夢中で会話、断片的な記憶
「ふわぁあ…朝か」
せっかく13:00にかけた目覚まし時計に圧勝してしまった。現在時刻7:20。
最近は面白味のない夢ばかり見てしまう。まぁ、仕方がない。
というのも、俺の夢は80%が実体験に基づいていて、残りの20%は世界の歴史に基づいたものになってる。俺もたまには現実とは全く解離した夢を見てみたい。
そんなことより、まずは今日の予定だな。今日は…そうだ、夕方から塾のアルバイト、だけかな。バイト怠いなぁ。
そうこう考えているうちに、スマートフォンに一通の電話がかかってくる。
「…おはよ」
「夢乃、俺と話した?」
この声は、榊か。さっき夢の中で聞いた声とは変わっていて、一瞬気づかなかった。
「あぁ、うん。…榊だよね?」
「は?当たり前だろ。ていうか夢の中で話しかけんなよ。夢の中で言ったかもしれないけど、話しかけられるとえも言われぬ様な違和感が残る」
「暇だったもんでさ。すまんね。」
あぁ、そうだ。あの不思議な本について一応聞いておこう。
「っていうか…そうだ。はっぴぃのキミイズミライ…だっけ?」
「あぁ、キミイズミライは7年前に終わったよ。今はっぴぃ先生はユーライズミー描いてる。っていうか夢乃、興味でも持ったのか?」
「いや、お前はいつも面白い名前の本読んでるなってさ」
「馬鹿にしてる?」
「別にしてねぇよ」
うん、してないしてない。全くしてない。
「まぁ、読んでみな。今まで純恋愛だったけど今作からバトルハーレム系だからさ」
「いや、遠慮しとく。俺は国語で読む文で十分。ってかバトルハーレム系って何だよ」
「俺にそれを聞く?いいの?語るよ?」
「いや、遠慮します。…要件ってそれだけ?」
「この話はお前が振っただろ」
あれ、そうだっけ?興味ないことは聞くもんじゃないな。どんな話したかもすでにほぼ忘れた。ユーイズミーだっけ?
「まぁいいや。あ、そうだ夢乃。お前塾でバイト始めたんだって?」
「ああ、うん。」
「どう、楽しい?」
「いや、面倒。女の子がうるさい」
「…なに?自慢?喧嘩したいの?」
「いや、そういうつもりじゃなくて普通にうるさいんだよ」
「あぁ、ワーキャー黄色い声援じゃなくて?」
「いや、それだけどさ」
「」
「ん?おーい?」
「いや、お前の感覚が分からなくなった。顔が良いだけでそんなに人気出るかね…」
「お前も顔良いだろ」
「お前もってことは自分が顔いいの認めてんのか?」
あ、日本語難しい。外国人のふりすれば許させるかな。
「ワタシニホンゴワカリマセン」
「あっそ。」
許された…というか、ただただ呆れられたという方が正しいだろう。
「うーん…まぁ話したいことはこんなもんかな。あと、お前友咲と夢で会っただろ。何となくそんな感じする。どうせ覚えてないだろうけど一応友咲に変な夢見たか聞いておけよ?」
「次会った時聞いておくわ」
「お前が今電話で聞けよ」
「電話ぁ?うるさそうじゃない?」
「いつ話してもうるさいだろ。…まぁ、別に俺が聞いとくか」
「おなしゃーす。んじゃまたね〜」
ピロリン。
さて、塾の時間まで適当に時間潰すか。
デジタル時計の方を見る。現在時刻8:07。
乱雑な意地からこの部屋には娯楽になるようなもの。知識を増やすものをを全く置いていない。
出来ることといったら空で円周率を求めるくらいだ。
この前は67桁まで求めたところで鍵のかかった扉をピッキングして入ってきた友咲に邪魔をされてしまった。
今日はそんなことがないことを祈ろう。
ピコン。
LINEが来た。
友咲だ。まさか夢のことを聞いてくるのではないかと内心少しヒヤヒヤしたが、
今日のカラオケ来ないの?
平たく言えばそんな内容だった。
きちんと言えば、
[ゆめちー!見ってるー?君の親愛なるゆーちゃんです!今日のカラオケ楽しみだね!早く13時にならないかな?ゆーちゃんは私の家集合だよ?ちゃんとさっくんからこの旨聞いてるよね?ね?待ってるよ?]
…読みずれぇ。ってかさっくんは毎度のごとく榊だとして、その話俺聞いてないぞ?
嫌われてる?