ブラック免許と交通違反
〜新登場人物〜
十ノ宮一
二戸宮風凛
高速道路をしばらく走る。20分ほど走っただろうか。周りの景色の変わり方を見て気づいた。
「…法定速度守れよ」
「守ってまーす。高速道路は高速で良いんでしょ?」
「基本100km/hだ。300も出すな」
「だいじょぶだいじょぶ。私に任せなさい!」
何が大丈夫なのか。甚だ疑問が残るが、その言葉を皮切りに満面の笑みで少しづつ速度を上げていく。
スピードメーターを見ると、既に350km/h。
速すぎる。
流石ヴェイロン。これでも最高速ではないというのだから驚きだ。スポーツカーは凄いなぁ。
「一応言っておくけど、これスポーツカーじゃないよ?」
「こんなスピード出るのに?」
「これはスーパーカーだよ。」
「そうなのか。いや、別にどうでもいいけど。っていうか、あとどの位で着く?」
ちらりと車の時計を見て、
「んー。40分くらい?」
と答える。
「…あれぇ?うちから東京までのルート調べた時は、到着まで5時間って書いてあったんだけどなぁ?」
「ゆーくんの目、壊れてんじゃない?」
「何かが壊れているせいにするならせめてスマホのせいにしろ。ってか、スマホも壊れてないし、壊れてるとしたらお前の頭だ」
「破壊衝動の塊なだけにぃ?」
「謎のテンションの上がり方をするな」
ってかこいつ自分が破壊衝動の塊ってこと認めたぞ。
欠点を認めたやつほど面倒な奴はいない。普通で面倒だから、ダブルで面倒だ。
「お得じゃーん」
「いや、不得だよ」
「でも今の状況はゆーくんの不徳の致すところだよ?」
「上手いこと言うな。いや、大して上手くもないわ」
しばらく走り、居酒屋へとたどり着く。電話した時間からまだ1時間半くらいしか経っていない。早すぎる。
中へ入り、榊の所へ向かう。
「よぉ、夢乃。遅かったな」
「電話来てから2時間も経ってねぇよ。お前時間感覚鈍ってるのか?ってかこの状況何だよ」
「質問はひとつにしてくれ。お酒のせいで頭が回らないんだ」
「なら呑むな」
正常な思考が出来なくなるって。どれだけ呑んでるんだ。
「冗談。時間については、花咲ならもっと早く送れそうだったから。この状況はカラオケ終わって、そのまま遊んで、そこからの合コン中だよ。クラスの人間ほぼ集まってるから、折角なら全員で飲みたくてさ」
「帰っていいか?」
「この時間に呼んだら来てくれるのお前たちくらいなんだよー。頼む、幼馴染のよしみでさ」
「はぁ。その性格にどれだけ振り回されてきたか…」
「まーまー。私は今から呑む気分にもうなってるしさ、実際ここまで来た時点でゆーくんもそうなんじゃない?」
う。
確かにもう既に呑む気分にはなっているのだが、合コンっていうのが気に食わない。
しかもクラス内。既に女子からの熱い視線を感じているのだが。
逆に友咲は男子からの視線が気になるらしく、
「…別の部屋で呑みたいなぁ」
とか呟いている。そもそもこいつ車で来たんだから、酒を呑んではいけないはずだが。
「お前酒呑んだら車どうするんだよ」
「私はアルコール成分をすぐに分解出来るからだいじょぶだよ〜」
そう言ってまっさらのカードをこちらに見せる。
「なんだこれ」
「間違えた!」
再度ポケットを漁り、黒色ベースに金色の文字が映えた免許証を見せてくる。
「なんだこれ」
「ブラック免許!超健常者に国から渡される免許なんだよ?」
「この国はもう終わりかもしれないってことか…」
高速道路で平気で350km/hを出すやつが健常なわけがあるか。いや、そうであってたまるか。
「意地悪なことばっかり言うなよ。友咲は女の子なんだからな?」
「そーだよ!可憐で可愛い女の子なんだからね?」
「いや、その感覚俺にはわからんわ」
「なんてこと言うの!?」
「…それは否定できないな」
「さっくんまで!?」
「さて、話もここまでにしてそろそろ呑むか」
やべぇ、雑談しすぎたかな。俺は男子の視線が痛いし、友咲は女子からの視線が痛そうだ。
これ以上取り返しつかない事になる前に、とりあえず席につこう。
「よろしく」
右隣の女子ウケの良さそうな男に声をかける。
「よろしく。僕は十ノ宮一。一って呼んでね」
軽くこちらに微笑む。可愛い感じの笑顔を浮かべたからか、横目に見える女の子がザワザワしながら十ノ宮の方を見ている。
「うん、よろしく」
「ところで、友咲さんとはどんな仲なの?」
「いきなり踏み込むねぇ」
「そう?えへへ」
「褒めてないよ?まぁ、腐れ縁だよ。みんなの考えているような関係では無いから」
「へぇー、そうなんだね。お似合いだと思ったけど」
「…そうかねぇ」
俺と友咲がお似合いに見えるのか。そんなことは無いのだが。
まぁそれは置いておいて、左隣の体育会系っぽい筋肉質な奴にも話しかけておこう。
「よろしくね」
「ふぁ?よふぉふぃふ」
口の中いっぱいに肉を詰め込んでいるせいか、全く上手く話せていない。
「…俺、夢乃って言うんだ。君は?」
「ひょっふぉふぁっふぇ」
なんて言ってんだ?全くわからん。
「んー、はぁ。やっと呑み込めた。俺は二戸宮風凛。よろしくな」
「煮込みプリン?」
「ふっは!お前、面白いこと言うな!この名前でそっちに注目したやつ初めてだ!」
「え、本当?」
「普通不倫のほうを弄ってくるからなぁ」
「へぇ、そうなんだね」
まぁ、両隣への印象はそこまで悪くなってなかったらしい。ちょっと安心。
後は呑むだけ呑もう。あんまり絡んでも面倒だし。
少し酒を飲む。ジョッキ2杯程度だろうか。疲れと空き腹への酒のせいでだいぶ眠くなってきた。
はぁ。眠い…。やべ、寝そう。ここで寝るのはまずいよな…。
でも、瞼に逆らえない。
「…ぐぅ」
プリンってうまいよね
煮込みプリンは不味いよね