第350話 ソウナンデス!
ここまでのあらすじ。
聖剣合体のため3月に猛吹雪吹き荒れる極寒の雪山でハイキングしてたら雪崩に巻き込まれ目の前が真っ暗になったホーク。
目が覚めた時、ホークの目の前にいたのは……
・ゼト様だった
「目、覚めた?」
「あ、はい」
ここは、と起き上がろうとして、俺は自分が神獣形態になったゼト様の白くてフカフカな毛皮にスッポリ包まれていることに気付いた。どうやら雪に呑まれながらも咄嗟に張れたバリア魔法のお陰で、傍にいたゼト様と一緒に雪崩の中をガチャポンのカプセルよろしく転げ落ちるだけで済んだらしい。
「感謝しなさいよね。咄嗟にあんたの体を受け止めるためにこの姿になってあげたんだから」
「それは本当にありがとうございます」
バリアの壁面がうっすら発光しているため、暗がりの中だがなんとかお互いの顔が見える程度の光源が確保されているのはありがたかった。ゼト様の本体が結構な巨体なのでギュウギュウ詰めになってしまっているのは窮屈だったが、彼女の体がこうしてクッションになってくれたお陰で怪我もない。
『ご主人! 無事か! ご主人! 返事をしやがれ!』
『ホーク君! ゼト様!』
『落ち着け! 魔力を辿れば場所は判る! 急いで掘り起こすぞ!』
彼女のお陰で頭を打たずに済んだというのに頭の中がガンガンするのが不思議だったが、どうやらクレソンとローガン様と師匠の3人分の通信魔法が頭の中で混線してるだけだったらしい。3人ともよっぽど焦っているのだろう。それだけ心配されているということだ。
『俺もゼト様も無事だけど、みんなは大丈夫?』
『ああ! ったく、心配させやがって!』
『ふたりが無事で本当によかったよ』
『待っていろ、今余が掘り起こしておるでな!』
『お願いします』
俺の体をスッポリ覆っているゼト様の体をズッポリ覆うぐらいの大きさに展開されたバリアカプセルの中、俺は彼女の体からのっそりと起き上がる。彼女はフサフサの尻尾で俺の太腿をペチペチ叩いた。
「あー、死ぬかと思ったわ」
「ですねー……つーか、寒!?」
どうやら転げ落ちてる間に体温保持の魔道具アクセサリが壊れてしまったのか、俺は防寒具を着ていても感じる寒さに身を震わせる。
「しょうがないからしばらくこうしてましょ。あんたは嫌かもだけど、あたしだって寒いもの」
「いえ、この状況でそんなこと言ってられませんからね。むしろこっちからお願いしたいぐらいですよ」
「あらそうなの? だったらいっそ人間形態になってやろうかしら?」
「や・め・て・く・だ・さい!」
軽口を叩き合いつつ白亜の神狼のフカフカモフモフの毛皮に埋まって暖を取っていると、不意に上の方から光が差し込んだ。
「おお! 無事でよかったぞふたりとも!」
「師匠ー!」
それはジャンボジェット機の如き巨躯の本体に戻り、懸命にその両手で大量の雪を掻き分けてくれた師匠だった。掘り起こしたバリアカプセルをその大きな手で持ち上げ、俺たちは無事雪の中から地上へと生還を遂げたのだった。
◆◇◆◇◆
・ローガン様だった
「目が覚めたかい?」
「あ、はい」
ここは、と起き上がろうとして、俺は自分がローガン様の腕の中にいることに気付く。どうやら雪崩に呑まれる寸前、咄嗟に一番近くにいたローガン様が俺を庇ってくれたらしい。
どうやらふたりして雪に呑まれながらも咄嗟にローガン様が張ってくれたバリア魔法のお陰で、俺たちは雪崩の中をガチャポンのカプセルよろしく転げ落ちるだけで済んだらしい。うっすらと紫色に発光する魔法バリアの壁面が真っ暗な雪の中で光源になってくれているのはありがたい。
「すみません、ありがとうございますローガン様。お陰で助かりました」
「謝るのは僕の方だ。元はといえば僕がここに来たいと言ったせいで君を巻き込んでしまったわけだからね。君に怪我がなくて本当によかった」
直径2mぐらいの紫色に発光するバリアカプセルの中、彼は穏やかに微笑む。
「皆には僕から連絡しておいたよ。今頃ハインツ殿が雪を掻き分けて、埋まっている僕たちを掘り起こしてくれている筈だ」
どうやらあちらは無事3人揃ったらしく、俺とローガン様だけがはぐれて雪の中に埋もれてしまっているそうで。それなら転移魔法で山頂の神殿に集合した方が手っ取り早くない? とも思ったが、今の今まで気絶していた俺が言えた義理ではないのでそうですかと頷くだけにとどめておく。
「僕は砂漠生まれの砂漠育ちだから、雪にはあまり馴染みがなかったけれど、自然の驚異というのは形は違えど恐ろしいものだね」
「そうですね。どれだけ優れた力を手にしても、人間ひとりの力なんて大自然の前じゃちっぽけなものなのかもしれません……つーか、寒っ!?」
どうやら転げ落ちてる間に体温保持の魔道具アクセサリが壊れてしまったのか、俺は防寒具を着ていても感じる寒さに身を震わせる。
「さすがに1人分の魔道具で2人分の体を温めるのは大変みたいだね。助けが来るまで、しばらくこうしているとしようか」
「そうするしかなさそうですねー」
ローガン様は朝晩の温度差が激しい砂漠の国の出身なので、暑さにも強いが寒さにも強い筈なのだが、さすがに雪国の果ての果ての極寒の雪山は耐え難かったらしく、俺を湯たんぽ代わりにしながら助けを持つ。程なくして天井から光が差し込んだ。
「おお! 無事でよかったぞふたりとも!」
「師匠ー!」
それはジャンボジェット機の如き巨躯の本体に戻り、懸命にその両手で大量の雪を掻き分けてくれた師匠だった。掘り起こしたバリアカプセルをその大きな手で持ち上げ、俺たちは無事雪の中から地上へと生還を遂げたのだった。
◆◇◆◇◆
・クレソンだった
「目ェ覚めたか?」
「あ、うん」
ここは、と起き上がろうとして、俺は自分がクレソンの腕の中にいることに気付く。どうやら雪崩に呑まれる寸前、咄嗟に一番近くにいたクレソンが俺を庇ってくれたらしい。
どうやらふたりして雪に呑まれながらも咄嗟に彼が張ってくれたバリア魔法のお陰で、俺たちは雪崩の中をガチャポンのカプセルよろしく転げ落ちるだけで済んだらしい。うっすらと紫色に発光する魔法バリアの壁面が真っ暗な雪の中で光源になってくれているのはありがたい。
「ありがと、助かったよ」
「まったくだ。逃げようともせずにボサっと突っ立ってるもんだから、ヒヤヒヤしたぜ」
「いやいやいや、さすがにいきなり雪崩が起きたら普通はフリーズしちゃってもおかしくないって!」
直径2.5mぐらいの紫色に発光するバリアカプセルの中、クレソンは言葉とは裏腹にニイっと笑う。本当にオメエは俺らがいなきゃダメダメだなァ、とでも言わんばかりの悪戯っ子のような笑顔に、俺は面目ありませんと頬を掻くよりない。
「他の奴らには連絡しといたぜ。今頃ハインツの爺さんが雪に埋まった俺らを掘り起こしてくれてるだろうさ」
どうやらあちらは無事に3人とも揃ったらしく、俺とクレソンだけがはぐれて雪の中に埋もれてしまっている。それならさっさと転移魔法で山頂の神殿に戻った方が早くない? とも思ったが、今の今まで気絶していた俺が何を言えた義理でもないので黙って頷くだけにしておく。
「つーか、寒う!?」
「ダハハ! 今頃気付きやがったか!」
どうやら転げ落ちてる間に体温保持の魔道具アクセサリが壊れてしまったのか、俺は防寒具を着ていても感じる寒さに身を震わせる。
「さすがにコレ1個で2人分あっためるのは無理だからよォ、だったらこうしてりゃ少しはあったけえだろ?」
「メッチャ助かるー!」
防寒着越しでも分かるクレソンのモフモフ冬毛のお陰で、幾分寒さが緩和される。獣人は夏場は大変だけど冬場はあったかそうでいいよなあ、とぼやいていると、程なくして天井から光が差し込んだ。
「おお! 無事でよかったぞふたりとも!」
「師匠ー!」
それはジャンボジェット機の如き巨躯の本体に戻り、懸命にその両手で大量の雪を掻き分けてくれた師匠だった。掘り起こしたバリアカプセルをその大きな手で持ち上げ、俺たちは無事雪の中から地上へと生還を遂げたのだった。
◆◇◆◇◆
・師匠だった
「目覚めたか?」
「あ、はい」
ここは、と周囲を見渡して、俺は自分たちが空を飛んでいることに気付く。厳密には、背中の翼で空を飛ぶ師匠の腕に抱きかかえられている状態だ。どうやら雪崩に呑み込まれる寸前、咄嗟に一番近くにいた師匠が俺を抱きかかえ、そうして雪の中から勢いよく飛翔して空に逃げてくれたのだそうだ。
「そうだ! 他のみんなは!?」
「落ち着け、3人とも無事だ。ローガンの奴が咄嗟に張った魔力障壁の中に3人で避難したとのことで、これから余が掘り起こす」
師匠はようやく雪崩の収まった雪の斜面に着陸すると俺を下ろし、見る見るうちに竜人形態からジャンボジェット機ぐらいある大きさの本体に変身した。それから特に目印もなさそうな一面の雪景色の中から、ある一点の雪を両手で掘り始める。
「すみません、助けてくれてありがとうございます、師匠」
「うむ。そなたが雪に喰われるかと思うと胆が冷えたぞ」
本当に無事でよかった、と天使のような慈愛に満ちた笑みを浮かべる師匠。誰だこんないい人を邪竜呼ばわりした奴は! と目頭を熱くする俺の目の前で、師匠は雪の中から紫色に光り輝く魔力球を掘り当て持ち上げた。その中にはローガン様とクレソンとゼト様が窮屈そうに詰まっている。
「ご主人!」
「ホーク君!」
「あー! やーっと外に出られたわ!」
「みんな無事でよかった」
魔力球の中から出てきた3人と、再会の喜びを分かち合う。いやほんと急な出来事すぎて焦ったけど、全員無事に済んで何よりだよほんと。