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第322話 ホットサマ―・新学期

夏休みが終われば新学期が始まる。そんなわけで、久しぶりに留学生のポーク・ピカタとして王立学院に顔を出した。学院長の不正という名の依怙贔屓のお陰で、進級試験をすっぽかすという超ポカをやらかした大問題児くんも無事2年生に進級できました。まあ、1学期はほっとんど顔出してないけどな!!


だってダブルノーブルオッサンドイッチ状態でクルージングしたり、犯罪組織の解体という善行を積んだり、鉱山事故の救助作業に勤しんだり、世界樹の最深部で発見した猥褻物を血の繋がった実の妹に贈り付けたりと、割と激動だったのよ?


と言い訳をしたら、ピクルス様とローザ様にはまーたこいつスナック感覚でトラブルに巻き込まれてやがる、みたいな顔をされてしまったのだけれど。そんなわけで、しばらくぶりに夏休みの子豚部の部活動という名のだべり会に顔を出した俺は、ふたりへの雑談混じりの事後報告を兼ねて自分語りに精を出しましたとさ。


「相変わらず波乱万丈というか、奇妙奇天烈と言うか。とりあえず、他国の工作員が学院内の情報をそこまで掴めてしまったという警備体制の問題点については後程学院長に相談するとして、だ」


「王族と公爵家の娘に成りすますなどバレたら極刑モノの重罪ですものね。それにしても、伝説の防具がまさかそんな破廉恥な下着と水着でしたなんて……わたくしこの世界の在り方に些か疑問を抱いてしまいますわ」


「それこそ今更ですわ。だって設計者g……いえ、うん、世界は不思議に満ちておりますなあ」


俺たちの会話が一段落ついたと察したのか、無言で海苔煎餅をバリバリ齧っていたリンドウが立ち上がって俺の頭にその両腕をズシリと乗せてくる。胸、あたってるんですけど??


「幾らなんでも不思議すぎるわよ! ていうかあんた、まーたあたしに黙ってお爺様と楽しくやってたわけ⁉」


「いいじゃん、君は君でヴァンくんと楽しくミッドサマーバケーションしてたんでしょ? よっ熱いね! ヒューヒュー!」


「そう思うんなら水着か下着のどっちか一方をあたしにくれたってよかったじゃないの!」


「リンドウさん? 学生間の不純異性交遊は生徒会会計として見過ごせませんわよ??」


「何よ、ちょっとした冗談じゃないの! 相変わらずブラコン抜けないわねあんた!」


そうか、冷ややかなクールビューティスマイルを浮かべたローザ様は2年生になって生徒会会計になったのか。てことはピクルス様が副会長かな? キルシュ・ワッサー改め今はキルシュ・ラウララウラになった先輩が生徒会長をやっていた頃も経験を積ませるという名目で副会長は2年生がやっていたみたいだし。


「でもなあ、苦労して辿り着いた世界樹の一番奥で見付けた宝物が、まさかのエッチな女性用の下着だったら、俺ならガッカリしちゃうかも」


「オークションで転売したらメッチャ高く売れそうじゃね??」


「そんなことしたら世界樹を信仰してる連中が黙っちゃいないわよきっと。あいつら一時期の女神教に負けず劣らず拗らせた連中ばっかだし」


「えーじゃあこのことバレちゃったら大変じゃん! わー黙っとこ!」


ヴァンくんに絡むメルティさんとメアリ・イースも会話に加わって、なんとも賑やかな光景だ。そういえば子豚部に新入部員はいないんだろうか。俺、ピクルス様、ローザ様、ヴァンくん、メルティさん、メアリの6人で一応部員5人以上という条件は守っているから必須ではないけれども。いや、さすがに入ってこないか。このふたりとお近付きになりたい入部希望者は殺到しそうだが、そういった連中を遮断するための部活なわけだし。


「それで、1年生の様子はどうなんです?」


「うーん、僕たちも直接の関わりがあるわけではないからね」


「誰それさんが問題を起こした、という噂は特に耳にしませんが」


「さすがにそう毎年毎年トラブルメーカーが入ってくるってわけじゃないんじゃん?」


「言われてますよメアリさん」


「実際みんなに迷惑かけちゃってた頃の記憶のないあたしが言うのもなんだけど、お互い様だと思うの」


「強いて挙げるならヴァンの奴に色目使ってきた連中がいるって事ぐらいかしらね?」


「おい、それは言わない約束だろ!」


椅子に座るヴァンくんの首を背後から両腕でガシっと絞めるように抱き着きながら、不満げに尻尾で床をビタンビタンする竜娘(リンドウ)。それを聞いたローザ様がピクリと片眉を吊り上げる。


「疾しい事は何もないぞ? ただ、たまたままだ高等部の校舎の勝手が分からなくて迷子になっている子とか、貴族からのイジメに遭ってる平民の子とかにちょっと助け船を出してあげたらお礼を言いに来てくれたってだけの話で」


「甘いわね。上級生の男を掴まえて後ろ盾にするのは強かな女がよくやる常套手段なんだから」


「あー」


メッチャ分かるー! みたいな顔で頷くワケアリメルティさんの横で、上級生どころか教師や保険医に色目使っておんなじような事をしようとしていた頃とは別人だけれど周りの生徒たちからは今も彼氏や婚約者を奪われないようにとの警戒の視線を向けられているメアリ・イースがきょとんとした表情を浮かべている。


しっかし、もう下級生(こうりゃく)キャラ2人と接触済みとかさすがは主人公(ヴァンくん)だ。いや、それはただの邪推か。実際ヴァンくんの場合は主人公だから親切でいい奴ムーブしてるなんじゃなくて、親切でいい奴だから主人公みたいな出来事が起きてしまうわけだもんな。


「実際ヴァンくんにはゼロ公爵家との繋がりもありますからね。モノにするなら最優先優良物件でしょうし」


「お兄様、その話は後程詳しくじっくりと伺わせて頂きますわ」


「ヒエッ」


そんな話をしていると、不意に部室の扉がノックされた。ガチャリと扉を開けて顔を出したのは、顧問であるミント先生だ。


「皆さん、もうそろそろ下校の時刻ですよ」


「はーい」


「おっと、つい話し込んでしまったね」


「帰りどうする?」


「こらこら、寄り道や道草はダメですよ?」


「へーい」


「ほーい」


最近夏だからかトレードマークだった紫の長髪をバッサリ切ってショートになったミント先生に促され、俺たちはテーブルの上の片付けをしてから部室を出る。エアコン魔道具のフル稼働していた部室を出ると、途端に真夏の廊下の熱気がブワっと俺たちを襲ってきたが、体が冷えていたので逆にその熱気が心地よい。


部室棟を出ると、グラウンドでは運動部の連中が元気に練習をしていた。このあっつい中よくやるよ。飛び散る汗や飛び交う掛け声はまさに青春の宝石って感じ。


「そういえばさ、俺、今度部員の足りないバスケ部の助っ人頼まれて試合に出ることになったんだよ! よかったらポークも応援に来てくれよな!」


「んー、行けたら行きます」


「相変わらず正直な奴」


でもま、俺たちだって部活は部活だ。何も運動部だから偉いってわけじゃない。だべってお茶してちょっと国家機密に付いて深く語り合うだけの部活でも、青春は青春。こんな青春もそのうちかけがえのない、尊い思い出になるのさ。きっとね。

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