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星姫の詩  作者: tomoko!
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第二章:国王は超多忙

 朝の黄金色の光が部屋の中に入ってくる。その眩しさに、ユノアは目を覚ました。背伸びをしようとして、止めた。その前に、隣で眠っている人が起きているかどうかを確かめる。

 ユノアの隣でヒノトは、まだぐっすりと眠っていた。昨夜も帰りが遅く、ユノアは待ちきれずに先に眠ってしまったのだ。疲れているのだろう。自分のせいで起こしてしまっては申し訳ないと、ユノアはそのままじっとしていることにした。

 一人で布団から抜け出したい気持ちもあるが、そうもいかない。ヒノトがまるで抱き枕のように、ユノアを抱きかかえてしまっているからだ。

 こうしてヒノトと一緒の布団で眠ることにももうすっかり慣れた。カヤと一緒に寝ていたときのように、ユノアはヒノトの腕の中にいると安心できた。

 昼間はヒノトは忙しいので、あまり一緒にいることは出来ないが、こうして夜一緒に眠れるだけで、ユノアはひとりぼっちではないと感じることが出来る。ヒノトが決して自分のことを忘れているわけではないと思うからだ。

 ヒノトを起こさないように注意しながら、ユノアはゆっくりと身体を回した。ヒノトと向かい合う体勢になって、じっとヒノトの顔を見つめた。

 高すぎず整った鼻に、男らしい濃い眉。漆黒の瞳は、今は隠れて見えない。

 目を覚ましているときのヒノトは、宮殿内でも最も顔立ちのいい男性として女達の羨望を独り占めしているが、こうして眠っているときの顔は実に間抜けだ。口はぽかんと開いて、今にもよだれが落ちてきそうだ。頬は枕に押し付けられて歪み、顔全体が枕の方へ引っ張られている。

 そのおかしな顔を見て、ユノアが笑いを押し殺していると、ヒノトがうっすらと目を開けた。ユノアと目が合うと、ヒノトは眉をしかめた。

「何だ…?何を笑ってるんだ?」

 ユノアはもうおかしくてたまらなくなってしまって、口を押さえて声が洩れないようにするのに必死だ。

「こいつ…!人の寝顔を見て笑うなんて、いい度胸だな!」

 ヒノトが捕まえようとしたが、その前にユノアは布団から飛び出してしまった。楽しそうな歓声を上げながら、ユノアはバルコニーに出て行った。ヒノトはまだ寝ぼけている頭を振りながら、ユノアの後についていった。

 ユノアはバルコニーの柵によじ登っている。

「ユノア。危ないぞ」

 ヒノトはそう声をかけると、ユノアが落ちないように後ろから手を添えて支えてやる。


 ユノアの視線の先には、シノナ河から上る朝日があった。昼間、天上にあるときの何倍もの大きさの太陽だ。

 朝もやのかかったマティピの街は、太陽の光を受けて黄金色に輝いている。きっと街から見れば、王宮が黄金色に輝いているのだろう。

 ユノアは朝、この風景を見るのが好きだった。

 ユノアの隣で、ヒノトが大きなあくびをした。

「ヒノト様。疲れてるの?」

 ユノアが首を傾げてヒノトを見ている。ヒノトは微笑んで見せた。

「ああ、ちょっとな」

「最近毎晩、帰りが遅いね」

 ユノアが拗ねたような声を出したので、ヒノトはそっとユノアを後ろから抱き締めた。

「何だ、ユノア。俺が相手してやらないから、拗ねてるのか?」

「…違うもん。お仕事だから、仕方ないし」

「俺がいなくても、ティサが良くしてくれるだろう」

 ユノアは返事をしない。

「ティサに習っている字の練習はどうだ?上達したか?今度書いてみせてくれ」

「いいけど…。いつ見せたらいいの?ヒノト様、この頃いつも、朝はご飯を食べたらすぐに出て行っちゃうし、私が起きている間に帰ってこないじゃない」

(これは…。本格的に拗ねてるな)

 ヒノトは困ってしまった。何と声をかけたら、ユノアの機嫌が直るのだろうか。だが、こうしてユノアが拗ねてくれるのが嬉しい気持ちもあった。

 ヒノトは頭の中で、今日の自分の一日のスケジュールを整理してみた。何とかユノアと一緒に過ごす時間を作れないかと思ったからだ。

 まず午前中は、国内から集められた嘆願書を見たり、大臣からの意見を聞いたりして問題点を解決していく、いわゆる国政を行うために時間が過ぎていく。特に今睡眠時間を削るほどに忙しいのは、この一年の税金の使い方を考える会議が続いているからだ。

 午後からは、ファジ王国からの使者との謁見がある。ファジ王国はジュセノス王国の西隣に位置する国で、人口は百万人ほどだ。ジュセノス王国よりも遥かに小さな国だが、海の恵みが豊かな国なので、海産物を手に入れるために、ファジ王国との関係は大切にしなければならない。その謁見が少なくとも午後3時までは続くだろう。その後は…。

 そうだ、とヒノトは閃いた。夕方、キベイとオタジと一緒に、騎馬や剣、弓などの軍事の訓練をする予定なのを思い出したのだ。

「ユノア。今日の夕方、馬に乗ってみるか?馬に乗れれば、移動できる範囲が広がる。練習して損はないと思うが…」

 すると、ユノアが振り向いた。その目はきらきらと輝いている。

「馬に?いいの?」

「ああ、いいよ。俺が教えてやろう」

 ユノアは「わぁい」と歓声をあげると、喜んでぴょんぴょんと飛び跳ねながら、部屋の中へ入っていった。そんな姿を見て、ヒノトの口元に、笑みが浮かんだ。


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