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異世界ジーニアス紀行  作者: 佐藤
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今までの終わりとこれからの始まり

よろしくお願いします!

チャイムの音が響き、教師の今日はここまでという言葉でこの日の講義は終わりを迎えた。ここは都内のとある大学のその中の一教室である。先ほどまで静寂を保っていた教室はその言葉を皮切りに、賑やかさを取り戻す。

その中で授業道具を片付けているどこか不思議な雰囲気を持つ一人の男に数人の声が掛かった。

「よお!松永、お疲れー」

声を掛けられた男、松永は振り返り嬉しそうに返事をした。

「おう。お疲れ。相変わらずこの授業は長く感じるな」

笑いながらそう返す彼に数人の集団は笑いながら同意する。どこにでもあるありふれた光景である。周りでも当たり前に起きている、そんな光景である。少しの間世間話をした後、彼らの中の一人が思い出したかのように話しだした。

「そうだ。この後みんなで飲みに行こうって話なんだけど松永どうよ」

クイッとお猪口を掲げるポーズをし男は声をかける。

そう告げられた後、松永は残念そうにこう返した。

「悪い。バイトなんだ」

「またかよ。いつならこれんのさお前」

少し不貞腐れたように言う友人にを前に松永はメモ帳を取り出し、ぺらぺらとめくり始める。

「あー。今週はもう埋ってるんだよな。来週なら・・・駄目だ埋まってる。再来週!再来週なら・・・きっと・・・たぶん」

「なんだそりゃ。そんなに俺らと飲みに行きたくないんかい」

さらに不貞腐れる友人に松永は少し焦ったように返す。

「ちがっ!違うって!マジで行きたいんだけど予定がさぁ・・・」

「前回もそんなんで結局2ヶ月くらい後になったじゃんか」

「すまん。空いたら連絡するって。これホント!」

松永は、本当に申し訳ないといった顔をして謝罪を入れた。

それを見た男たちは、少し意地悪そうな顔を浮かべた。

「信用薄いなぁ。」

「勘弁してくれよ・・」

そう松永が少し悲しそうに告げたのを聞いて彼らは笑いだした。今更その程度で本気になって怒るほどの関係でもないのだ。笑いも収まった頃、松永は時間がだいぶ過ぎてしまっていることに気付く。

「あああ!まっずい電車乗り遅れる!悪いまた今度連絡するから!」

そう言って彼は、鞄を担ぎ上げ早足でその場を離れていく。

残された彼ら数人は、話し出す。

「ほんと毎日、忙しそうにしてるよなあいつ」

「前聞いた時は掛け持ち15個とか言ってたぜ?」

「なんだそりゃ。苦学生でもあるまいし。金が欲しいならそもそも一つ二つにしとけばいいのにな」

「なんかいろんな人と出会えるのが楽しいんだと。ボランティアとかも良くやってるし。実際、交友関係すげぇ広いしなぁ」

「まあ人脈いっぱい持ってるってのはすげえけどな。実際、田口の奴の彼女もあいつのセッティングした合コンで出来たやつだし。あいつと知り合ってからあいつ経由で仲良くなった奴かなりいるしなぁ」

「・・・あいつの携帯に他人の連絡先どれぐらい入ってるか知ってる?

「いや?どんくらいよ?」

「この前たまたま見えた時があってさ、あいつの携帯。・・・6桁行ってたんだよ・・・」

「それはまぁ・・・。なんかそこまでいくと・・・」

「うん」

「「きめえな」」



携帯をいじりながら少し早足で彼、松永は駅へと向かっていた。友人との飲み会も心から行きたかったが、彼にも予定がある。それも常人の何倍もの過密スケジュールである。

「この後、バイト直行して、その後少年野球のコーチの飲み会・・・と。ああそうだ佐竹さん達のホームレス組との飲み会もあるんだった。野球組の方は、少し早目に抜けさせてもらおう。後は、加奈ちゃんやくーさんと合コンのセッティングの話詰めて、高校の奴らとの旅行話も・・・」

彼の癖の一つに、考えていることを口に出してまとめるというものがある。その異常なまでの予定を一つ一つ口に出しながらニヤニヤ笑っている彼は遠目から見なくても変人に見えたことであろう。

しかしそんな異常こそが彼の日常であった。なんてことのない日常の1ページなのである。

――この瞬間までは


()()()突如として訪れた。

彼が駅に着き、階段を降りていたその只中である。

――視界が歪んだ

――世界が歪んだ

「なぁ・・・!!」

突然の激しい頭痛と吐き気に彼は膝をつく。目の前の見慣れた景色が歪んでいく。

(何だこれ!急にこんな・・・。周りは・・?)

歪む景色の中力を振り絞り周りを見渡す。そして彼は気付く。

彼だけだ。

彼だけが膝をついている。

他の人々はまるで何事もないかのように歩いていく。当たり前のように。

(くそ、意識が・・・)

――そうして世界は――

――世界は――

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