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第136話 SAS〇KEかT〇REか

ブックマーク1万件突破、ポイント4万点突破ありがとうございます

まさかここまで伸びるとは当初全然思ってなかったのでとても嬉しいです

「おや、五階からは鏡ではないようだね」


「本当だ。試練の質が変わった、ってことかな?」


「なんにせよ、注意を払って進みやしょうや」


一階から四階までは壁も鏡も天井も鏡だったが、五階からは蔦や苔の絡みつくオーソドックスなザ・ダンジョンといった感じの石造りの迷路が現れた。


「各々方、敵襲にござる」


「お、ようやくお出ましって感じだな」


いわゆる、ゴーレムと呼ばれる類いの石造りの人造魔物が、ゾロゾロと団体様でやってくる。


「ちょうどいい。四階まで大してお役に立てなかった分、ここらでいっちょ働きやすかね」


「みんな、気を付けてね」


「ああ。油断せずに行こう」


ゴーレムの弱点はコアだ。魔力を込めた宝珠を石像や人形の体内に埋め込むことでそれらを動かす仕組みになっている。幸いこのダンジョンに配備されているゴーレムたちのコアは、わかりやすく胸部の中心に露出していた。


厄介なものになると体の内側のどこかにあちこちバラバラに埋め込まれていたり、ひとつの巨大宝珠を核に複数のゴーレムを遠隔で稼働させたりするタイプもあるから恐ろしい。


「弱点がわかってるんなら狙いやすくて助かりやすぜ」


「あのコアを撃ち抜けばいいんだね」


「承知仕った」


バージルは土属性魔法で鋭く尖った岩の槍を次々と作り出し、魔法で強化された筋力でそれを投擲する。凄まじい速度で飛来する投げ槍を叩き落とすことに失敗したゴーレムたちが、次々と胸部に突き立てられた岩の槍にコアを砕かれ稼働を停止していく。


ローガン様は砂鉄だろうか。黒い砂のようなものを魔力で練り上げ、ゴーレムたちの足元に絡み付かせてその動きを鈍らせる。そこへ、身軽な動作ですっさすっさとゴーレムたちの合間を駆け抜け、すれ違い様に的確にコアを斬り捨てていくカガチヒコさん。


そんな調子でサクサク進んでいき、五階の広間にたどり着く。待っていたのは、ゴーレムたちと同じく恐らく人為的に造られたであろう動く石像。ただし、巨大な大鷲の姿をしており、縦横無尽に飛び回って空から一方的に攻撃を仕掛けてくるタイプの強敵だ。


「へえ、この子には僕たちの攻撃が効くんだね。一階から四階までが勇気の試練だとしたら、ここからは力の試練ということかな?」


「そんなら話が早い。さっさと袋叩きにしちまいやしょうぜ」


「まさしく多勢に無勢であり申すな。とはいえ、油断は召されぬよう」


だが、相手が悪かった。竜神の直弟子である俺との修行を経て十一年前とは比べものにならないほど強くなったバージルに、ヴァスコーダガマ王国の国民的英雄である大戦士ローガン様。それに大名家の剣術指南役を務めていたカガチヒコさんと、こちらの戦力はオーバーキル気味。


俺ひとりで倒せ、というソロ縛りプレイが解除された時点で、後はゴリ押しで突破できてしまう。六階は広間に作られたプールの中から飛び出してきた巨大なバケモノタコのゴーレム、七階は身長5m、体重は1トン以上ありそうな超ヘヴィ級のゴリラのゴーレム。そして八階では高密度の魔力ブレスを吐く危険なドラゴンのゴーレムを、危なげなく打ち倒していく。


いささか端折りすぎだろうって?本当に特筆すべきことが何もないのだ。適正レベル50ぐらいのダンジョンを、平均レベル90ぐらいのパーティで攻略しているようなものだからな。伝説の武器なんかなくてももう十分に強いパーティが、伝説の武器を好奇心や興味本位で拝みに来ただけ、というとものすごく不謹慎なことをしているような気分になる。


そして、九階。


「一階から四階までが勇気、五階から八階までが力。となれば、ここからは十二階までは恐らく知恵の試練、というわけだね」


「俺はお役に立てそうにねえです」


「何、そう己を卑下することもありますまい。知恵とは知識や見識の深浅のみを指すにあらず。柔軟な発想や閃きが試されることも時にはあり申す」


鏡張り、石造りと来て今度は、聖堂や教会の廊下、といった厳かな雰囲気の迷路になっていた。ところどころ壁や天井にステンドグラスで彩られた窓が備え付けられ、窓から差し込む日差しが色取り取りに迷宮内を彩りとても幻想的で美しい。試しに割ってみようとしたら普通に割れなかったが。防弾ガラスよりもよっぽど硬いぞ。


魔力を練り込まれて焼き上げられたガラス、って感じだな。建国以来連綿と紡がれ受け継がれ発展し続けてきた職人たちの国、カシミール公国の優れた職人や技術者たちの腕に込められた熱量と魂のようなものをヒシヒシと感じさせられる。


ひとつのことを生涯究めた人間の熱意というのは本当にすさまじいものなのだなと、俺はこの塔を作った伝説の鍛冶師ドワーフと彼に協力したであろう仲間の職人や技師たちに、畏敬の念を抱きつつも進んでいく。


「これは、パズルかな?」


「こちらはからくり箱のようにござる」


しかし、ここへ来て一気にバラエティ色が強くなったな。磁力で強制的に滑らされる床、パネルを踏み間違えると落とし穴に落とされるエリア、僅かな引っかかりを足場に傾斜のきつい坂を登らせるゾーン、正しい順番に通っていかないと中から魔物が飛び出してくるY字路などなど、テレビでバラエティアイドルや芸人さんたちが挑戦させられそうな仕掛けが目白押しだ。


「拙者、年甲斐もなく僅かばかり楽しくなってきたでござるよ」


「カガチヒコの旦那もですかい?実はあっしもでさあ」


「とはいえ、一歩間違えたら即死級の罠が仕掛けられているというのはなんともえげつないものだね」


「遊んでる場合じゃないってのはよくわかるんだけど、なんだかなあ」


制限時間内に床に配置されたパネルを正しい順番で踏み奥の扉を開かなければ、左右から迫りくる壁に押し潰されて圧死してしまうという嫌すぎる通路をなんとか無事に抜け、ようやく広間へとたどり着くと、露骨にスフィンクスな外見をしたゴーレムが鎮座していた。なんだ?クイズ大会でもしろってのか?


(なれ)らに問う。目には見えぬがどこにもありて、万人が万年忘れ得ぬものとは何ぞや?」


「なんじゃそりゃ。空気とかか?」


「エレメントって答えもあるね」


「人の営み、ではなかろうか」


「まあ、女神の教えとか加護とかそういうのでしょ。この塔の建造を主導したドワーフ、敬虔な女神教徒だったらしいし」


女神、と答えると、ズゴゴゴゴ!と次のフロアに進むための階段が降りてくる。


「汝らの道は拓かれた。先に進むがよい」


案の定というか何というか、十階から十二階までは知恵の試練ということで、バラエティ番組やらハリウッドの有名なトレジャーハンター映画みたいな命懸けの試練をやらされることになった。基本インドア派のデブにはアスレチックは地味にきつい。筋力強化の魔法がなかったら途中でリタイアしていたかもしれないレベル。


ちなみに塔を建てているうちに予算が減ってきたのかそれともアイデアが尽きたのか、各階層の最期にクイズを出してくるスフィンクス型ゴーレムの姿は全て使い回しだった。


クイズの問題も『何者にもなれ何者にもなれぬ者にもなれる、其は何者なるや?』『一であり全、全でありながら一である、世にあまねき等しく調和を成す汝の名を答えよ』『伝説の武器を手にして、汝は何を成さんとする?』だった。


答えは人間、エレメント。そして、『邪竜を討ち果たさん』だ。あ、この場合の討ち果たさんは『必ず討ち果たします!!』という決意表明ではなく『討ち果たさんわボケエ』的なニュアンスでの果たさんだったのだが、OKだった。どうやらスフィンクスゴーレムくんには言葉の真意を読み取るようなハイ・テックな機能は搭載されていなかったらしい。予算不足かな?


そうして12の試練を全て乗り越え、やってきました最上階。そこには女神が描かれた天窓のステンドグラスが虹色の光がキラキラと降り注ぎ、台座には剣、中央に円形の鏡がはめ込まれた盾、そして勾玉の首飾りが、厳かに鎮座していたのである。

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