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星姫の詩  作者: tomoko!
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第三章:晩餐会の始まり

 王妃主催の晩餐会の夜がきた。

 招待されたのは、キベイ達三鬼将軍と、レダとその他五人の大臣だった。

 レダは、半年前から大臣に就任していた。グアヌイ王国との関係が悪化の一途を辿る中、自分が留守のときに安心して国政を任せることのできるレダの役職復帰を、ヒノトが強く望んだからだ。




 料理の並べられた席に招待客全員が座っても、肝心のヒノトがなかなか現れない。

 ヒノトの席の隣、王妃の席に座っていたマカラが立ち上がった。淡いピンク色のドレスを着て、胸にはダイヤモンドを使った豪華なネックレスをつけている。

「皆様、今夜はようこそおいでくださいました。毎日のお仕事でのお疲れを、今夜は癒していただきたいと思います。我が夫、ヒノト王がまだおいでになっておられませんが、皆様お揃いですので、僭越ながら私が始めさせていただきたいと存じます」

 マカラがグラスを手に取ると、招待客も一斉に立ち上がってグラスを掲げた。

「皆様の益々のご活躍と、変わらぬご健康をお祈りいたしまして。乾杯!」

 乾杯が終わると共に、楽師による音楽が流れ始めた。

 招待客達は席に座り、料理に舌鼓を打っている。酒も進み、客達は和やかに談笑している。


 マカラは、斜め右の席に座っているレダに話しかけた。

「レダ大臣。職に復帰されてから半年が経ちましたが、如何ですか。お仕事は順調ですか?」

 レダは穏やかに微笑んだ。

「いや、私など…。ヒノト王のおっしゃられることを、確実に実現することを心がけているだけです」

「それは王が、一番必要とされていることですわ。忠実な臣下が、今の王には何よりも必要なのです。レダ大臣の存在が、どれだけ王の心の支えとなっているか…。私は、あなたにいくら感謝してもし尽くせぬ想いです」

「…もったいないお言葉です」




 優雅な時間が過ぎていた晩餐会に、突如飛び込んできた人物がいる。

 ヒノトだった。

 マカラが嬉しそうに笑顔で迎えた。

「まあ、あなた」

 将軍と大臣達は、一斉に立ち上がり、礼をした。

 ヒノトは慌てて言った。

「いいんだ。そのまま、食事を続けてくれ。遅れてきた私が悪いのだから」

 ヒノトは王の席へと向かった。待ち受けていたマカラが、愛情のこもった視線をヒノトに向ける。

 ヒノトも笑顔を向けた。

「遅くなってすまなかったな、マカラ」

「いいえ。お仕事お疲れ様です。さあ、どうぞ」

 マカラが酒を注ぐと、ヒノトは勢いよく飲み干し、食事を食べ始めた。

 そんなヒノトの様子を窺っていたレダが、声をかけた。

「ヒノト様…。何か問題でもありましたか?」

 ヒノトはよほど腹がすいていたらしく、口をもごもごさせながら答えた。

「うーん。まあ、ちょっとな…」

 ヒノトは、キベイ達三将軍に目を向けた。

「お前達にまた活躍してもらわなければならないかもしれない。今夜はしっかり楽しんでくれよ」

 その言葉に、三人は顔色を変えた。

「まさか、グアヌイ王国に何か動きが?」

 一気に険悪になった場の雰囲気を感じて、ヒノトは慌てて手を振った。

「いいんだ。明日また話すから。そんなに緊急を要することじゃない」

「…分かりました」

 キベイはまだ不安そうにしつつも、立ち上がりかけていた腰を下ろした。


 場を仕切り直すように、ヒノトはガイリに声をかけた。

「ガイリ。最近どうだ。お前が今まで戦争で、敵兵をなぎ倒してきた功績は素晴らしい。だが今は、兵士を教育、訓練しなければならないのだ。今までとは随分勝手が違うだろう」

 ガイリは背筋を正した。

「はい。ヒノト王。キベイ将軍、オタジ将軍のお力添えもありまして、兵士の育成に、日々奮闘しております。実際に兵士の上達を見ると、満足感を感じます」

 隣でオタジが笑った。

「はっ。俺にお世話になってるって?そんなこと思ってもないくせに、王の前でだけいい格好すんなよ、ガイリ。苦労してるんだろ。本音を話してみろよ。王に直訴できる機会なんて、そうそうないんだぜ」

 オタジの言葉に、ヒノトは興味を示した。

「そうなのか?」

「は、はあ…。私がまだ年少のせいなのでしょう。年上の兵士は、私の注意を聞かない傾向はあります」

「そうか…。だがそれは、実績を積んで克服するしかないな。お前の言うことが正しいと分かれば、兵は自然とついてきてくれるだろう」

「はい…」

 ガイリは神妙な顔つきで頷いた。


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