第1話・序章
今年の夏はいつもと違う夏ですが、それでも夏と言えば「夏休み」です。
そこで、夏休みの物語特集に応募します。(そんなの無いですけど・・)
初めてのなろうです。どうかよろちこお願いします。
第1話・序章
岐阜県・高山市。八月中旬
通称、飛騨高山市と呼ばれるここは、四方を深い山々に囲まれ独立した盆地で、古来よりの歴史あふれる城下町である。
高山市は、日本の市町村の中で一番の広さを持ち、その面積はなんと、香川県や大阪府よりも大きく、東京都とほぼ同じ広さがある。
そこに東京都の100分の一以下の約9万人が暮らしている。
広大な面積の殆どが険しい山間であり、日本の背骨・北アルプスの稜線に接して、日本の山の代名詞とも言える槍ヶ岳、穂高岳も高山市の境界内に位置している。
行政の中心地である高山市街は、江戸時代の城下町が残されて、「飛騨の小京都」と呼ばれ観光客も多い。
その飛騨の小京都である高山市で、祖先の霊を迎える・迎え火が灯された旧盆8月12日、ある事件が起こっていた。
8月13日早朝、骨董商・越中屋の玄関が開けっ放しになっているのを不審に思った隣人が、店内に声を掛けてみたが返事は無かった。
隣人は、声を掛けながら店内に入り、早朝の薄暗い店の奥で俯せになって倒れていた店主の袴田義男70才を発見した。
「義男さん、どうした?」
隣人は、声を掛けて袴田を引き起こして、その無残な光景に硬直した。
袴田の左手の指が、二本切断されて床に落ちていたのだ。
だが、袴田はまだ生きていた。意識はないものの、温かい体でそれと知れた。
隣人は表に飛び出て、自分の家の中に向かって叫んだ。
「救急車だ。救急車を呼んでくれ!」