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地球よ、永遠に  作者: ヒルナギ


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最初の接触 02-21

 ケンは、ブルース・ブロディ護衛官のほうを見る。

 ブルースは、表情を変えずケンの眼差しをうけとめた。


「あんたがいれば、おれたちの助けなんざなくても、切り抜けられたろう」


 ブルースは、驚いたように目を開きそして微笑む。


「それは、おれひとりでテロリストのミリタリーモジュールを突破し、戦艦を沈めることができたってことか?」

「そうだ」


 真面目に頷くケンを見て、シルビアは大きな笑い声をあげる。


「あら、ブロディ護衛官。随分、高い評価をいただいてるじゃない」


 ケンも、笑い声をあげる。シルビアのそれとは違い、低くシニカルな笑いだった。


「あんたらは、王族種が自分たちを銀河帝国の首都へ連れて行くような状況を作りたかった。そうだろ」


 ブルース・ブロディ護衛官は、穏やかな笑みを浮かべている。


「おれたちは、命辛々ここへたどり着いた。それだけだ。ブラックソード戦闘隊長、あんたはおれを過大評価しすぎだね」


 その瞬間、ケン・ブラックソードは、暗黒の炎が燃え上がるような殺気を放つ。

 ブルースは一瞬身体をふるわせた。その瞳に、野獣のような光が一瞬だけともる。しかしすぐ、もとの穏やかな笑みを浮かべた。

 ケンは、嘲るような笑い声をあげる。


「どうした、ここでやろうぜ。そうしたら、おれのいったことが本当だと判る」


 ブルースは、困ったような顔になる。


「おいおい、素手で殴り合ってパイロットの技量が判るっていうのか」

ケンは、大真面目に頷く。

「ああ。おれには、判る。動態視力、反応速度、身体能力が判るからな。説明するより、やったほうがはやいぜ」


 既に押さえきれないような野生の殺気が、ケンの体から溢れ出していた。ブルースの身体は、本能的にそれに反応しつつある。ブルースの体が、膨れ上がっていくような錯覚を感じさせた。

 ケンは、獲物を前にした狼の笑いを見せている。ブルースは、少し戸惑ったようにそれをみた。まるで、ケンの顔が押さえきれない喜びに歪んでいると思えたからだ。

 唐突に、シルビアが大笑いしながら手を叩く。


「あっはははは、面白いわね。テラでは、そういうジョークが流行ってるの?」


 ダーナは、平然と微笑みながらケンの前に立ちふさがる。ケンは、ダーナの背中で視界をふさがれ顔をしかめると肩を竦めた。


「ごめんなさい、ガーンズバック調査官。何しろ辺境なもので、帝都のように洗練されたジョークは知らないんです」

「シルビアでいいわよ、ねえ、わたしもあなたをダーナ王女とお呼びしていいかしら」


 ダーナは、野に咲く花のように笑って応える。


「もちろんです、シルビア調査官」

「さて、ダーナ王女。そろそろ教えてちょうだいな。あなたがたは、わたしを帝都までつれていってくれるのかしら」


 ダーナは、表情を変えない。そして平然と、言い放つ。


「わたしは、この船では一練習生にすぎません。わたしたちの艦長、ワルターとまずお話いただけますか?」

「あぁ、まあそうねぇ」


 シルビアは、少しつまらなそうにワルターをみる。

 ワルターは、いつもの凶悪な表情でシルビアを睨む。


「シルビア・ガーンズバック調査官。おれにできるのは、あんたをテラに連れて行くところまでだ。その先は、テラの執務官と直に話をしてくれ」

「ありがとう、ワルター艦長。感謝します」


 シルビアは、事務的な口調で言った。

 ケンは、あきれたように乾いた笑い声をあげる。


「艦長、おれは当直に戻るぜ。ダーナ王女のお説教は、当直明けにしてくれよな」


 ワルターは、煩げに頷く。ケンは軽く手をあげ、作戦室を出ていった。

 ワルターはあらためて、シルビアのほうを向く。


「さて、ガーンズバック調査官。我々はテラへの帰路を、急ぐことにする。あなたがたの船は捨て去ることになりますが、かまいませんな」


 シルビアは、穏やかな笑みをみせ頷く。


「もちろんです。かまいませんとも。必要なものは全て、持ち出してあります」


 ワルターは、吠えるように言った。


「ヴェルザンディ、聞いているか」


 作戦室の宙に、白いレースに飾られた黒いドレスの少女が姿を現す。


「お呼びですか、ワルター艦長」


 シルビアは、興味深そうにヴェルザンディを見ていた。おそらく、帝国にはないタイプのユーザーインターフェースなのだろう。ワルターは、ヴェルザンディに頷きかける。


「ブリッジのユーリ・ノヴァーリスと繋げ」

「ラジャーです、ノヴァーリス航海班長を呼び出します」


 ヴェルザンディが手を振ると、リニアシートに座って操舵レバーを握るユーリのホログラム映像が浮かび上がった。

 ユーリの映像は、ワルターのほうを向くと敬礼をする。むこうからも、こちらが見えているということだ。


「ユーリ・ノヴァーリス航海班長、本艦はスペースセイルをフルセイル状態にして準光速に到達するまで核プラズマ推進プロセスを発動させる」


 ユーリは、頷く。


「ラジャー、これよりブリュンヒルドをフルセイルにして核融合反応弾を使用し、加速プロセスに入ります」


 ユーリは、ヴァーチャル・コンソールの操作をはじめた。

 ワルターは、シルビアのほうを向く。その不機嫌に見える顔は、相変わらず睨みつけているようであるがシルビアは微笑みながら見つめ返していた。


「ガーンズバック調査官、本艦はこれより加速プロセスに入ります。ブリッジと居住区域はエナーシャル・キャンセラーで加重を1Gまで軽減しますが、それ以外の場所では十Gを越える加重がかかります。居住区域の船室にて、待機してください」


 シルビアは頷くと、ダーナに微笑みかける。


「ダーナ王女、船室まで案内していただけるかしら」


 ダーナは微笑み、頷く。


「では、こちらへ。シルビア調査官」



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