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第158話 臨海学校で臨界点突破!?

「もう帰っていいですか?」


「いやいやいやいや、まだ始まったばかりじゃないか」


「だって、まさかここまでとは思わなくて」


臨海学校当日。学院長の集団転移魔法によって、学院の校庭から海辺のキャンプ場へと集団転移させられた俺たちは、早速事前に組み分けられていた班ごとに別れて楽しい二泊三日のキャンプを始めることになったわけだが。


「ポークくんは付き合ってる女の子とかいるの?」


「年上と年下どっちが好み?」


「いませんし、いりませんし、どちらでも構いませんし、そもそも帝国に婚約者がいますので」


「えーほんとに?」


「残念」


「でもさ、こっちにいる間ぐらいはちょっとぐらい羽伸ばしちゃってもいいんじゃない?」


今思い付いた大嘘だが、婚約者がいるとでも言っておかないと、かなり面倒事が続きそうだ。どうしてこうなってしまったのか。上級生の騒がしい美少女ふたりに囲まれ、しきりに話しかけられているのはまだよいのだが、どうにも露骨に媚びが感じられるのは何故だ。闘技大会で準優勝したから注目を集めてしまったのか?


俺が休んでいる時に行われたというくじ引きで、最後の余りもののくじに割り振られた俺の班は、三年生がなんとあのゴリウス先輩ともうひとり女子生徒、二年生が女子生徒ふたり、一年生がこれまた見知らぬ女生徒という、あまりにも嬉しくなさすぎるほぼ逆ハーレム構成だった。ちなみに班長はゴリウス先輩だ。


「はっはっは、人気者だなポークくんは」


「婚約者がいるので嬉しくありませんて。ほら皆さん、さっさとテントを組み立ててしまいましょう」


「えー?」


「ほら、力仕事は男の人の見せ場っていうか」


「ポークくんたちのかっこいいところ見てみたいなー!」


ダメだこりゃ。頭空っぽの二年生女子ふたりと、やけに積極的な一年生女子をかわし、俺はゴリウス先輩ともうひとりの三年生の先輩女生徒と三人で、テントを組み立て始める。協調性を養うという名目は一体どこへ行ってしまったんですかねえ。


シチュエーションとしては海辺の砂浜に近い拓けた森の中のキャンプ場に、生徒たちが班ごとに支給されたテントを建てて夕食は自分たちでカレーを作って、みたいなオーソドックスなキャンプ方式なのだが。


まさか男女合同だとは思わなかったし、春の闘技大会でピクルス王子相手に互角に戦って準優勝になったことで一気に将来有望株として注目が集まり、学院=結婚相手探しの場、みたいな認識で来ている貴族の子女らから熱烈な婚活攻撃を受ける羽目になるのは予想外すぎた。


どうせこの肥満体と子豚ちゃんフェイスでは女も寄ってこないだろうと思いきや、財産目当てなら相手の顔なんかどうでもいいよなそりゃ。傍から見れば俺は16歳で既にピカタ商会という会社を経営していて実力も申し分なく、おまけに帝国民なのでブランストン王国内の面倒なしがらみからはおさらばできるとあってか、班外の女子たちからの熱い視線が怖い。


あれだな、一夏の勢いに乗じてモノにしてしまおう、みたいなそういう打算まみれの視線を感じるな。女嫌いの俺にとってはもはや拷問に等しく、ゴリウス先輩がいなかったら即刻体調不良を訴えてリタイアしていたところだ。


「ゴリウス、こちらはこれでいいのか?」


「ん?ああ、ちょっと見せてみな」


ゴリウス先輩とは面識があるらしい三年生の女子、ワッサー子爵家のキルシュ・ワッサー先輩は全く俺に興味がなさそうなのが救いだ。実質的に鬱陶しいのは二年生のダブル婚活女子ふたりと一年生のギャルっぽい茶髪のツインテールだけ。


キルシュ先輩は赤髪ポニーテールのいかにも堅物女騎士といった感じで、同じ騎士志望であるゴリウス先輩とは男友達のように接している。いわゆるサバサバ系女子という奴だろうか。


なお遠巻きにヴァンくんの姿が目に入ったのだが、案の定というかなんというか、彼の班はヴァンくんとローザ様、それに女生徒が四名という完全なるハーレム状態であり、さすがは主人公体質、といった風格だ。ちっとも羨ましくないけどな。なんならうちの班の使えない女子三人をまとめて引き取って欲しいぐらいだ。


「ポークくーん!」


「ピカタと呼んでください。婚約者に悪いので」


「えーまっじめー!」


「どうせバレっこないから大丈夫だよ!うちらそういうの気にしないし!」


なるほど、愛人志望なんですねわかります。誰がお前らみたいなのを囲い込むかボケ。顔がいいからって調子に乗ってんじゃねえぞオラ、と言いたくなるがぐっと堪える。美男美女率の高いこの世界では顔がいいことは何ら自慢になりませんからね?クラスの女生徒全員が美少女揃いで太っている子やいわゆるブスっぽい子がひとりもいないといういかにもなラブコメ学園なので、顔がいいことはわりと普通なんですよね。


いやそれを言ってしまうとそんな美男美女揃いの世界でキッチリ白豚な俺って異端の存在なんだろうな、ほんと。ダイエットすればたぶんお約束のようにイケメンになる可能性もなくはないが。ブサメンが痩せても痩せたブサメンになるだけでは?と言いたいところだが、黒豚呼ばわりの父でさえ、正直顔のパーツひとつひとつ自体は整っている方だしな。脂肪が全てを台なしにしてはいるが。


「君たち、やることがないならうちの班の分のライトや虫よけのお香なんかをもらってきてくれないか」


「えー?」


「先輩が自分で行けばいいじゃないですかー。後輩だからってなんでもかんでもパシらせようとするのよくないと思いまーす」


わーお、よろしくないな。キルシュ先輩と二年生のダブルバカの間にちょっと険悪なムードが走る。学年やクラスの枠組みを超えた交流とは一体なんだったのか。一年生のツインテギャルもちょっと困った顔になってしまった。こいつはまだマシな部類か?


「そうやって自分たちは何もしないで他人にばかり一方的に何かを押し付けるような人間性であることがバレてしまうと嫁のもらい手がなくなりますよ先輩方。ほら、さっさと行ってきてください」


しっしと虫でも追い払うみたいに言い放った俺に、今度こそ完全に空気が凍り付く。女性陣の愛想笑いが凍り付き、ゴリウス先輩とワッサー先輩はどう反応していいか困っているようだ。


「言うねー。ポークくんって結構毒舌?でも、ポークくんがそう言うんじゃしょうがないかなー」


「そうそう、今回だけ特別だからね。あと、女の子に優しくできない男の子はモテないぞー?」


「相手が嫌がってるのにそれを無視して無理矢理にでも群がってくるような非常識極まりない女性陣にモテてもこれっぽっちも嬉しくありませんよ僕は。ほら、口より先に足を動かしてください。ゴーゴー」


ものっそい不本意です、みたいな怒りを愛想笑いで隠して、ふたりで支給品を取りに行く二年生のダブルバカども。たぶん女子トイレとかで何あの豚ちょっと愛想よくしてやったからって調子に乗りやがってマジうざい、みたいな陰口祭り始まるんだろうなー。それぐらいはわかるよ。まあ、痛くも痒くもないけどな。


「すごいな、ピカタくんは。自分に好意的な可愛らしい女子相手に、あそこまではっきり言える男子はそうはいないだろう」


「可愛らしいのが容姿だけでは意味がありませんからね。協調性を養うためのキャンプで協調性に欠ける行動取ってたらそりゃ論外ですよ。みんなで協力してキャンプを楽しもうって行事なわけですから」


ワッサー先輩に感心したように頷かれても反応に困る。


「えーと、ポークっち結構毒舌系?でも、あの先輩たちちょっと露骨に媚びすぎててウザかったから、ちょっとスカっとしたよ。うちは何したらいいのかな?」


「そういえば、あなたは?」


「うちはメルティ。1年C組。よければメルって呼んで」


「ではメルティさんはワッサー先輩と一緒に仕事をしてもらっていいですか?力仕事は僕とゴリウス先輩でやりますので」


「オッケー」


そういえば、名字がない平民は必然的に名前で呼ばなくちゃいけないのか。厄介だな。とはいえ、彼女はギャルっぽい見た目に反してわりとまともなようだ。オタクくんに優しいギャル、みたいな感じで、茶髪のツインテールにちょっとだらしなく着崩した制服がいかにもそれっぽい。それと、胸元から褐色の巨乳がチラチラしているのが目に毒だ。嫁入り前の娘がはしたないゾ、と思うかもしれないが、学院が婚活の場である以上は正しい戦略なのかもしれない。

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