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ぬいぐるみ転生~呪われたエルフの少女を救うため、レベルを上げてダンジョンを攻略~彼女は盾代わりに僕でパリィする  作者: まんじ(榊与一)


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29話 遭遇

「うわぁ!凄い!」


リンが目の前に広がる風景に感嘆の声を漏らす。


ゴーレム地帯であった第6層を抜け、スロープを下った先は……何故か草原だった。

それまでの薄暗い洞窟とは違い、7層は洞窟とは思えない程明るく。

広々とした空間に草花が生い茂っていた。

空を見上げると天井も凄く高い。


「まさか洞窟(ダンジョン)の中にこんな空間があるなんてね」


流石は神様が作ったダンジョンだけはある。

でも思う。


なんで草原?


普通に考えれば、ダンジョン内を草原にする意味はない。

単なるティティス様の趣味?

それとも何か意味があると言うのだろうか?


何かあったら嫌なので、僕は範囲探索で周囲の様子を伺う。


「げ!」


「サイガどうしたの?」


草原の中にマンドラゴラがあちこちに点在していた。


「マンドラゴラが普通の草に紛れて生えてるみたいだ」


「えぇ!?」


マンドラゴラは魔物と植物の中間の生き物だ。

何もしなければ人を襲ってきたりはしない。

だが誤って引っこ抜いたりすると、精神攻撃の雄叫びを上げて此方をパニック状態にしてくる習性がある。


「踏まない様、気を付けて進もう」


実は引っこ抜かなくても、マンドラゴラは踏んづけただけでも雄叫びを上げるのだ。

それと、その雄叫びには魔物を呼び寄せる効果があるとも言われている。


「う、うん」


パニックになった上に、魔物に襲われたのでは敵わない。

僕達はマンドラゴラを踏みつけない様、範囲探索で位置をチェックしつつ慎重に進んだ。


「草原の次は森か」


進んでいくと草原が途切れ、森が目の前に広がる。

どうやら森の中にマンドラゴラは居ない様だ。


「ねぇ、何か音が聞こえない?」


「そう?気のせいじゃない?」


僕には聞こえない。

範囲探索にもそれらしきものは引っ掛かってはいなかった。


「ううん、間違いないよ。人の声!」


そう言うと、リンは森に入る。

彼女は軽やかな足捌きで、森の中を駆け抜けた。

流石森の種族、エルフだけはある。


って、感心してる場合じゃない!


「ちょ、ちょっとリン!落ち着いて!」


今のリンは木の生い茂る森の中を、100メートル10秒かからずに駆け抜けている。

これだけ早いと範囲探索では到底間に合わない。


「いた!」


森が途切れ、湖のほとりの様な場所に出る。

そこにはなんと、人の姿があった。


「え!?人!?」


こんな場所に人がいるなんて予想だにしなかったため、驚く。

まさかこんな所まで進んでいる冒険者が、僕たち以外にもいるなんて。


「助けなきゃ!」


人数は6人。

空を飛ぶ魔物と戦っていた。


戦っている魔物は多分ガーゴイルだ。

通称動く石像と言われる魔物で、鋭い牙と爪を持ち。

硬い体に高い魔法抵抗。

更には翼で自由自在に飛び回る厄介な魔物だった。


6人は陣形を組んで奮闘してはいるが、上空からの襲撃者相手に有効打を放てず。

形成は明かに不利だった。


「うん、助けよう」


ここまで来れている人達だ。

自力で何とかできそうな気はする。

けど怪我人も出ている様だし、万一死人が出ては寝覚めが悪い。


僕はビームを放ち、6体いたガーゴイルの内2体を同時に撃破する。

すると冒険者達は僕達に気づいたのか、此方へと駆け寄って来た。


冒険者を追って、ガーゴイルが上手く一直線に並ぶ。

僕はそこを狙って再びビームを放った。

だが感の良い2匹が打つ直前に左右に散って躱してしまう。


まあでも残りは2体だ。

ゲージ貯めには丁度いいだろう。


「リン!」


「うん!」


リンが突っ込む。

同時に一匹をブレスでノックバックしておいた。

2匹同時に捌くのは面倒だからね。


逃げてきた冒険者達の間を抜けて、リンがガーゴイルと対峙。

飛んで突っ込んできたそいつを、リンが受け流すようにパリィする。


「ギギィ!」


急に勢いを殺され、爪を捌かれたガーゴイルはバランスを崩して地面に激突する。

そこを逃げてきた冒険者達が滅多打ちにして倒してしまった。


横取りもいい所だ。

まあいいけどね。

それをいいだしたら、最初に横取りしたのはこっちになる訳だし。


残り一匹が突っ込んで来る。

前の一匹が捌きでバランスを崩すのを見て学習したのか、ガーゴイルは地面に下りて連続で爪を振るう。


ゲージ目的のこっちとしては願ったりかなったりだ。

ガーゴイルの攻撃は7発でゲージが溜まる様だ。

僕は21発受けて、満タンになった所でビームを撃って始末した。


「すげぇな、嬢ちゃん」


頭に刀傷のある、禿げマッチョの大男が声をかけて来る。

彼の獲物は身の丈程もある戦斧(バトルアックス)だ。

落ちたガーゴイルを倒した時、それを軽々と振り回していたのが見えた。

恐らく相当なパワーの持ち主に違いない。


「い、いえ……」


「仲間の人が見当たらないけど。まさかここまで一人で来たの?」


赤いローブを来たおかまが声をかけて来る。

ばっちりメイクをしていたのだろう、さっきの戦闘で汗をかいてドロドロに溶けている。まるでお化けだ。控えめに言っても気持ち悪い。


「いえ!一人じゃありません!私とサイガの二人です!」


リンがきっぱりと答える。

少しうれしい。

けど、僕を一人としてカウントするのはどうかとも思う。


「サイガ……ああ、お前さん達が噂の」


「噂の?」


僕は思わず聞き返す。

どんな噂か気になってしまった。


「人形連れの、とんでもない嬢ちゃんがいるって話さ。ガロウから聞いた話だ」


ああ、ガロウさん達か。


「ガロウさんとは知り合いなんですか?」


「あいつとは元々同じクランだったのさ」


「成程」


この人達はクラン総出の場に居なかった。

何か事情があって袂を分けたのだろう。

理由はまあ、別に聞かなくていいか。


「へー、君達があの」


金髪の優男――弓を持っているのでレンジャーかな――が気安くリンの肩に手を置く。

一瞬気安く触るなとか思ったが、よく見ると胸元が少し膨らんでいた。


「ん、私はこう見えて女だよ」


僕の視線に気づいたのか、女性は照れ臭そうに笑った。

聞いてもいないのに性別を口にしたって事は、よく間違われるのだろう。


「あ、その……すいません」


「いいっていいって、もう慣れちゃったしね」


「そうそう、化粧の一つもしないこの子が悪いんだから。気にしなくてもいいわよ」


「うっさい。化粧お化け」


「ムキー!何ですって!」


探究者と同じで、中の良さそうなクランだ。


「オラ!遊んでんじゃねぇ!」


禿げマッチョが2人の頭に拳骨を落とした。


「いったぁ……」


「いつつつ」


ごつんと鈍い音が響き、二人は涙目で頭を押さえしゃがみ込む。

凄く痛そうだ。


「騒がしくて悪いな。さっきのは結構危なかったんで、皆ハイになっちまってるんだ」


ハイ?

生き延びた事に気分が高揚してるって事だろうか?


「そういや自己紹介してなかったな。俺はこのパーティーのリーダーでギーグだ。クラン情熱のリーダーも務めてる。さっきは本当に助かった。感謝する」


そう言うとギーグはごつい手を此方に伸ばす。

握手を求めているのだろう。

リンもそれに気づいたのか、恐る恐るだがリンはその手を握る。


「私はリンで、この子はサイガです。その……困った時はお互い様なので、気にしないでください」


「命を助けて貰ったんだ。この借りは必ず返すさ。っと、これ以上の長話はダンジョンでする事じゃねぇな。怪我人がいるんで、俺達はこれで失礼させて貰うぜ」


彼らのメンバーの一人が腕に包帯をぐるぐると巻かれ、動かない様に固定されていた。どうやら骨を折ってしまっている様だ。

確かにそんな状態では、ダンジョン攻略を続行するのは無理だろう。


この世界の魔法は万能ではない。

特に回復系統は、かければゲームの様に直ぐに全快する様な簡単な物ではなかった。


リンがチラリと僕の方を見た。

何が言いたいのかは分かる。


確かに僕のスキルなら回復する事は可能だ。

自分で言うのもなんだけど、完全にチートレベルだからね。

けどこれを他人に使ってしまうと、僕達の危険度はぐっと跳ね上がってしまう。


「サイガ……」


「分かったよ。ギーグさん。もし良かったら僕が怪我人の治療をしますよ」


一度通った道とはいえ、負傷者を連れての撤退は危険な物になるだろう。

死人でも出たら寝覚めが悪い。

ここはリンの希望通り回復する事にしよう。


「何!?そりゃ本当か!?」


「サイガの回復、凄いんですよ!熱を出して動けなかった私、を一瞬で元気にして見せたんですから」


リンが自慢げに僕を掲げる。


「そいつは助かる!けどいいのか?そんな物、他人である俺達に使っちまって?」


強力なスキルにはそれ相応の代償が必要になる物だ。

回復を行う事で、此方の行動に大きな弊害が無いか気にしたのだろう。


まあ確かに代償(ディレイ)はあるし。

その結果、僕達は撤退する可能性が増えた訳だけど。

まあ人助けだからしょうがない。


「気にしなくてもいいさ。僕達も、もう少し探索したら引き返そうと思っているからね」


「そうか、すまねぇな」


そう言うと、ギーグさんはその禿げあがった頭を深々と下げた。


しかしあれだ。

人類未踏と、余計な事をリンに口走らないで本当に良かった。

危うく大恥をかく所だったよ。


まあ情報が無かったからそう思ったんだけど。

よくよく考えて、本気で攻略してる人がその情報を簡単に吹聴するわけないよね。

次からは気を付けよう。

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