アルタインの冒険者ギルド
ここは冒険者達が集う街アルタイン。魔王城からもっとも離れており
ひよっこたちがまずここから冒険を始める。周辺の敵が弱く、強い敵が
現れることも無いため、レベルが低い内はここを拠点としてレベル上げを
するのだ。
このアルタインの冒険者ギルドは夜になれば狩りから戻ってきた冒
険者で溢れかえる。酒場も兼任している為、専らこの時間は酒場として
機能する。
幾つも酒場がある中でここも喧噪に包まれている店の一つだ。俺は、
冒険資金(生活費)を稼ぐ為にここに日々通っている。通っている
のだが……。
「お〇んぽー!」
放送禁止用語を大声で叫んでいる女が一人。その豊満な肢体を露わ
にしてその他荒くれ者の視線を独り占め中だ。酒を煽り、馬鹿騒ぎ
している面々。
ロリコン、ショタコン、酒乱のコンボとは……。しかもあいつ、
仕事中だった癖に。ノリノリでもはや手がつけられない。ギルマスに
飲んだ分やら諸経費は給金から引いておくと言われる始末。
「エイルちゃんの、ちょっといいとこみてみたい! 一気! 一気!」
音頭に合わせて一気飲みする駄女神エイル。完全に酔っ払いって
いて別人である。俺の純情を返せ!
また飲み比べに勝利した駄女神。モブ冒険者の服をまた一枚脱がす。
というか、もう既に出来上がって全裸になっている奴もいる。とにかく
絵面が酷すぎる。
全く負ける気配も無くまさにザル。酒乱で絡み酒で一気に下品に
なるのが頂けない。お前は誰だと言いたくなる位に。
カタリナはもう既にいない。夜になる前に彼女はいなくなる。
テレポートで自分の家へと戻っているようだ。帰る家がある現地人は
いいな……。
もうお家に帰りたい……。とは言ってもじゃんじゃん注文が入る。
あいつら、酔い潰れて金踏み倒したりしねーだろうな。
酔い潰れて店から動かないもんだから、ギルマスが寝泊まりしてた
日とかあったもんな。ちゃんと代金回収するために。
「なあなあ、エイルちゃんちょっとだけちょっとだけ触らせてよ!」
「だめですぅー。お客さぁーん芸子に触らないでくださぁーい」
そう言って触れようとするおっさんの手をぺしっと叩いて払いのける
駄女神。
「なぁ、そう言わずにいいことしようぜ? 俺達いいかんじじゃね?」
「私は女神えいるなのです! 処女神なの! 私の体は安くないの!
れいぷとかしたら一生使い物にならない魔法を掛けてやるんだから!」
酒場の女神様が何か言ってる……。
「そんなこと言わずにさーちょっとだけ! 先っちょだけでいいから!」
「まるでどこかの童貞さんみたいなこといわないでくださーい。 きゃー
犯されるー! れいぷまーん! 童貞男ー! 見てないで助けなさいよー!」
「うっさい! 誰がレイプマンじゃ!」
しまった。お陰で冒険者達の視線を一身に受けてしまった。ほっとけば
良かった物をついつい突っ込んでしまった俺の馬鹿!
「にーちゃん……。レイプは良くないぜ。幾ら童貞だからってよ……」
「レイプしたのに童貞ってなんじゃそら!」
「結局失敗したのかよ! どっちにしろ情けない奴」
非難ごうごうである……。童貞とバレた上にレイプ未遂もバラされて
死にたい……!
「そもそもー。なんで女神の私がー、あんたと一緒に魔王退治しなきゃ
いけないのよー。 そりゃ……。この世界は私の担当だから、成果が
でなければ私が何とかしないといけないにしてもー」
更に愚痴まで出て来た。面倒くさい奴である!
「まぁまぁ、飲もうぜ。エイルちゃん、嫌なことは忘れてぐいっとさ!」
これこれ、更に飲ませるんじゃありません!
「ぷはー! うまい! もういっぱい! おい童貞! 酒だ! 酒を
早く持ってこーい!」
ついに俺のことを童貞呼ばわりかよ! しめるぞ、この駄女神!
そう思いながらも小心者の俺は言われたとおり酒をついで持って行く。
それにしても酔い潰れて全裸で寝ている奴も出ている中、こいつは
中々潰れる気配が無い。酒乱は頂けないが、酒強すぎ。
辺りはゲロ塗れである。誰が掃除すると思ってんだ! 糞が!
殺意が充満するがこれも仕事だ黙々とこなそう。
「うへへ……可愛い子達がいっぱい……」
ついにエイルがトリップし始めた。ストリップしてくれればいいのに。
今なら脱がしてもばれなさそうだけどな。ただ、こいつ下手に手を
出しても面倒くさいこと間違いない……。
あの時のレイプ未遂はどうかしてたわ……。
結局全員酔い潰れた後、ゲロに塗れてない床におっさん達を転がし
掃除と食器洗いを済ませた、後処理(取り立て)はギルマスに任せて
俺は寝床へと帰る。
酔っ払い女神に服を着せて。別に下着姿で担いで行くのも良かったが
一応、マナーとしてはダメだろうと言う判断でだ。
案の定、次の日二日酔いで酔い潰れて仕事を休んだ馬鹿だった!