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第258話 なろうといえば冒険者学校でのエター

第6部始まりますー!

そういえば書籍版の2巻め、現状の売上だとかなり厳しいみたいなんで、これに関してはもう率直にまだ買ってない人は是非とも買ってくれー!!と叫ぶことしかできませんのでよろしくお願い致します!

突然だが、ヴァン君とのデートイベントが発生した。というのはまあ、言うまでもなく冗談だ。とはいえ、2人でお出かけすることになったのは本当。


「次! 76番!」


「は、はい!」


ゼロ公爵家の家名を捨て去りただの平民のヴァンになったヴァン君は、王立学院を高等部で卒業するつもりらしい。つまりは、大学進学の意思はないということだ。今のところは、だが。


『ほら、世界って、俺達が思っていたよりもずっと広いじゃないか。卒業したらこの国を出て、冒険者になって、世界中色んなところを見て回るのもいいんじゃないかと思ったんだ!』


『それ、ローザ様が大丈夫ですか? 彼女、一時期よりはかなりマシになったとはいえ、結構重度なブラコンでしたよね?』


『はっはっは! 俺だってローザや父さん母さんたちとなかなか会えなくなるのは寂しいが、成人後にそれぞれ違う道を歩むというのは貴族のきょうだい間ではよくあることさ。それに、あいつもそろそろお兄ちゃん離れしないとな? 将来の旦那様/ピクルスのためにもさ!』


屈託のない笑顔でそんなことを言い放つヴァンくんに誘われ、冒険者学校の公開入試を見学することになった。公開入試というのはその名の通り、入学試験を受ける冒険者達を見守ることのできる行事だ。オープンキャンパスとかならともかく、何でそんな訳の分からないことしてるの? と首を傾げてしまったのだが、どうやらこの世界の冒険者学校ではよくあることらしい。


まあ、ヴァン君がエレメント無適合者であることが判明して大騒ぎになった王立学院初等部の入試だって、マスコミやら何やらが大勢見学していたもんな。今更か。主人公様が俺TSUEEEするための舞台は世界によってあらかじめ整えられていて当然ということなのだろう。ヴァン君の場合はTUEEEどころかフルボッコだったけれども、それはそれで主人公特権と言えるだろうし。


「来たれ! 我が守護獣よ!」


目の前では冒険者志望の少女が、守護獣を召喚している。どうやらこのヨーク・R冒険者学校では全ての受験者に入学試験時に守護獣なる使い魔を召喚させ、それと契約できるかどうかで合否を判定しているようだ。観覧席から成り行きを見守る俺たちの目の前で、少女は赤い鳥のような魔物と無事契約を交わしたらしく、手の甲に赤い痣のような模様を浮かび上がらせる。


「合格!」


「やっ、たー!」


大喜びではしゃぎながら、早速使い魔にしたばかりの赤い鳥がクルクル頭の上を旋回する下でピョンピョン跳ねるウサギ獣人の少女。勿論獣人といっても目が赤くてウサ耳と尻尾がついているだけのコレジャナイ似非獣人だが、イチイチ当てこすっていてもいい加減不毛なので、最近は何も思わなくなった。無関係な他人の容姿についてアレコレ文句を言うとか、冷静に考えたら悪趣味だしな。


「おー! 使い魔とかやっぱかっこいいよなー! ホークもそう思わないか?」


「まあ、男の子の夢ではあるよね。かっこいい召喚獣とか颯爽と召喚して使役するの」


「そうそう! くうー! 俺もグリフォンとかペガサスみたいな羽のある使い魔に乗って空を飛んだりしてみたいぜー!」


15歳で成人、俺たちは16歳といっても、やっぱ幾つになっても男の子はロマンが好きな生き物なのだろう。見た目に5歳分の年齢差があるせいで、あらあら仲のいいご兄弟ねえみたいな目で近くに座っていたおばさんが生温い視線を向けてくるが、実際平民の中には10歳ぐらいで冒険者学校に入る奴もいるようだから、俺も受験のための下見に来ていると思われても別段不思議ではないのかもしれない。


「次! 77番! ……77番! アイム・ヒローヴィン! ……いないのか。ならば失格! 次! 78番!」


「わー!? 待って待って待ってーお願い! 僕いるから! ここにいますからーっ!」


ドタバタと試験会場である冒険者学校の体育館に走り込んできたのは、黒髪黒目のショートヘアの、いかにも『僕的には別に男装してるつもりはないんだけどなー。でもなんでか自然と昔っから僕よく男の子に間違われちゃうんだよねー』と全身でアッピールしているかのような、ボーイッシュな人間の少女だった。歳の頃は中1ぐらいだろうか。何で女だって判るのかって? 俺が気づかないわけないだろ。


ダボダボの服を着て安物の杖を握っている割に、これ見よがしにいかにもなんかいわくつきですよって感じの紫水晶っぽいペンダントを揺らしているのも気にはなるが。それ以上になんだ、アイム・ヒローヴィンって。また変なのがポップしてやがるな??


「遅れちゃってごめんなさい! トイレから戻ってこようとしたら、知らないお爺さんがギックリ腰になっていたのを助けていたもので!」


身振り手振りでアタフタしながら、遅刻の弁明をする77番に、試験官は分かった分かったと大袈裟にため息を吐きながら、早く持ち場につくよう彼女に告げる。


「詠唱、始め!」


「はいっ!」


扉がなんちゃらかんちゃら、世界の理がうんたらかんたら、いかにもそれっぽい召喚呪文を詠唱しながら、新手のヒロインぽいのが召喚魔法陣を起動する。ちなみにあれは使い魔召喚用の魔法陣に魔力を注ぎ込んで使用しているだけだから、召喚魔法の素質のない人間にも使える仕組みになっているようだ。確かに、召喚魔法が使えないと入学できない冒険者学校とか、あんま生徒来なさそうだもんね。


「お願い来て! 僕の運命のパートナー!」


召喚魔法陣が一際強く輝いたかと思えば、直後にブッブー! となんか前世で聞き覚えのある効果音みたいなものが盛大に鳴り響き、魔法陣が真っ赤な光を放って強制終了する。


「うん?」


「なんだ?」


「どうしたのかしら」


「えっ!? 何でえー!?」


受験生のみならず、観客や試験官すらも驚きや戸惑いの表情を見せる。そりゃそうだ。詠唱は問題なし、魔力も基準値を満たしているのに、いきなり最後の最後で召喚術式が強制シャットダウンされたんだから。


「も、もう1回やります!」


「あ、ああ……」


しかし結果は先程と同じ。それまで問題なく起動していた召喚魔法陣が、最後の最後にいきなり真っ赤な光を放って黙り込んでしまう。


「何だ何だ? 一体どうしたってんだ?」


「魔法陣の故障かしら?」


「もう! いいから来てよっ! お願い僕の運命の召喚獣!」


アイム・ヒローヴィンなる少女が3度目の正直とばかりに再び試みるが、結果は駄目。そして召喚失敗と同時に、いきなり空中になろうらしさ満載のホログラムウィンドウが浮かび上がる。


【接続エラー。Earth-334からの生命体の持ち出しは現在管理者権限によって禁止されております。】


「なっ!? 何だよこれえー!?」


「ちょ、ちょっといいか! 退いてくれ!」


試験官が驚愕に目を見開く受験生らを立ち退かせると、冒険者学校の教師と思しき人物が2人程走ってきて、3人がかりで召喚魔法陣の調査を始める。どうやらあの77番が使う時だけああなるらしく、試しに1人飛ばして78番の生徒にやらせてみたら問題なくすんなり使い魔の召喚と契約は成功し、続いて79番も問題なく召喚と契約を無事成功させてみせた。


何? アクセスエラー? Earth-334? もしかしてあの女、前世俺が住んでいた地球から人間の美男子でも召喚しようとしてたのか? 管理者権限ってのがあの女神かもしくは神様世界の何ちゃら省によるアク禁だとしたら、辻褄は合うけれども。何、何、何なの? どんだけ碌でもない火種抱え込んでやがるんだこの世界。


「77番、失格!」


「嘘ォー!? ちょ、ちょっと待ってよ!? なんで僕だけ!? こんなの絶対変でしょー!? あー世界一のテイマーになるっていう僕の夢がー!?」


ガックリと打ちひしがれて号泣する77番を尻目に、俺はヴァン君にちょっとトイレ、と伝えて席を外す。



『もしもし? ツョタコン女神様ですか?』


『ちょっと!? 誤解を招くような表現をしないで頂戴! あたしはただ13歳未満のあどけない男の子が心から大好きなだけで、変態じゃないわよっ!』


結論から言うと、77番は俺の予想した通り俺が前世住んでいた地球から男子中学生を召喚しようとしていたらしい。といっても意図して呼んだのではなく、あの娘の才能や素質がたまたま偶然にも使い魔召喚を試みた場合、地球から件の男子中学生を呼び出すようになっていたらしく、なるほどまさに文字通り運命のパートナーだったってわけか。


ただし、去年あった一連の魔王事件の影響により、この世界への平行世界や外宇宙や別次元からの干渉並びに生命体の持ち込みは激しく規制されているせいで、それに引っかかったのだろうとのことだ。運命のパートナーではない、なんか適当な別の魔物でも呼び出せば使い魔問題に関してはあっさり解決するだろうと。


ただまあ、それをわざわざ教えてあげる義理も縁も別にないしな。それに教えたところで、『そんなんじゃ駄目なんです! だって一生を共にしていくかもしれない相棒なんですよ!? 運命の相手じゃない相手と組んだって意味がないじゃないですか!』とか言い出しかねない顔してるし……。


「あ、お帰りホーク」


「ヴァン君、あの77番どうなりました?」


「それがさ、無理矢理4回目を試そうとしたら、魔法陣がうんともすんとも言わなくなっちゃったみたいだ」


「へえ、不思議なこともあるもんですネー」


防犯セキュリティにでも引っかかったかな? 3回目で警告出して、4回目でOUTなのか。勉強になる……のか?


「そうだな。あの子には可哀想だけど冒険者学校はここだけじゃないし、別の学校で違う試験を受けるしかなさそうだ」


どうやらヴァン君は、ここ以外にも幾つか目ぼしい冒険者学校をピックアップしているらしく、今月来月中は色んな冒険者学校の公開入試を見に行くつもりらしい。中には教官相手に剣で戦うとか、何でもいいから魔法を使って的に当てろとか、そういう色んな試験があるみたいだが、まさか他の学校にもあの77番みたいなのがいたりしないよな??


「主殿、何やらエレメントの大規模な乱れを肌で感じ申したが」


「あ、それについては大丈夫です」


「左様にござるか。こちら、頼まれていたホットドッグとコーンスープにござる。ヴァン殿はアメリカンドッグにアイスカフェオレでよろしかったでござろうか」


アメリカンドッグあるのか。この世界にアメリカないのに。いや言うてサンドイッチさんもベーコンさんもこの世界にはいなかっただろうけれども。


「わざわざすみません俺の分まで! お代は」


「別にいいよこれぐらい。俺の奢りで」


「ダメダメ! 友達にタカるなんてできるわけないだろ! 幾らお金持ちだからって、安易なお金のやり取りは厳禁だぞホーク!」


「それに関してはヴァン殿に同意するでござる」


おつかいから戻ってきたカガチヒコ先生からホットドッグとコーンスープを受け取り食べ始める俺に、きちんと代金の清算を求めるヴァン君とカガチヒコ先生が、咎めるような視線を向けてくる。


「……ごめんて」


「分かってくれればいいんだ。俺、ホークとはいつまでもちゃんとした友達でいたいからさ!」


うっ、そのイベントスチルみたいな笑顔の破壊力は反則級ですよヴァン君。キラキラ眩しい見た目も中身もイケメンオーラにあてられてしまいそうだ。なるほど、こりゃ色んな女の子が好意を寄せるわけだぜ。


その後は3人並んで軽食を摂りつつ、公開入試を眺める。77番の騒動以外は特に目立った騒ぎもなく無事に入試が終わり、それぞれの受験者達の悲喜こもごもが会場のあちこちで織りなされる様はまさに天国と地獄だな。いや、そこまで大袈裟ではないか。いやでも、この入試に真剣に取り組んでる人達からすれば、それぐらい大事なことではあったのかもしれない。


何はともあれ、残念だったな77番。どうやら受けるのが1年遅かったようだ。というか1年早かったら、まーた異世界転移者DCとかいう厄ネタが発生していたかと思うと、女神しっかりしなさいって感じだ。それにしても呼び出されるのがDKではなくDCなあたり、あの女神の趣味も混じっているのだろうか。いや、13歳未満が性癖って言ってたから、やっぱ違うか。

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