第251話 行きつ越しつ
新年あけましておめでとうございます!
今年も萌え豚転生をよろしくお願い致します!
2022年が皆様にとってよい年でありますように!
大晦日の夜。年越しパーティだのなんだので世間は賑わい、中にはジャパゾン式の神社で厳かに0時を迎えようみたいな一団もいたりするが、ホークは自室にてコタツに入りながら、熱々の緑茶を啜っていた。
隣にはクレソンもその巨体をやや窮屈そうにコタツに押し込み、背中を丸めてみかんを剥いている。身長240㎝の巨体からすればみかんなど本当にちっぽけな代物らしく、皮を剥いてから丸ごと頬張る姿がとても様になっていた。
その正面では酒に酔ったオリーヴが珍しく下半身をコタツに突っ込んだまま横になって転寝をしており、風邪を引かないようにとホークがかけてあげたブランケットに包まって気持ちよさそうに寝息を立てている。
「来年は寅年だねー」
「言っとくが、俺ァ虎じゃなくて山猫だかんな?」
「知ってるー」
ブランストン王国の主教は女神教だが、それでもお寺や神社などはボチボチあり、どこかから聞こえてくる除夜の鐘に耳を澄ましながら、ホークはクレソンの真似をしてみかんを丸ごと一個頬張ろうと試みるも、無理だと半分に割る。
「来年もよろしくねー」
「おう」
両親は既に寝ており、マリーはハイビスカスとディルくんを連れて贔屓の個人楽団のカウントダウンライブに参加すべく不在。カガチヒコ先生は近所の神社にお詣りに行っている。
オレガノはバージルに誘われて娼館の居並ぶ風俗街で行われる大晦日だよ! チキチキ! 2021発 (以下自主規制) に参加するべく不在だ。クレソンも誘われたようだが、珍しく断ったらしい。
使用人たちも今日と明日は一部の当番を除き仕事を早めに切り上げることが赦されているため、今宵のゴルド邸はいつにも増して静かだった。
「坊ちゃま、お茶のおかわりはいかがですか?」
「ん、もらうー。ありがとローリエ」
「いえ」
クレソンとダラダラ今年も色々あったねーと喋っていると、厨房に行っていたローリエがお盆を手に戻ってきた。彼女も別段ここにいる義務はないのだが、部屋にひとりでいても退屈なので、とコタツに入りに来ている。
考えてみれば、彼女も随分と変わったものだ。前世の記憶を取り戻したての頃はあんなにも冷たくてつっけんどんで不愛想で慇懃無礼だったのに、今じゃ笑顔でお茶を淹れてくれる程度には打ち解けたんだもんなあ。
ま、それは俺も同じか。以前の俺だったなら、女性を自室に招き入れるばかりか同じコタツに入るだなんて想像もできなかっただろう。
「おう、俺にも頼むわ」
「はいはい」
珍しくメイド服ではない私服、冬用の防寒機能のしっかりとしたフワフワの白い寝間着に身を包んで、普段は仕事の邪魔になるからと束ねたり結ったりしている青色の長い髪をおろしている姿がぐっとくる男性は多かろう。真っ白な素足にフワモコスリッパというのもポイントお高めなのではなかろうか。
ちなみに俺は、真冬だってのに夏用の薄手のバスローブを羽織っている冬毛仕様のクレソンや、若草色のパジャマがお洒落な同じく冬毛仕様のオリーヴの冬毛に負けないぐらい、フッカフカの薄紫色の真冬用防寒パジャマ。母さんからの降誕祭の贈り物だ。本当は薄桃色になる予定だったらしいのだが、坊ちゃまも男の子ですし、と母さんを止めてくれたローリエには是非とも平身低頭感謝したい所存である。
「それにしても、オリーヴ様が坊ちゃまをほったらかしにして居眠りとは珍しいですね」
「それだけ俺らに心を許してるってこったろ」
「確かに。みんな出会ったばかりの頃とは大違いだもんねー」
俺に背中を向けているせいで、必然的に尻尾がこっちに来るため、コタツの中に手を突っ込むと丁度俺の膝に乗ってくる山犬の黒毛に覆われたフッサフサの尻尾を指先で弄りながら、俺は笑う。
「まあなァ。俺なんかご主人をいつか必ず機を見てぶっ殺してやろうって息巻いてたしよォ」
「わたくしも、必要とあらば坊ちゃまと旦那様を暗殺すべく機を窺っておりましたので」
「そっかあ。ふたりとも、最初は俺の命を狙ってたんだよねえ。そう考えると、なんだか不思議な気分」
屈託なく、憂いなく、なんの心おきもなく、三人で笑い合う。本当に、この11年間で随分とまあ、仲よくなれたものだよ。
「お、もうそろそろ年が明けるんじゃねえか?」
「ええ、そのようで」
時計を見れば、ちょうど間もなく年が明けようとしているところだった。言葉もなく、三人で時計を見やる。オリーヴも起こした方がいいかな? と思ったけれども、気持ちよさそうに無防備に寝ているので、起こしちゃ悪い気がする。
「あけましておめでとう。来年もよろしくね」
「おう、おめっとさん!」
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します」
乾杯、と緑茶の入った湯のみで乾杯する。どこからか新年を祝う花火のドンドンという音が遠く聞こえてきて、窓辺に目をやれば、曇った窓ガラスの向こうに花火の華やかな灯りが小さく見えた。
今年もみんな仲よく、平和に、元気に過ごせたらいいなと思う。
改めて、今年もよろしくね、みんな。





