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第266話 Healingoodream

ちゃんと緊張感をもって長引かせようと……頑張ったのですが……これが精一杯でした(テヘペロ

ここでわざとらしく投薬前に区切ってもネ……

男女比が1:999999になるまで男が死に続ける病気を解決する方法、と聞いて、君ならどんな手段を思い浮かべるだろうか。


手っ取り早く解決したいなら、男女比を1:999999にしてしまうのがいいだろう。帝国中から女性を999999人集めて、お城の中にいる人間を陛下と999999人の女性だけにしてしまえば完治するのではないか。


或いは患者を一度死なせた後で、蘇生魔法で復活させるというのはどうだろう。いや、それでは生き返った後でまだ男女比が1:999999になっていませんよと病がぶり返してしまうのがオチなのでは?


それよりウイルスそのものをなんとかしなければ感染が拡がる一方で根本的な解決にならないだろう、と言われてしまえばそれまでだ。


じゃあまずは男女比無理矢理達成しちゃえ作戦でいこう、ということで、お触れを出して帝国中から女性を集めてみた。なんせ日替わりで国民たちに夜伽をしてもらっている陛下だ。その陛下が死ぬかもしれないと聞いて、帝国中から陛下ファンの女性たちが雪崩のように押し寄せてきた。


「うむ、さすがの俺もこの人数を一度に相手取ってしまえば病気で死ぬよりも先に干からびて死にそうだな! ワハハハハ!」


「この状況でそれやり始めたらさすがに見捨てますからね?」


「冗談だ、冗談! まあ、いよいよもって駄目となったらその時はその限りではないが」


てなわけで、早速実践してみたが、まあ駄目だったよね。そもそもその男女比がどこ基準で1:999999なのか断言されていないわけだから、例えば地球上で、と言われてしまったらどうしようもないもんよ。まさか全員を宇宙に連れ出すわけにもいかないし。


次に考えたのが、男だけが感染するウイルスなら一時的に体を女性に変身させてしまってはどうかというものだ。男だって女の子として扱えば女の子になるんだよ! といった根性論ではなく、性転換魔法で女性に変身してもらい、その後ウイルスが消えたのを確認してから元に戻す。


「うむ、なんだか股座の辺りがスースーして落ち着かぬぞ!」


「そりゃまあ、そうでしょうねえ」


「どうだホーク? 折角の機会だから、女帝で童貞を捨ててみるか?」


「どうしてみんな俺が童貞だって決めつけるんですかねえ?」


「え?」


「え?」


俺が童貞なのかどうなのかはどっちでもいいじゃないですかほら。シュレディンガーの豚って奴ですよ。処女厨はいるけど童貞厨なんてそうそう滅多におらんやろ。いや別にわざわざ非童貞ですって宣言するつもりもないからね? プライバシープライバシー。


悪の組織の女幹部みたいな妖艶なレッドアイズブラックたてがみなしの黒獅子獣人美女になってもらった陛下だったが、確かに女体化している間は病状の進行は収まったのだが男に戻ると同時にまた再発した。しつこいウイルスだなあ。作った奴よっぽど性格悪いだろコレ。


おまけに余計な副産物として、オークウッド博士がまーーーた要らんことして体の一部分だけ性転換させる薬とか男や独身女性でも飲めば胸部から母乳が出るようになる薬とか碌でもない薬をついでに開発しやがるなどの一悶着を挟みつつ、次なるアプローチに取り掛かる。



次のアイデアはマーマイト帝国マーマイト市スニッカー街334Bにお住まいのポーク・ピカタくんからのお便りです……じゃなくて。いや偽造された戸籍では確かにそこに住んでいることになっているけれども。


「この病気の感染源となったハレムーン王国から資料を提出させるというのはどうですか?」


「無理だな。ハレムーン王国の国王はこの病気を駆使して一代で国を興し、国民全てを女で賄っていたハーレム王の中のハーレム王よ。悪用する術ならばまだしも、治療方法など模索する筈があるまい」


「だったら話は早いじゃないですか。免疫持ってる奴がいるならそいつ連れてきて抗体を抽出すればいいでしょう」


「それは俺も考えた。だがな、抽出できたところで時間がないのだ。解析するだけでも一体何日、いや何週間かかることやら……」


「そのための俺でしょう?」


そんなわけで、オリーヴとキャロブさんに頼んでハレムーン王国国王改めマーマイト帝国ハレムーン自治領領主たるシコルスキー・ハレムーン氏を転移魔法で連行してきてもらった。


どうやら侵略戦争の際にイグニス陛下に王妃含む側室や女将軍ら主要なハーレム要員全員を一度に根こそぎ寝取られてしまって一度は精神崩壊を起こしてしまったそうだが、極限まで追い詰められた末に新たな境地に開眼してしまったという彼は不気味なぐらい実験に協力的だった。


というか感染の原因完全にそれじゃねえか! 感染源と濃厚接触した女性たちとのべつ幕なし無差別に粘膜接触とか性病と大差ないぞそれ。うわあ、そう考えると一気にやる気が削げてきたぞう?? ここらで一度チンチンもげちゃった方が陛下のためなのでは?? いや、今の女体化状態の陛下からは男性機能は完全に損なわれてはいるのだけれども。


「お初にお目にかかります! シコルスキー・ハレムーン1世と申します!」


しかし件のハレムーン領主氏、俺やオークウッド博士にまで何やら薄いブックスの悪いメンズに向けるような妖しい視線を送ってくるのは切にやめてほしい。確かに元祖ホーク・ゴルドはそういった用途では非常にお呼ばれがかかりそうなヴィジュアルと下劣な性格の持ち主だったが、今の俺は違うから!


閑話休題。ハレムーン領主から免疫細胞を抽出し、時属性魔法を利用して時間を加速させることで抗体を急速培養、動物実験と人体実験を経て治療薬のサンプルを作成し陛下に投与してみたのが昨日のこと。この時点で既に陛下が倒れてから四日が経過しており、残り時間はあまり残されていない状況だ。


さすがに今回ばかりはモラルがどうとか言ってる場合じゃないぞと、これまで自重していた時属性魔法の使用を解禁することに決めたぐらいのガチっぷりだ。


軽率に時間を止めたり早送りしたり巻き戻したり遡ったり。あきらかに人間が触れていい領分をすっ飛ばしてしまった気もするが、今回ばかりはやむを得まい。なんせみんなの命がかかってるからな。俺がひとりで死ぬだけならいいが、みんなが死ぬのは絶対駄目だ。


「すまない坊ちゃん、どうやら俺は、これ以上力になれそうにない」


「ああ、口惜しいですねェ! こんなところで、こんな、たかが病で我輩たちの崇高なる研究からリタイアせねばならないとは!」


研究途中でまず真っ先にオリーヴがコクイッテン病を発症し高熱で倒れ、次いで鉄人オークウッド博士が全身麻痺で倒れた。研究に参加していた男性陣も次々と病状に見舞われそのほとんどが志半ばに脱落していく中、俺は女性研究チームを引き連れ頑張った。メッチャ頑張った。


何故かは判らないが、俺は全くもって他のみんなのように高熱を出して倒れたり衰弱したり意識が朦朧としたり体が麻痺したりといったこともなく最後まで研究に携わることができたので、多分俺も特異体質(ハーレムようそ)の持ち主とやらだったのだろう。


最初から俺の免疫細胞を元に特効薬開発すれば済んだのでは? と言うなかれ。そうと判明したのはつい今し方、みんなが倒れていく中で俺だけ平気なのはなんでだ? と疑問に思って調べた結果判明したばかりの新事実なのだから。


「ご気分は如何ですか? 陛下」


「うむ、すこぶるよいぞホーク! なんだか頭がスッキリとして、サッパリとした気分だ!」


「それは何より」


そんなわけで、帝国中にコクイッテン病が蔓延していく中、俺たちはなんとか6日目に特効薬の効果を実証することができた。後はもうひたすらに女性研究員や時属性の素質を持つ女性魔術師らを集め、爆速で特効薬並びにワクチンを量産するだけだ。足りない分は俺が複製魔法でコッソリ補っておこう。


     ◆◇◆◇◆


「行くよシェリー!」


「いつでも準備OKでございます、坊ちゃま」


「よし! ヴィクトゥルーユ号、発進!」


朝焼けの空をヴィクトゥルーユ号が飛ぶ。緑色の光を撒き散らしながら、高く高く、国中の大半が見上げる夜明けの空を、グングン飛んでいく。


特効薬は完成したが、一軒一軒配り歩いていては到底間に合わないし、家で寝込んでいる独身男性なんかには取りに来てもらうことも難しかろうということで、ヴィクトゥルーユ号から帝都中に散布することになったのだ。


ヴィクトゥルーユ号の甲板に帝国きってのエリート女性魔術師らが円陣を組んで、霧を発生させる魔法を超々大規模合唱で詠唱してもらい、その霧に女性研究員たちが特効薬を混ぜ込ませて散布する。後は帝都内で呼吸をしているだけで、コクイッテン病は完治するというわけ。


さすがに帝国の領土が広すぎて、全域にばら撒くことはできないが、そこはもう完治した帝都の商人さんや軍人さん、魔術師さんにお医者さんたちに働いてもらってなんとかしてもらうよりない。無論、また要請があればヴィクトゥルーユ号を飛ばすことも吝かではないしね。


     ◆◇◆◇◆


「やれやれ、全くもって酷い目に遭ったわ」


「これに懲りたらしばらく戦争はお休みなさっては如何です?」


「未知を恐れておっては世界征服などできぬ! と言いたいところだが、今回ばかりはなあ。そなたに命を救われたのは、これで何度目か。心から感謝するぞ、ホーク」


「何度目でも構いませんけど、ほんと少しは自重してくださいな」


遠征して多大な成果と一緒に変な病気まで持ち帰ってくるとか、どこぞの航海者じゃないんですから。


「それに、今回の一件に関しては俺だけの力じゃありませんよ。帝国技研、魔術師団、医師団が一丸となって努力した結果なわけですから」


「うむ、その通りだ。皆にも皇帝として、感謝を述べねばな」


かくしてあわやこの世界から男がほぼ全滅しかけちゃうよ事件は一旦幕を閉じる。特効薬とワクチンは完成し、直にコクイッテン病は収束するだろう。だが俺たちの戦いはまだ終わりではない。


男だけを減らすコクイッテン病に対し、女だけを減らすコーイッテン病なるものの存在を、あの蛇神は示唆してたからな。そっちへの対策も打たなければ、そのうちまた同じような騒ぎになるぞ。全くもって、この世界はクソだなおい。


だがまあ、世の中クソなのは前世も同じだったからな。同じクソならまだこっちのまだマシな方のクソみたいな世界の方が、みんながいてくれるだけマシなんじゃないかなーとは思うんだよネ。

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