第四章:やりきれない後悔
エミレイの指示に従い、ライオンの首を取って、キベイ達はその首をリックイの前まで運んでいった。
変わり果てたライオンの姿に、ヒノトは痛ましそうに目を瞑ったが、リックイは満足そうに何度も頷いている。
「キベイ将軍。オタジ将軍。ライオンとの初めての戦いで、随分と苦戦していたようだな」
「…はい。本当に手ごわい相手でした。エミレイ将軍が助けてくれなかったら、我々は命を失くしていたでしょう」
「ははは。それ程に手ごわかったか。肉食獣は世界に数多いるが、その中でもライオンは最強の王者だ。その王者を殺してこそ、勇者として認められるというもの。これを倒す以上の興奮はないであろう?これだから、ライオン狩りは止めれぬのだ。またライオン相手に戦いたくなったら、いつでも申し出るがよい」
キベイとオタジは畏まって頭を下げたが、内心では、もう二度とライオンを狩ることはないだろうと思っていた。
己の見栄を満足させるためだけの狩りなど、もう二度としたくはなかった。
キベイとオタジの狩りが終わった後も、更に二度、ライオン狩りは行われた。エミレイ将軍などは、実に鮮やかにライオンを殺してみせた。
リックイの前には、三頭のライオンの頭が並べられた。リックイはそれを見て満足そうにしていたが、一、二分もすればもう飽きてしまったらしく、立ちあがった。
「疲れたな。王宮へ戻るぞ」
その一言で、膨大な数の人々が一斉に帰り支度をするために動き始める。
一行はリーベルクーンへ向けて、来た道を再び戻り始めた。
大勢の人々が去り、さっきまでの騒々しさが嘘のように静けさを取り戻した草原に、三人の人間が経っていた。それは、オタジとユノア、ミヨだった。
五人は、無残な姿で放置されたままのライオンを、せめて埋葬してやろうと、留まったのだった。
草原に大きな穴を掘って、その中にライオンを埋葬し、土をかけたその上に、花を手向けた。
手を合わせて祈りながら、ミヨは涙を浮かべてくる。
「こんな惨いことをして…。ツェキータ王国の人々は、何とも思わないのでしょうか。何故ライオンを殺さなくてはならなかったのですか?食べるためでもなく、襲われたからでもなく…。ライオンの命を、何だと思っているのでしょう」
ユノアも悲しそうな表情で、黙って手を合わせ、祈りを捧げている。
ミヨの言葉に返事を返したのは、オタジだった。
「ツェキータ王国の奴らは、自惚れてやがるんだ。強大な力を持つ者ならば、どんなことをしてもいいと思っているんだろう。自然や動物達を、自分達のおもちゃのように扱っている。こんなことは、絶対間違ってる!…俺達は、こんな風習には染まらないぞ!俺はもう二度と、ご機嫌とりのためなんかに、動物に手をかけたりしない!」
オタジの言葉には、ライオンを無駄に殺してしまった後悔が滲み出ている。
やり切れない、重苦しい雰囲気の中、ユノア達は立ちあがり、先に行ってしまったリックイ達の一行に追いつくため、走り始めた。