂を沸かし、全身サッパリ洗い清めてから、クロゼットに入っていたどれもこれも5Lサイズ超えてるんじゃないの?って感じの巨デブ専用服をかきわけ、発見した子供服に着替える。


18歳なのに子供服?と思われるかもしれないが、中学生ぐらいの子供に向けた5Lサイズぐらいの服でようやくちょっとダブダブぐらいの感じなのだ。喜べよ、萌え袖だぞ。誰得すぎる。


「パパ、僕ちょっと出かけてくるから、この家から出ないようにね。一応防御魔法はかけていくけど、万が一ってこともあるから」


「ダダダダメだよホークちゅわん!!今外に出たら命を狙われちゃうよ!!自慢じゃないけどパパものすごくあくどいこと沢山してきたから、恨みを持ってる人間がここぞとばかりに殺しに来ちゃう!!」


「そうならないためにも必要なことだからさ、わかってちょーだい」


「う、うん!ていうか、ホークちゃん、なんかこう、ちょっぴり痩せた?」


「精神的ショックと心労でやつれたんだよ。ほら、あまりの恐怖で一瞬で人間が白髪になるとかホラー映画じゃよくあることでしょ?それと一緒」


「そ、そういうものなのかい!?」


とりあえず隠れ家に防御魔法をかけておいて、まずやることは服屋へGoだな。なんかいかにも貴族が着てそうなヒラヒラフリフリのお洋服とかなんの罰ゲームだよと。


クローゼットの中に入っていたのはそんなゴージャス服ばっかりだったので、正直着ているのがちょっと恥ずかしいレベル。貴族なら普通のことなんだろうけど、平民の俺にはおリボンフリル付きの白タイツとかはちょっとというかかなりキツーイ!


街行く帝国の人たちも何あいつみたいな目でチラチラ見てるじゃないか。ああそうだ、金はどうしよう?魔法による金貨の偽造は極刑ものの重罪だし、師匠のくれたお守りは売りたくないし。


「ねえパパ、いざという時のための隠し口座とか金庫は?」


「え?えーと、帝国の銀行に何か所かと、あと戸棚の中にこんな時のための金貨が入ってるはずだけど」


「グッジョブ!」


困った時のパパ頼み。家に戻り訊ねてみると、理想的な夜逃げライフには助かる情報を得られた。早速戸棚を開け、パパから教わったダイヤルを回すと、ザックリ30枚ぐらいの金貨が出てきた。


しばらくはこれが活動資金になるわけだな。そのうちの数枚を財布にしまい込み、ついでに財布の中に入っていた金貨数枚もあわせて、しばらくは食うに困らないだけの生活はできるだろう。


服屋に寄って、町民らしい普通の服をいくつか買い込み、ついでにパパの分の服も買って、帰宅して、着替えて。


「うん、いい感じ」


「ああ!そんなみすぼらしい服を!!なんて可哀想なホークちゃん!!」


「みすぼらしいって言うか、平民の普段着なんだけど...まあいいや。とにかく、行ってきます」


さて、いよいよ数時間ぶりに、帝国から王国へと舞い戻る時が来た。いよいよって程でもないな??


「ホークちゃん!!」


「何?パパ」


「...その...いや、うん...行ってらっしゃい!!くれぐれも気をつけるんだよ!!帝国は王国よりも物騒だからね!!なんせほら、軍事国家だから!!」


「うん、わかった。気をつけるよパパ」


何はなくともまずは情報。情報を制すものが全てを制す。


元の世界線に帰るためにも、レッツラゴーゴーゴー!

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