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300話到達記念小話 ようこそIFの世界

もし萌え豚転生の舞台がローファンタジーチックな現代だったらのパラレル小話です

俺の名はホーク・ゴルド。17歳。石油会社の社長である世界的大富豪、イーグル・ゴルドの息子。今は訳あって日本の高校に通っている。はい、この時点でイキリ豚の金持ち自慢かよケッとなった君の判断は正しい。この導入だとどう足掻いても僕ちん金持ちなの自慢にしかならないからね、しょうがないね。


「坊ちゃま、そろそろ起床のお時間ですよ」


「坊ちゃん、着替えは俺が」


「いえ、ここはわたくしが」


「いや、君には坊ちゃんのためにミルクを温めるという大事な仕事があるだろう?」


「電子レンジぐらい駄犬(あなた)でも使えるでしょう?」


「ふたりとも、朝から元気だね……」


俺の専属メイドのローリエは某国のゲリラ部隊出身。一方犬獣人のオリーヴは、民間のSP会社から過保護にも程があるイーグルパパが俺のために巨額のマネーを支払って引き抜いた元特殊部隊員。どちらも俺が物心つく前から俺の世話係をしてくれている。俺が日本に留学するって言ったら当然のようにお供をしてくれるぐらいには俺に甘い。


「坊ちゃんも毎朝毎朝大変ですねえ」


「ほんとだよ。気持ちはありがたいけど、いつまでも過保護すぎるのも問題だよ」


元はマフィアの運び屋だったという異色の経歴、といってもローリエのそれに比べればまだ普通、な過去を持つ運転手のバージルが運転する車に乗って学校に向かう。ちなみにバージルは最近、音花真楊(ねかまやん)シェリーなる美少女系Vtuberにお熱らしい。ハマるのはいいけどスパチャは程々にね。


「ですが坊ちゃんの身に何かあれば旦那様に殺されます」


「殺される前に責任を取って自害する可能性も否めませんが」


「わー……愛されてるう……」


俺の右前と左前の席に向かい合って座るオリーヴとローリエの会話を聞き流しつつ、車内で読む新聞の記事は今日も賑やかだ。


世界的に有名なハリウッド男優であるイグニス・マーマイト氏が今年5回目のプライベートな動画流出でまーた大騒ぎだとか、総合格闘家であるクレソン・ウォータークレス氏が防衛戦に圧勝して八百長疑惑がより一層深まったとか、某国の王族であるローガン様が訪日の意を表明とかね。


うん、全部知り合い。何やってんだあの人はとか、一発KOで気絶させてるのに八百長もへったくれもないよなとか、そうこう考えているうちに走行する車は俺の留学先の私立ブラウンストーン高校に到着する。


「おはようホーク!」


「おはようホークくん」


「おはようございます」


「みんなおはよー」


駐車場でバージルたちと別れ教室に入ると、同じクラスの零条(ぜろじょう)磐(ばん)くんと双子の妹の楼沙(ろうざ)さん、その彼氏の天王寺(てんのうじ)来栖(くるす)くんが迎えてくれた。彼らには留学生として転校してきた時からとてもよくしてもらっている。3人とも実家が相当な金持ちなので、金銭的なわだかまりがないので本当に助かる。


「はいはい皆さん、席に着いてくださいねー。私の貴重な時間を無駄にしないように」


「貴重なんですか?」


「まあ、それなりには」


担任の奥戸(おくど)先生は野暮ったさを極めたような風貌の熊獣人だ。なんか複数の特許技術を持っているらしく、その収入だけで生活していけるのに家に独りでいても暇だからと教師になったという変わり者である。


専攻は化学でいつもダボっとした白衣を羽織り、眠たそうに煙草をくわえている。校内禁煙どころか授業しながら教師がくわえ煙草とかどうなってんだなどと野暮なツッコミはしてはいけない。いいね?


奥戸先生に限らずこのブラウンストーン高校の教師は個性派揃いだ。まず校長の真凛(まりん)先生からして日本人にあるまじき魔法使い髭だし、水泳の授業に褌を締めてくることに定評のある体育教師の絹定(きぬさだ)加賀千彦(かがちひこ)先生は杖を突いたお爺ちゃん先生のフリして実は仕込み刀になっている。


英語の亀津(がめつ)先生なんか授業に託けてタブレット持ち込んでデイトレードやってるぐらいだしね。お陰でやたら実践的な英会話と経済関連の用語が身に付いてしまった。まともなのは我が校のマドンナ、みんと先生と保健医の灰津(はいつ)先生ぐらいだろう。用務員の織叶(おれがの)のおっちゃんは花壇にプチトマトばかり植えまくる変な人だし。


「すまないホーク、磐、少しいいか?」


「あ、先輩」


「何か御用ですか?」


「ああ。夏合宿のことで少し話があるんだ」


授業の合間の休み時間。3年のゴリ先輩こと蒲郡(がまごおり)雨水(うすい)先輩に呼び出された俺と磐くんは、廊下で剣道部の合宿についての話をする。体育教師のカガチヒコ先生が顧問を務める剣道部に入部したのはジャパニーズ・ケンドーに興味があったからだ。決してサムライブレードを振ってみたかったからってだけじゃない。


楽しい学校生活。素敵な友人たち。青春の汗を流すには持ってこいの運動部。時たま襲来する世界的セレブなお友達。祖国には愛する家族。そんな感じで俺は充実した日常を楽しんでいる。事故死して転生したらまさかの異世界ではなく獣人のいるすこし・ふしぎな現代社会に転生してしまった時はどうなんだコレと不安だったが、住めば都とはこの事か。ちょっと違うか? まあ、ホーク・ゴルドは日本語の上手い外国人なので、そこは大目に見て頂きたい。

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