第271話 子供を乗せなきゃいけない側も怖い
3/9よりニコニコ静画様の方でも萌え豚転生コミカライズ版の配信が始まりました!
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蒼龍戦騎ヴァルハリオン
第7話 リオンの苦悩! 振り切れ! その迷い!
あらすじ
相次ぐインベイ獣との戦いの中で、激化していく戦況に次第に心身を疲弊させていくリオン。インベイ獣との戦いの傍ら、父を亡くした悲しみも癒えぬままに王女として采配を振るわねばならなくなったキュリー姫。
そんなふたりを叱咤激励しようとする精霊ヴァルちゃんだったが、余裕のない今のふたりにとってそれは逆効果だった。売り言葉に買い言葉で喧嘩になってしまい、気まずいムードの3人。だがインベイ獣の襲撃は、そんな3人を待ってはくれない。
これまでのように3つの心を合わせることができず、苦戦しながらもなんとかインベイ獣を撃退することはできたが、倒すまでには至らなかった。リオンはひとり、夜の中庭で思い悩む。そこに現れたのは、泣き腫らした目をしたキュリー姫で……。
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◆◇◆◇◆
俺の知っている"主人公"といえばヴァンくんだが、地球からわざわざこの世界ガイアースに召喚されたヴァルハリオンのパイロット、春原リオンくんもどちらかというとヴァンくんに近しいものを感じる14歳の少年だ。
ロボットアニメの少年主人公といえば、熱血系の善良キッズか捻くれた思春期ボーイかの2択みたいな風潮があるが、幸いなことにリオンくんは前者だった。いきなりガイアース側の都合で召喚された挙げ句巨大ロボットに乗って命懸けで戦え、と言われたにも関わらず、『俺にしかできないことなら!』と頑張ってやる気を出せるようないい子だったのである。
普通なら14歳の中学生が『転送装置が壊れました。直るまで元の世界に帰れません。宇宙怪獣との戦争の真っ最中なので修理している余裕もほとんどありません。元の世界に帰りたかったら巨大ロボットに乗って敵の怪獣と戦い続けてね!』というようなことを遠回しに宣告されたら戸惑うなり困惑するなりノイローゼやホームシックになったりするだろうに、よくもまあ爽やかに頑張れるものだ。ちなみに精霊と王様の声がどちらも大御所声優使ってるだけあってか、このリオンくんも爽やか系の少年ボイスだった。
「あれ? ホークくん?」
「ああ、どうも。奇遇ですね春原さん」
「リオンでいいよって言ってるのに」
「さすがに年上(大嘘)の人を名前で呼び捨てにするのは気が引けますよ」
軟禁されている部屋で運ばれてきた夕食を頂き、シャワー付きのお風呂に入った後、ヴァルハラ宮殿の中庭で星空を見上げながら涼んでいると、春原くんがやってきた。
なお異世界ガイアースは見た目近代的なハイテク都市なのに王国だし王様とお姫様がいるし魔法があって騎士団は今でも剣で戦ってるようなチグハグな世界観で、結構オリジナリティーを出そうと頑張ってはみたけどどうにも中途半端になっちゃってますね感がなくはないのだが、個人的にはそれほど嫌いじゃない夜景だ。電気に照らされ夜の闇に浮かび上がるヴァルハラ宮殿には、まるで高層ビル群に囲まれた大阪城みたいな味わい深さがある。
「……あのさ。ホークくんはさ、怖くないのか?」
「恐怖心ですか? 現状特には」
「そっか……君は、強いんだな」
「元いた世界では、それなりに修羅場をくぐってきましたからねー」
「そうなんだ……凄いな君は」
ぐっと何かを堪えるような表情で、拳を握り締めながら俺の隣に並んでヴァルハラ宮殿と星空を見上げる春原くん。俺がインベイ獣の攻撃を生身の魔法で防いだことについては王様の判断で緘口令が布かれたのだが、あの時この基地にいたヴァルハリオン関係者には知れ渡ってしまったため、彼としても思うところがあるのかもしれない。
ただの子供、それも召喚事故の被害者、ということで王様の判断で彼の庇護下に置かれていた俺だったが、まさかここまで強大な戦力を持っていたとは、と一部から警戒する声が上がったものの、命を救われた王様自身が彼の一存で俺の身柄を率先して保護してくれたため、俺は不穏分子として厳重に監視されながらも表面上は以前と変わらない待遇で軟禁生活を送らせてもらっている。
たまに食事に胡乱なものが混ぜられたりもしているが、見破って対処してしまえるならば問題ない。冷静に考えれば幾ら命の恩人とはいえ、王様のやってることは生温い対応なのかもしれないが、スーパーロボットの秘密基地の司令官やってるような人だからか根が善人みたいだからね、しょうがないね。
それに、ここでお手軽インスタント感覚でざまあを摂取できる追放モノの悪役みたいな頭の悪い陰謀で俺のこと害そうとされてしまってもそれはそれで困るし。少なくとも王様以下穏健派の人々が基地内で幅を利かせていてくれる限り、直接俺をどうにかしようという策は実を結ばないだろう。
「俺はさ……正直、ちょっと怖いんだ」
「そりゃまあ、いきなりある日突然見知らぬ異世界に引きずり込まれてこの世界のために命を懸けて戦ってほしい、なんて言われたら、普通は怖いと思いますよ。ましてあなたはまだ14歳の子供なわけですし」
「……情けない、って、解っちゃいるんだけどさ。最初はちょっとワクワクしてたよ……。元いた世界じゃ平凡でなんの取り柄もない、どこにでもいるごく普通のつまらない人間だった俺が、まさか勇者だなんて言われて巨大ロボットに乗って、怪獣と戦うことになるだなんてさ。でも……アニメや漫画で見るのと、実際にやるのとじゃ、大違いだなって」
まあ、そりゃそうだよね。勇者召喚なんて異世界転移モノではよくある体だけど、実質的には誘拐も同然だもんよ。見知らぬ世界で見知らぬ人間たちに囲まれて、見知らぬ怪獣と命懸けで戦えだなんて、冷静に考えたら怖いに決まってる。
俺だってホーク・ゴルドに転生するのではなく、17歳の金田安鷹としてこの世界にパイロットとして召喚されていたら、なんで俺がこんな目に遭うんだ!! って不貞腐れた挙げ句無様に泣き喚いてヒステリーを起こしていたかもしれない。そう考えればこそ、春原くんは俺なんかよりも100万倍は立派だ。
俺は俺という人間をよく知っている。今でこそ父さんやオリーヴやバージル、クレソンにローリエらみんなのお陰で一丁前に成長したつもりでいるけれど、昔は本当に酷かったのだ。よくもまああんな面倒な拗らせ方をした捻くれたクソガキ丸出しだった俺をみんなは見捨てずにいてくれたものだと、感謝の念が堪えないにも程がある。
「誰しも死ぬのは怖いですし、まして平和な世界で生きてきたという君には猶更でしょう。今の君の肩には文字通り、世界の存続がのしかかってますからね。使命感や正義感では支えきれないプレッシャーやストレスで潰れそうになってしまっても、なんらおかしなことではないと思いますよ、僕は」
「そう、なんだよな。俺が戦わないと、この世界が滅んじゃうんだもんな。そしたら、俺も地球に帰れなくなっちゃうし……なんで俺だったんだろ」
彼はぼんやりと星空を見上げていた顔を下げ、今度はじっと開いた手の平を見つめる。
「何か凄い才能があるわけでもない。特別な力を持っているわけでもない。それなのに、どうして俺なんかが選ばれたのかなって」
「王様も言っていましたが、ヴァルハリオンのコアに眠っている精霊とたまたま波長がピッタリ合う子だったから、ですね。その同調できる子として君が生まれてきた理由まではさすがに……」
「どれだけ思い悩んでみても、納得できる理由なんて誰かから教えてもらえるわけない、か。……凄いな、ホークくんは。まだ11歳なのに、まるで大人みたいだ」
実際実年齢は16歳ですし、前世も含めれば精神年齢はもう32歳なんだよなあ。見た目はただの肥満児だけど。お前なんか全然肥満児じゃないだろうって声もどっかから聞こえてきたような気がするけど。間違いなく空耳だろうとは思うのだけれども。
「僕からしてみれば、君の方がよっぽど凄くて立派ですよ。だって、実際に戦っているのは君たち3人なんですから。僕はただ比較的安全な場所から応援していることと、流れ弾を逸らすことぐらいしかしていません」
「でも、そのお陰でキュリーのお父さんは助かったんだろ? だったら、やっぱり凄いよ」
不意に暗がりの中で目が合う。ベンチに並んで腰掛けたまま、しばし無言で見つめ合う。
「ホークくんはさ、その……答えたくなければ答えてもらわなくても大丈夫なんだけど……どうやって恐怖を乗り越えたんだ? その、元いた世界じゃ、戦争があったり魔物に襲われたりしたんだろ?」
「やっぱり、仲間との絆じゃないですかね。月並みな回答ですが。少なくとも僕の周りには、こんな僕を支え、愛してくれる、大切な仲間がいましたから」
思い浮かぶのは、みんなの顔だ。この世界に来てからなんだかんだ今日でもうすぐ1週間が経つけれど、みんな心配してるかな。いや間違いなくしてるだろうな。場合によっては無断外泊1週間とか、メチャクチャ怒られる可能性も十分あるぞ。やべえ、さっさと帰らないとまずい気がしてきた!!
「……仲間、か」
その時、ガサっとベンチの背後から音がして、俺たちは振り向く。
「あら? おふたりとも、こんなところにいらっしゃいましたのね! 奇遇ですわね! わたくしも星空を見上げに来たばかりですのよ!」
花壇の中に立っていたのは、こちらも有名な大御所女性声優さんの声で喋るキュリー姫だった。恐らく俺たちの話を立ち聞きしてしまっていたのだろう。立ち去ろうとして植木にでも足を引っかけたか。
「春とはいえ、夜は冷えますわよ?」
「そうですね。湯冷めしてしまう前に、そろそろ部屋に戻りますよ」
「あっホークくん!」
ここは戦友でもあるお若いふたりの交流の邪魔をしてはいけないと、肩を竦めて一礼し、部屋に戻ろうとする俺の背中を春原くんが呼び止める。
「その、相談に乗ってくれてありがとな! 愚痴っぽくなっちゃってごめん!」
「いえ、僕にできるのはそれぐらいですから。少しでも君の迷いが晴れたのならば、何よりです」
ちなみにエクス王の命を救ったためか、キュリー姫からの俺に対する印象は今のところ悪くはないようだ。お父様の命の恩人、ぐらいの距離感で接してくれているので、波風が立たずありがたい。サブパイロットとして率先してインベイ獣に立ち向かっているだけあってか、結構王族らしからぬお転婆な性格をしているみたいだから、その辺弁えて一歩引いてくれているのはほんと助かるんだよな。
俺がいなくなった後の中庭であのふたりが何をイチャコラしていたのかは知る由もないが、甘酸っぱいイチャラブを健全に楽しむがよろしい。それもまた、今しかできない若者の特権だからね。昔は洋画なんかを見て、戦場でラブシーンなんてやってる場合じゃないだろ、と散々バカにしていたものだけれど。色々と思い悩む春原くんが心の支えにできるのならば、恋愛だって満更悪いもんでもないだろうさ。





