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第166話 子豚も結構忙しい

生活リズムの変化に伴い今後は概ね月・木を目安に更新していきますー

連休である。異世界で何を言ってるんだお前はと思われるかもしれないが、この世界でのカレンダーは概ね日本のそれに忠実だ。五月には大型連休があるし、夏休みや春休みも普通にあるし、年末には女神降誕祭とかいう性なる...失敬、聖なる夜が用意されていて、正月はあけましておめでとうだし二月はバレンタインがあるという徹底ぶり。


ほんと、都合のいい世界だよな。そんなわけで、五月の大型連休なわけだがゴルド商会は客商売なので普通に父らは仕事だ。むしろ他人が休んでいる時こそが書き入れ時であり、通常のゴルド商店の他にも二十四時間営業のコンビニ、ゴルドマートは大盛況。


俺がこの世界に普及させたTCG、DoHの専門分野として独立させたパストラミ社も五月の大型連休を利用した大会の運営に忙しく、俺は今回春大会が開催されるマーマイト帝国の帝都に構えたパストラミ社の本社で結構忙しく働いていた。これが社畜か。ギャフン!


「社長、皇帝陛下より直通のお電話が入っております!」


「今忙しいから後にしてって伝えて!」


「ひええ!?だ、大事なご用件ですので大至急とのことですが!」


「大事なご用件の中身を言えって伝えて!こないだもそう言って実際にはパスタランチのお誘いだったんだから!」


「む、無理ですう!私には皇帝陛下にそんな無礼なことをお伝えできませえん!」


「何かあったら俺が全責任を持って君を保護してあげるから早く!」


「社長!各国の生産工場より人手不足で出荷が追い付かないと!」


「雇えって言って!とにかくいくらでも人件費かけていいから雇うように!ただし雇用は商人ギルドを通して身元の洗い出しと面接だけは徹底するように!窃盗防止魔法に引っかかったバカどもの処理は法務ギルドと提携して一括処理する手筈になってるから!」


「社長!大会会場のマーマイトスタジアムの責任者の方から会食のお申し込みが」


「終わった後でやりましょうって伝えといて!」


「社長!イラストデザイナーチームから次のパックの目玉となる魔物のイラストが描き上がったと」


「後で見るから!次のパックが出るのまだしばらく先でしょ!?」


そんなわけで、ワンマン経営だとこうなるという悪例のようにとにかく俺は忙しい。だからといって、かなりの利権を生む一方で、偽造カード問題やカードを巡るカツアゲ・窃盗などの問題も浮上してしまうようになった一大コンテンツに急成長してしまっただけに、おいそれと他人に託してメチャクチャなことになるのは避けたい。


よって、製造物責任法ってわけじゃないが、プロデューサーである俺が責任を持って事にあたらなければならず、護衛の任務を放棄させて秘書としての仕事に回ってもらっているオリーヴも大忙しだし、ここぞとばかりに電子コンシェルジュのシェリーにも大活躍してもらっている。


音声サンプリングした俺の合成音声で、俺の代わりに電話連絡してくれるとか、使い方を間違えたら完全にやばいそれだよね。いつの間にか全て乗っ取られてたなんてことにならなきゃいいのだけれど。でも使う。便利だからね!AIによる反乱が起きてしまったら、その時はその時だ。


そもそもが超高速で世界中の空を飛び回るステルス迷彩宇宙船から、大量投下されるクリーン核ミサイル攻撃にどうやって対処すればいいんだってお話だからね。火の七日間どころの騒ぎじゃない。七時間で世界が火の海に焼き尽くされるわ。そんなことになったら俺個人の力ではどうにもならないので、考えるだけ無駄って奴さ。無責任だって?そうだよ(開き直り


「ホーク殿!事務所に攻撃魔法をぶっ放そうとしていた不届き者を逮捕したであります!」


「警察署にパストラミ社絡みの事件専門の法務ギルド職員を待機させてもらっていますからそちらと話をつけるように伝えてください!」


うちは今、マーマイト帝国内で最もホットに金を動かす事務所なので、イグニス陛下が念のためにと常駐させてくれている帝国騎士団の警備部隊長さんが、敬礼と共に事務所を出ていく。俺の誘拐を企む者、事務所への攻撃を目論む者、衝動的に酒瓶を投げ付けていく酔っ払いなど、敵は少なくないのが現状だ。


「ホーク殿、書類の記入が全て終わり申したが」


「ありがとうカガチヒコさん!判子押すから全部こっちに頂戴!」


「坊ちゃん、ハイビスカスから通信が入りました。マリー様が大会前に是非お会いになられたいと」


「シェリー!スケジュールの空きは?」


「直近で三日後の十六時より十七分ほど空きが」


「じゃあそこで!」


オリーヴだけでなくカガチヒコさんにも手伝ってもらって、なんとか仕事をこなしていく。ここまで忙しくなるのは年に数度、大きな大会がある時だけなので、今が頑張りどころって奴だ。


「ホーク!!そなたが来ない故、余が直々に来てやったぞ!!」


「イグニス陛下!ちょうどいいところに!このメモに書いてある通りの店と日付と時間で電話予約を入れてください!」


「おい、この俺にいきなり雑務を押し付けるとは、相変わらずいい度胸だなそなた。とはいえ、アポイントメントなしでいきなり押しかけてしまった以上、ある程度は致し方あるまいか。寛大な心で少しだけ助力してやろう。ありがたく思うがいい」


「ありがとうございます!後でお礼はしますので!」


その巨体でちょこんと事務机に座ってお仕事する陛下に、お付きの護衛騎士さんたちが笑いを堪えている。わかるよ、すごい似合わないもんね。でもちょっとだけお仕事体験しているゆるキャラみたいで可愛いと思ってしまう自分もいる。なんだろう、ギャップ萌えって言うのだろうかこういうの。


そんなこんなで激動の連休前半。


なんとヴァスコーダガマ王国代表選手四名のうちの一名の座を勝ち取っていたマリーと彼女が所属する王立学園カードゲーム部の部員たちと会食し、部長らに涙ながらに握手やサインをねだられたり、相変わらず全く自重しないイグニス陛下の手綱を握りながら、春大会で開閉会の挨拶や優勝者らへのトロフィと特典カードの授与をしたりと忙しく働き回り、なんとか無事に大会を乗り切ったのであった。


冷静に考えてみるとやっぱり、急に俺が倒れたりした時にも問題なく会社が回るように、後進の人材を育成しなければダメなのかもしれないな。この世界にも少しずつカードゲームが普及し始めて、例えば禁止カードや制限カードといった対戦環境を破壊してしまうようなそれ一枚だけが強すぎるカードやデッキが乱発されてゲーム環境がオワコン化してしまわないように細心の注意を払う必要がある。


だから、きちんとその辺りを考慮できる人材でなければ、あっという間に目先の売上だけが全てのインフレ化が進んだり、一強環境に辟易したプレイヤーたちがユーザ離れを起こしてしまったりもするだろう。また、DoH以外にも2匹目のドジョウを狙った後発のカードゲームがチラホラ出てきており、中には俺が感心してしまうぐらい面白いものも存在している。


ひとつのビジネスモデルの先駆者となったからには、後に続く会社が出てきてもおかしくはないし、ちょっと気を緩めたり驕ったりしていると、あっという間に追い抜かれたり失速したり、ブームが過ぎ去った後には見向きもされなくなる、なんてことも起こり得るわけだからな。


だからといってさっさと売り抜け・売り逃げをしてしまえばいいというわけでもなく、難しい問題だ。その辺り、勉強しなければならないことがまだまだ山積みで、前世から生きているといっても所詮俺はただの世間知らずなガキでしかないことを思い知らされる。


そんな俺の無茶振りに応えて支えてくれる仲間たちに恵まれて、ほんと幸せもんだよ、俺は。

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