オークの解体、刀の美肉
「夢?何言ってるんですか?ここは現実ですよ?」
「あーはい、そうでした。で、どんなクエストでしたっけ?」
「そんなに抜けてる人でした…?まぁ、いいです。オーク2体の討伐ですよ!達成したから私を呼んだんじゃないんですか!?」
オーク、というと恐らくこの2体のことだろうか。とりあえず適当に相槌を打っておこう。
「えーと、うん。終わったよ。…これって人間じゃないよね?」
「何馬鹿なこと言ってるんですか?倒したんなら胸の辺にある核をちゃんと取ってきてくださいよ。そこまででひとつのクエストですから。…戻ってくる場所はさすがに覚えてますよね?」
「いや、ごめん覚えてないや」
「…はぁ。ギルドに頼んで転移先そこにしておくので、クエスト終わったら水晶から行き先選んで飛んでくださいね。」
水晶玉は光を徐々に失う。人影も薄くなり、女の声も聞こえなくなる。
「…そろそろ起きようかな。でもなぁ、久々に面白い夢だし、もうちょっと楽しもうかな」
同じ夢を連続で見れるという確証はない。余っ程強くもう一度願わなければ、余っ程忘れたい夢でもなければ連続で見ることは無いだろう。
実証済み。
「…っと、そういえば核とか何とか言ってたけど、解体すればいいってことなのかな?」
短刀を腰の鞘から取り出し、解体しようと試みる。が、そうだ。そもそもこの二匹は死んでない。生きたまま解体するのは気分が悪い。
まず殺すか。
短刀で首を落とす。5分はかかると思っていたが、一太刀ですとん、と落ちてくれた。
相手が豆腐並みに柔らかかったのか、木製バット並みの筋力のお陰か。
いや、豆腐並みなら殴った時点で粉砕しているだろう。かと言って筋力のお陰でも無さそうだ。
力があっても技術がないと首はここまで綺麗に切れない。
どこで知ったかって?秘密。
となると…この短刀に宿っている何かのお陰だろうか。というのも、先程から妙に強いオーラを感じている。この感じは何なのだろうか。
…そうだ。この力を可視化しよう。ここは夢。やりたい放題。実際そうしたところで現実に実害も無いしね。
そうだ、可視化の能力に名前をつけよう。使いたい時にその単語をいえば使えるとか良さそうだし。
うーん。そうだな…。像化とかでいいか。
「像化」
試しに呟いてみる。すると、小刀から怒髪天の如きオーラが湧いてくる。
わかりやすく言うと、到底倒せない敵を倒す為に人間が急激に成長したならこんな髪型なのだろう、という感じ。
「うっわ、何これ」
『…聞こえるか』
白銀色の硝子のように薄い刀身から出る黄金のオーラに見蕩れていると、不意にどこからかドスの効いた太い声がする。
周りを見渡すが、声の元らしきものは無い。この声の主、怪しすぎる。そういう時は、
「いや、聞こえないです」
『…聞こえてるか?』
「いや、聞こえないです」
よく分からんものは無視をしよう。臭いものには蓋をして養生テープでぐるぐる巻きにしてマリアナ海溝に沈める。
そんな性格の俺に疑問形で聞いてくるのが間違いだ。
『…聞いてください』
「歌うんですか?」
『そういうのじゃない!というか聞こえているよな!?』
「いや、聞こえてないですね」
『聞いてくれよ…』
「聞こえないものは聞けないですよ」
『ぐぬぬ…。うーむ、お!そうだ!ふっふっふ。これならどうだ!』
不意に刀が手から飛び退く。
…?
いや、自分でも何言ってるか分からない。
『驚くのはここからだ小童!』
ぼふんとコミカルな音が聞こえたかと思うと小刀から煙が立つ。
それが消える頃、目の前にはダボッとした肩出しニットを着た1人の猫耳女の子が立っていた。
「ほれ!崇めよ!儂が無銘刀、銘である!」
声も先の禍々しい声から、可愛らしい声になっている。…さっきの声の元がこんな見た目になっているという事なのか。
…美肉おっさん?
「うわ、きつ」
「なんて事を!」