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地球よ、永遠に  作者: ヒルナギ


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帝都への旅路 05-10

 フェリックス・ガタリは連邦艦隊旗艦ヴィシュヌの執務室で、ヴァーチャル・コンソールを操作する。

 殺風景な部屋が、大きなヴァーチャル会議室の映像に切り替わった。

 そして、となりに彼の副官であるシモーヌ・ベイユ中佐の姿が現れる。ホログラム映像で映し出されたベイユ中佐の姿は、低重力惑星に適応するための身体改造を受けている種族らしく、細くしなやかな体つきをしていた。

 神話に登場する妖精のように、中性的で繊細な美しさを感じさせる顔立ちである。


「ガタリ大佐、作戦会議の準備が整いました」


 ガタリは、ベイユの言葉に頷く。

 二度にわたってありえてはならない大敗を喫っしたガタリの艦隊は、もはや独自の判断での行動をさせてもらえなくなっている。

 量子リンクを使って、近隣の星系に待機している銀河東部第七艦隊の旗艦と通信回線を確立し、第七艦隊参謀部の査察を受けながら作戦会議をすることになっていた。

 星系を跨がって通信を行うのは、おそろしくリソースを消費しコストが高い行為だ。とんでもないリソースの無駄使いとも、いえる。

 まあ、くびにされて軍法会議にかけられるわけではなく査察つきの作戦続行が認められるとは、ある意味温情のある措置ともいえたし、他に選択肢が無く仕方がない緊急措置ともとれた。

 なににせよ、せいぜい温情に感謝するとしようかとガタリは笑みを浮かべる。

 笑みを浮かべるといっても、毛皮に覆われた猫の顔で口を歪め牙を剥きだしただけだ。笑っているというより、獲物をまえにして舌なめずりしているようにみえる。


「えっと、大佐?」


 ガタリの表情をみて、思わずベイユが声をかける。ガタリは真顔に戻ると、呆れ顔のベイユに頷きかけた。


「では、始めようか。わたしの、弾劾会議を」


 ベイユは軍人らしからぬガタリのもの言いに対して軍人らしい態度は崩さず、慇懃に頷く。


「はい、大佐。会議システムを起動します」


 ベイユがヴァーチュアル・コンソールを操作すると、仮装会議室上に次々と会議参加者のホログラム映像が出現していく。

 二十名の会議参加者のうち半数は、ガタリの艦隊に所属する士官でクレルボーやドルーズの姿もある。その対面側に、第七艦隊の参謀部に所属する士官たちの姿が現れた。

 銀河東部方面軍所属第七艦隊の士官たちは、いかにも連邦軍らしく多彩な出で立ちである。

 あるものはベイユのように低重力に適応した、妖精のように細く優美な身体を、もつ。

 その隣には、高重力惑星に適応したらしく背の低い頑強な身体を持つものがいた。

 また、海洋惑星に適応したなめし革のように無毛の皮膚と、鰓のような器官を首筋にもつ種族もいる。

 その雑多な種族からなる士官たちの中心にいる艦隊司令官は、ガタリと同じ様に毛皮に覆われた身体をもつおとこだ。

 ただその艦隊司令は猫科がベースとなっているガタリとは違い、犬科をベースに身体改造をしたようにみえる。

 かつてアフガン・ハウンドと呼ばれた口吻がながく、優美なウエーブのかかった体毛を持つ犬に似た姿をしていた。長く柔らかそうな光沢のある毛に覆われたその顔は、貴族的な気品を感じさせる。

 そしてその艦隊司令は気品ある姿に相応しい、プライドが高く規律に厳しいおとこであったはずだ。ガタリが苦手とするタイプのおとこを監査役として任命するあたりに、軍の悪意をガタリは感じる。

 とはいえガタリは表情を変えることなく、その艦隊司令に向かって語りかけた。


「さて、アントニオ・ネグリ准将、あまり時間を無駄にしたくないので早速会議をはじめさせてもらいます」


 ネグリは、無言で頷く。その黒曜石のように輝く瞳からは、何の感情も読み散れない。

 ガタリは牙を剥き出しにした、凶悪な笑みを浮かべ指をならす。


「では、ベイユ中佐。さっそく、わたしの艦隊を壊滅させた未知の戦艦に関する報告をはじめてくれ」


 ベイユは、樹木を思わせる細くしなやかな身体をまっすぐのばし、報告をはじめた。


「識別不明の敵艦にわたしたちは、ルシフェルというコードネームをつけました。かの船は神話に登場する天使と同じく、十二枚の翼を持ちますので。これからわたしは識別不明の戦艦を、ルシフェルという名で呼びます」


 ネグリは、黙ってうなずく。ベイユは、話を続けた。



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