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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***ウェディングブーケと私④***


 ◆◇◆◇◆◇◆


 式も進んでいよいよブーケ・トス。


 思ったより多くの人が集まり、編集長から言われた “絶対取るのよ!” という命令に緊張する。

 里美さんが「もし取れなかったら編集部から広告部に異動だって、しかもオマケとして倉橋古書店での1ヶ月無料バイト付き」と信ぴょう性のない不吉な罰ゲーム発言をされた。


 でもできるなら本当に、いや絶対に取りたいと編集長の持つブーケを、目をまん丸くさせて見つめていた。


「ハイッ!」


 後ろを向いた編集長の手から秋晴れの澄み渡る空にブーケが浮かぶ。


 “やった!コース的にはドンピシャ……でもちょっと高い!?”


 秋風に乗って思いのほか高く遠くに飛ぼうとするブーケ目掛けて渾身のジャンプ。

 背が高い分、身が軽い分、ジャンプは私の得意分野。

 高校に入学した時の体力測定の垂直とびでは70cmもジャンプして、即バレー部の顧問の先生からスカウトされた実力の持ち主なの。


 でも、残念ながら球技は苦手だったので断ったのだけど……。

 しかし、もう直ぐジャンプの頂点にさしかかるのにブーケはそのまだ上を通り過ぎるコース。


 “駄目ぇ~届かない!!”


 そう思った時、誰かが私の腰を掴み、さらに上へと体がふわりと浮いた。

 まるで風に乗ったように。

 えっ?と思った瞬間に伸ばした指がブーケを捉える。


 “やったー!”


 そう思った瞬間に目をブーケから離すと、私の体は人の背丈の二倍も高く飛んでいることに気が付いた。


“ えっ?これって全日本のバレーボール選手並み? いや、それをも遥かに超えている! 嘘、こんな高さから着出来る自信がない!”


 思わぬ高さにビビってしまい腰が引けて空中でバランスを崩す。


 ブーケを取ったのはいいけどこれじゃあ腰から地面に叩きつけられ病院行きじゃない?と本気で後悔して目を瞑る。


 あとは為すがまま。


 ところが、そのあとに襲ってきた感触は地面に叩きつけられるという怖くて痛いものではなくて、ふわっととした優しく温かくそして力強いもの。


「あれ?」


 閉じていた目を開けると、すぐ目の前には見慣れた巨大トウモロコシの様な白く輝く歯。


 南さんにお姫様抱っこされた私は周囲の人から、そして新郎新婦から暖かい笑顔で拍手されて、なんだか超恥ずかしい。


 南さんは調子に乗っていつまでも私を抱っこしてニヤニヤしている。この笑顔は “僕は昔ラグビーをしていたからこんな事朝飯前さ!” と言っている様。


 私はそんな南さんに呆れて少し懲らしめてやるつもりで口を滑らせてしまう。


「お酒飲んだでしょう」


 抱かれたまま大きく見開いた目で睨むと、ビビった南さんが正直に白状する。


「正解です……でも、柴田さんが勧めてくるんで理由を言って断ったんですよ。それでもどうしても呑めって言うからホンノ少しだけ」


「えっ!柴田さんが……」


 私は驚いて南さんに抱かれたまま柴田さんのほうに目を向けると、柴田さんは私に向かって黄色いテニスボールを投げてきた。むかし公園で見せたあの懐かしいフォームで。

 そのボールは、野球などしたこともない私にも取れる優しさで手に収まる。


 そしてボールには『幸せになります 麻里も幸せになってください』


 柴田さんと編集長の、ふたりの文字が繋がっていた。


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