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第133話 棚からゲーミングオーブ

ガチャに5万円ちょっと突っ込んでしまいましたが作者は元気です

お財布が致命傷ですが無事推しをお迎え出来ましたv(;∀;)vヨカッタ...

「伝説の武器ですか?」


「うむ。使い手に栄光と勝利を約束する伝説の三つの武器が眠りし古の迷宮、その名もスパシーバの塔。その入り口を開くための鍵が、この宝珠である」


ゴトリ、と師匠がテーブルの上に置いた、林檎ぐらいの大きさの宝珠は、光も当たっていないのに虹色の光が内側でグルグルと流動していて、見ていてとても美しい。


「これを俺に?いいんですか?とても貴重そうなものですが」


「構わぬ。実はな、数百年ぶりに宝物庫の中身を虫干しすることにしたのだが、その時に出てくるまですっかりその存在を失念しておったのだ」


財宝の虫干し。あまり聞いたことのない慣習だ。というか、伝説の武器多すぎじゃないか?前にも二本の聖剣がどうとかいう話が出たし、今回は伝説の三つの武器とか、そのうち四神の神具とか五芒聖女の秘宝とか六天魔王の負の遺産とか七曜の宝玉とか七星の装備とかポンポン出てくるフラグじゃあるまいな??


「余は竜であるがゆえ塔の結界に阻まれ内部に入ることはできぬゆえ、所持していても文字通り宝の持ち腐れであるし、ならばそなたに譲って有効活用してもらった方が宝珠も喜ぶであろうよ」


「むしろどっかの聖獣様みたいに、一生眠らせておいた方がいい代物が目を覚ましちゃって世界滅亡の危機、なんてことにならないかが心配なのですがそれは」


「何。伝説の武器とは言っても、かのお騒がせ女神は関与しておらぬ。かつて女神教が『少女のような少年こそ至高』という教義を掲げ、神父どもが年端もいかぬ男児たちに手習いや作法を教え込むことが一般的であった時代に、女神を奉ずる信仰心篤きひとりのドワーフの鍛冶師がおってな」


「すみません、女神教の(くだり)要ります??」


「うん?ああ、お前さんたちにもわかりやすく言い換えるなら、確か...400年ほど前になるであろうか」


どうやら師匠にとっては人間が定めた暦よりも、女神教が〇〇だった頃、という覚え方の方が印象に残っているようだ。


「その鍛冶師は女神に奉納すべく、生涯をかけて3つの武具を作り出した。邪を祓う刀剣。邪を跳ね除ける鏡がはめ込まれた盾。邪を清める勾玉の首飾り。使い手が未熟であったがゆえにこの余を打ち倒すこと能わなかったが、我に傷を負わせ血を流させる程度には優れた装備であった」


「師匠に傷を?それは凄いですね」


師匠の鱗は銀行の地下金庫の分厚い扉よりも硬くて頑丈なのだ。そんな鱗を切り裂いてダメージを与えられる刀剣を作り出すとか、すごいなドワーフ。というか、冷静に考えてみたら師匠は人類種の天敵とか言われてる邪竜扱いだもんな。そんなすごい装備があったらそりゃ意気揚々と挑みにかかる人間がいてもおかしくはないか。


「だが、結局は我に勝ち得なかったその剣士は、命辛々ドワーフの元へと逃げ帰り、それらの武具を返却した。以後、そのドワーフはそれらの装備を纏い我に挑む者を待ち続けたようだが、結局そやつの存命中に、我に挑もうという気概を持つ強者は現れなんだ」


だが彼は、病没する前に、ドワーフの建築技師たちを集め、命を賭してスパシーバの塔を建てたのだという。


数多の困難と試練を乗り越え、本当の知恵と力と勇気を兼ね備えた真の勇者が、いつの日か邪竜を倒してくれることを願い、その天辺に、3つの武具を封印した。以来、その塔は伝説の武器が眠る塔と呼ばれ、幾人もの冒険者たちが挑んだが、誰ひとりとして踏破に成功することはなかったという。


「欲深き者、腕に覚えのある者、名声を求める者、強さを追求する者。彼奴等が失敗を繰り返せば繰り返すほどに、塔の攻略難度とその先に眠るという武器の噂が肥大化してゆき、いつしか伝説の武器と呼ばれるようになった、というわけだな」


「そんな塔に入るための鍵を、なんで師匠が持っているんです?」


「昔、我に挑んだ冒険者パーティを倒したら落としたのだ。どうやら塔の謎を解くことができなんだようでな。その程度の力と知恵しか持たぬ、勇気と無謀をはき違えた愚か者どもの間を転々とするこの宝珠が不憫になり、余がそっと懐にしまい込んでおいたというわけだ」


邪竜を倒すために必要な武具を揃えるために必要なキーアイテムが邪竜を倒さないとドロップしないとか、それなんて無理ゲー??ちょっとフラグ管理メチャクチャ過ぎませんかねこの世界。


「ともあれ、退屈しのぎぐらいにはなるであろう?暇な時にでも行ってみるがよい」


「そんな『美術館の入場チケット新聞屋さんにもらったから友達と行って来れば?』ぐらいのノリで大事なものを渡されましても」


なんて言いつつも、やってきましたスパシーバの塔。優れた鍛冶職人たちの集う工房の国、カシミール公国。大陸横断鉄道の途中にあるカシミール駅で降りて、鉱山地帯を越えて旅を続けること十日程。


綺麗な湖の真ん中に、13階建ての白亜の塔が建っているという非常に風光明媚なその塔の近くには、スパシーバの街という結構大きな街があったので、そこの宿屋を拠点に攻略の前準備に勤しむ。なんでも街の人々によると、300年ぐらい前にスパシーバの塔が冒険者たちの間で一大ムーブメントを巻き起こし、何百人という冒険者たちがこの塔へ押し寄せてきたらしい。


だが宝珠を使えるのはひとつのパーティのみであるため、凄惨な奪い合いに発展し、あちこちに攻略に失敗して塔から出てきた冒険者たちから鍵となる宝珠を奪うために大勢の冒険者たちがキャンプを張った結果、商機を嗅ぎつけた商人たちが集まり、需要と供給が生まれ、いつしかテントだらけのキャンプ地は村になり、街になったのだという。


といってもここ200年ほどは宝珠も行方不明になってしまい、冒険者たちのレジェンドリームもすっかり冷め、残された街では移住した人々や引退した冒険者などが普通に暮らしているだけの、ただの街になってしまったそうだ。一時期は湖の水が血で真っ赤に染まったという逸話も残っており、平和なのはまあ、いいことなんじゃないかなー。


「いつの時代も、人の欲望ってのはよくも悪くもすごいもんですねえ」


「全くだ。しかし、本当に美しい湖だな。空の青、塔の白、草木の緑が湖面に反射して、とても美しい」


「ローガン殿は詩人にござり申すな」


そんなわけで、今回連れてきたのはこの三名。元冒険者ということで、ダンジョンアタック慣れしていそうな斥候のバージル。試し斬りがしたいというわけではないが、用心棒としての初陣ということで、ついてきてもらったカガチヒコさん。そして、意外にも考古学が趣味だというローガン様である。


『神殿とか神様とか、そういった旧いものについて学んでいるうちに、すっかり魅力に憑りつかれてしまってね』とは本人の弁だ。確かにヴァスコーダガマ王国も砂漠の王国で、古い神殿や謎ピラミッドやオベリスクもどきみたいなそれっぽい建造物があったから、親和性は高いのかもしれない。


とはいえあなたに何かあったら国際問題になりかねないので本当は屋敷でおとなしくしていて欲しかったのですが。


『退屈すぎて死んでしまったらそれこそ大変だろう?』と屁理屈を捏ねられ、『年頃の子供たちや倦怠期の妻にも構ってもらえずにパチンコ屋に行く小遣いもない、独りぼっちで寂しく休日を過ごす公園のベンチのお父さん』オーラ全開で迫られてしまったらさすがにダメとは言えなかった。ギャフン。


なおオリーヴは屋敷の護衛、クレソンは謎解きとか頭痛くなりそうだからパス、ということで今回は不参加である。イグニス様?またなんか軍隊引き連れてどっかの国と戦争しに行ったらしいよ。そもそも一国の皇帝陛下を気軽にダンジョン攻略には誘えないでしょ。


「さて、それじゃあいっちょ、昇りますか」


「おー!」


「頑張ろうね」


「うむ。楽しみにござる」


ちなみに外から飛んでいくという手は使えないようだ。塔全体に魔法がかけられており、たぶん見た目に反して内部構造はかなり広くなっているものと思われる。湖の畔から飛行魔法で塔まで飛んで行き、入り口のやたらめったら大きくて重厚そうな扉の前で宝珠をかざすと、宝珠が虹色に発光し始め。


そして、扉が開くのではなく、気づけば俺たちは、塔の内部へと転移させられていたのだ。

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