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3話 ダンジョン

「完了です」


今いるのはティティスの街の冒険者ギルド。

ここへは、当然冒険者になる為にやって来ている。


カウンターの一つで、受付をちょうど今終わらせたところだ。


「冒険者になったからと言って、自分の何かが急に変わるわけではありません。浮かれず、コツコツと頑張ってくださいね」


受付のお姉さんが優しく微笑んでアドバイスしてくれる。

どうやらいい人の様だ。


「どうかあなたに、ティティス様の加護があらん事を」


祈りの言葉から、彼女がティティス教である事が伺えた。

女神ティティスは幸運と慈愛を司る女神だ。

上層部は兎も角、一般の信徒は優しい人が多い気がする。


因みに僕を転生させてくれたのも、他でもないこの女神様だった。

神器と言っても過言ではないこの人形に、僕の魂が宿っているのもその為だろう。


でも「あれっ」と思う。

人形の体って、転生って言うのかな?

生き物じゃないよね。人形って。


まあ考えても仕方ないか。


「はい!」


サラは受付嬢の言葉に元気に返事を返し、ギルドを後にする。

向かうはダンジョンだ。

彼女はまず、低階層に籠って自分を鍛えるつもりだった。


この世界の生物にはレベルが存在している。

ゲームなどと同じで、上がれば当然その分能力が伸びると言う物だ。


通常それは色々な事を経験し、努力を続けていく事で伸ばす事が出来る物である。

だがダンジョンの魔物を倒すと、そういった物を無視して効率よくレベルを上げる事が出来た。

ダンジョンが神々の福音と呼ばれるのは、この辺りが理由だろう。


そんな便利な物なら国が独占しそうな物だが。

残念ながらそれは出来ない。

長い歴史において、為政者がダンジョンを掌握すると確実に天罰が下って来たからだ。

その為、現在ダンジョンは格神殿の統治下にあった。


「ここかぁ……」


ダンジョンの入り口は街の北側にある。

街中にダンジョン?と思うかもしれないが、ダンジョンの魔物は決して外には出てこないため危険は一切ないのだ。


まあ一応塀が建てられ、見張りもいるにはいるが。

それは出てくる魔物に対してではなく。

子供が悪戯などで入り込まない様にする為だった。


「これを」


見張りに、リンはさっき受け取ったばかりの冒険者証を提示する。

冒険者にはダンジョンを探索する権利が与えられているので、これを見せれば中に通して貰えるようになっていた。


「君……いや、なんでもない」


見張りは眉根を顰めリンに声を掛けたが、言葉を引っ込めて彼女を中に通した。

たぶん、まだ子供であるリンの事を心配してくれたのだろう。


「ここがダンジョン……」


ダンジョンの入り口はかなり大きい。

大地にぽっかりと大穴が口を開き、下へと下る急斜面が続いている。

不思議な事に、照明類が付いていないにも拘らず内部は明るく、かなり奥の方まで見通す事が出来た。

きっとこれは神様の力の一端なのだろう。


リンは軽い足取りで坂道を下って行く。

その腰にはショートソードを携え、左手には僕を握っている。

とても魔物を狩りに行く格好ではないが、今日は低階層の弱い魔物を狩るだけなのでこれで十分だ。


腰の革袋には最低限の保存食、それに包帯と傷薬が詰められていた。

水に関してはリンが魔法を扱えるため用意していない。


坂道を下って行くと、広い空間に差し掛かる。

そこからは道が6つに分かれていた。

分かれ道にはそれぞれ看板が掲げられ、そのルートの特徴が書き込まれている。


ダンジョンは同じ階層であっても、ルート次第で遭遇する魔物が変るように出来ていた。


「取り敢えずイージーにしておこっか」


リンが僕を見て笑う。

彼女の笑顔はいつ見ても眩しい。


看板には目安としての難易度が書かれていた。

イージー1つにノーマル4つ。

そして最後にハードが1つだ。


リンは初心者向けであるイージーのルートを下って行く。

暫く進むと坂道は平坦に変わる。

辺りからは岩の突起物が飛び出し、鍾乳洞の様な雰囲気になってきた。


リンは薄暗い鍾乳洞の中、ゆっくりと歩みを進める。

初めてのダンジョンだ。

慎重に行動するのはいい事だった。


まあでもここで出てくるのはスライムか何かだろう。

こう見えてリンはかなり強い。

冒険者であった両親に鍛えられていたからだ。


初心者向けのルートぐらいなら楽……しょ……


前方から近づいてくる大きな影に、リンがハッと息を飲み。

僕の思考が止まる。


「なんで……」


そこにはいる筈のない。

強力な魔物(オーガ)がいたからだ。

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