表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星姫の詩  作者: tomoko!
35/226

第一章:狂気

 突然のユノアの登場に固まっていた村人達が、ようやくざわめき始めた。

「お、おい…。これ、ユノア、だよ、な…」

「なんで、…ここにいるんだ」

 ロザははっとした。慌てて村人に指示を出す。

「お、お前達。何をしてる!早くユノアを捕まえるんだ。ディティの兵士に渡さなければ」

「は、はい!」

 無防備な後姿を見せているユノアに、村人が近付こうとしたときだった。ユノアが静かな声で言った。

「…何故、殺したの」

 村人達は、金縛りにあったように動けなくなった。ユノアが振り向いた。その顔は、怒りに燃えていた。

「お父さんとお母さんが、何をしたの!二人を殺して、何が解決するというの!私を殺せば良かったじゃない。どうして!どうして!どうしてよ!」

 村人達は後ずさった。銀色の髪の毛を振り乱したユノアの姿は、人々を威圧し、恐れさせるのに十分な効果があった。そこにいる全ての人間が、身の危険を感じていた。

 ユノアの頭の中で、ダカンの声がする。

(ユノア、皆を憎むな。憎んだって、いいことなんてない。悲しみが残るだけだ。憎むんじゃない!ユノア!)

 だが、ユノアの心の中に吹き荒れる憎しみの嵐は、もう止めることは出来なかった。


 ユノアの目の前に立っていた村人の一人が、極限の緊張に耐えれなくなり、遂にユノアに向かって刀を降った。

「うおおぉぉ!」

 怒声と共に向かってきた刀を難なく避けると、村人が倒れた拍子に落とした刀をユノアは拾い上げた。

 それを合図として、他の村人達も一斉にユノアに襲い掛かってきた。ユノアは天に向かって吠えた。押さえ込まれていた力が、爆発した。

 とめどなく押し寄せる村人達の身体に向かって、ユノアは刀を振るった。血しぶきを上げて、次々と村人が倒れていく。

 ユノア一人に対して、何十人もの村人が一斉に戦いを挑んできた。それでも、ユノアは傷一つ受けることはなかった。

 村人に、ユノアの姿は見えてはいなかった。物凄い速さで、ユノアが動き続けていたからだ。

 血の雨が降っているようだった。地面には、血の池が幾つも出現した。

 これだけ動いているのに、ユノアの目は虚ろだった。ザジとハドクを殺した時と同じ、無意識の目だった。

 もはや、武器を持っている村人はいなくなった。それでもユノアの動きは止まらない。

 ロゼもユノアの刀に切り伏せられた。ロザは謝罪しようとした。許しを請おうとした。その言葉を発する前に、ロザは絶命していた。

 建物の壁にすがっている最後の一人に対して、ユノアが刀を振りかざした。だがそこでぴたりと動きが止まった。それはゾラだった。ゾラはがたがたと震え、目を見開いてユノアを見つめていた。

 あっという間に、ユノアの心が冷めていった。その手から、刀が落ちた。


 ユノアは周囲を見渡した。血の海に、百人もの村人が横たわっている。ユノアの着る白かった服も、銀色の髪の毛も、血の色に染まっている。

 涙が目に溢れた。大粒の涙が、とめどなく頬を伝っていく。憎しみが消えて、悲しみが押し寄せてくる。

 ゾラが見守る中、ユノアはダカンとカヤに近付いた。二人の頭を拾いあげると、胸に抱き締めた。二人の頬に頬擦りしながら泣き続けた。泣く姿は、まだ幼い十歳の子供そのものだった。

 二人の頭を抱いたまま、ユノアは歩き始めた。ゾラは動けないまま、その姿を見送った。ユノアの姿は、遂にゾラの視界から消えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ