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地球よ、永遠に  作者: ヒルナギ


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戦場乙女の帰還 03-11

 ティークは頷き、おとこたちは一斉にティークを見た。

 フランツは、おとこたちがティークを見る顔にリスペクトはなく、値踏みするような眼差しであると思う。

 ただ、ティークは自分に向けられた無礼ともいえる眼差しを、全く気にしている様子がない。

 フランツは流石だなあと思い、にやにやする。


「では、さっそく現状の報告からしてもらおうか。フリードリッヒ艦隊司令」


 ティークは隣に座る、猛禽のように痩せて目つきが鋭いおとこに向かって言った。

 フリードリッヒは、ティークの言葉を無視して隣に座っている若いおとこに目で合図をする。


「現状の報告は、わたしシュレーゲル参謀官からさせていただきます」


 シュレーゲルは一同の中では、若い部類に入るおとこだ。ティークまではいかないが、戦士というよりは詩人のように整った思慮深さを感じる顔立ちである。


「ブリュンヒルドは現在、火星の軌道を越えました。テラに向かって亜光速からの、減速プロセスに入っています」


 シュレーゲルは手元のヴァーチャル・コンソールを操作し、一同の中央にブリュンヒルドの航路図を映し出す。

 シュレーゲルは、中空に映し出されたブリュンヒルドの後方をライトポインタで指した。


「連邦艦隊は、そのすぐ後ろまで迫っています。ブリュンヒルドがテラ防衛圏に着くのが十二時間後、連邦艦隊が追いつくのはその一時間後になります」


 ティークは、頷く。


「ブリュンヒルドは辛うじて逃げきれる、というわけだね」

「我々が勝てば、だがな」


 フリードリッヒが不機嫌な口調で口をはさみ、ティークを苦笑させる。


「では、連邦艦隊の構成を聞かせてもらおうか」


 ティークの問いに、シュレーゲルが頷く。


「連邦艦隊は、戦艦インドラクラス六隻、強襲揚陸艦ヴァーハナクラス十二隻です」


 ティークの眉間が、曇る。


「ヴァーハナクラスの搭載するミリタリーモジュールは、一隻あたり何機だね」


 ティークの質問に、シュレーゲルは冷静に答えた。


「通常は四隊編隊、三十二機です。執務官」


 ティークは、うなり声をあげた。


「全機およそ三百八十か。月面基地は、軽く制圧されるな」

「月軌道に入られる前に、叩けばいいだけのことだ」


 フリードリッヒが、冷徹に言い放つ。

 ティークは、戸惑ったように聞く。


「我々の艦隊の構成は、どうなる?」


 シュレーゲルが、表情を変えずに答えた。


「第一機動艦隊と、第二機動艦隊が八時間後にテラ防衛圏に到達します」


 ティークは、頷く。


「ワルキューレクラス戦艦四隻に、エインヘリアルクラス巡洋艦八隻だな。それにテラ防衛艦隊を合わせれば、数的には互角になるか」


 おとこたちは、皆そろって少し失笑する。

 フリードリッヒは、馬鹿にしたような眼差しをティークに向けた。

 苦笑しながら、ひとりの若いおとこが手をあげる。


「発言していいか? 執務官」


 ティークは、頷く。おとこは、真っ直ぐティークに顔を向ける。

 おとこの右顔面は、炎の刺青が入っていた。おそらく、その下にある火傷の後を目立たなくするためにいれたようだ。顔の左側をみるとおとこは色男といってもいい顔立ちであったことが、判る。


「ティーク執務官、おれはテラ防衛艦隊司令補佐ホフマンだ」


 ホフマンは、少しうんざりしたような口調で語る。


「おれは、エインヘリアルクラスに乗っている。ティーク執務官、あんた知らない訳じゃあないと思うがあれは元々アステロイドベルトで採掘用に使っていた工事船を流用したものだ。ミリタリーモジュールも八機しか、搭載できない」


 ティークは、頷く。


「知ってるよ、近接戦になれば我々の勝ち目はないだろうな」


 フリードリッヒが少し苛立った声で、口を挟む。


「連邦艦隊のインドラクラスは、ロングレンジの砲撃戦に特化した戦艦で、ワルキューレクラス以上に強力な主砲を持つ。砲撃戦では、勝ち目がない」

「それももちろん、知ってるよ」


 ティークが平然と言ってのけたので、おとこたちは少しざわつく。


「ティーク執務官」


 王が、口をはさむ。


「おれが、発言していいかね」

「もちろん」


 ティークが笑みと共に答えるのをみて、王は苦笑する。

 おとこたちは少しばかり困惑した顔で、王を見つめた。

 皆を見つめる王の瞳は、星無き深夜よりも重く暗い闇を宿しているようにみえる。

 しかしそこにあるのは絶望の闇ではなく、夜明け前の深い闇とも思えた。


「諸君らにこのような願い事をするのは、正直慚愧の念にたえないのだが」


 王はゆっくりと、優しげといってもいい声で語る。

 王は、力強い眼差しで全員を見渡す。


「一時間だ。一時間だけ、生き延びてくれ」



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