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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***ウェディングブーケと私③***


 ◇◆◇◆◇◆◇



 町子に引かれて向かう先に見えるのは、町子と俺とで選んだ白色のドレスを着ている松岡麻里さん。

 背の高い8頭身のモデル並みのスタイルに、遠くからでもどこを見ているのかよくわかる大きな澄んだ目。


 可愛い童顔にアンバランスなほどエレガントな白いドレスに薄い空色のボレロを羽織り、首には青い飾り模様のチョーカーを付けたその姿に隣に居た水沼はファンタジー系の妖精を彷彿させると言っていたが、俺にはどこからどう見てもスピッツ犬のリリーがこの世に人間として降臨した姿にしか見えない。


 町子さんが松岡麻里さんのドレスが似合っていると褒めると、彼女は恥ずかしそうに笑い、町子と何か話していた。

 少したって俺のほうにも笑顔を向けて会釈したけど、初めて会った時に比べて明らかにその笑顔はよそよそしい事がホンの少しだけ寂しい。


 そう。


 もう彼女に憑依していたリリーは居ない。


 初めて会ったときに、初対面の俺に馴れ馴れしく声を掛けて来たリリーと名乗る女性。 

 水沼からかかって来た携帯を取った時、俺の携帯の待ち受け画面を盗み見した忌わしい女性。

 怒って注意した途端に、俺の胸中に飛び込んできて泣き出した女性。

 でも泣いていたのは、怒られたからではなく、俺と会えたから。


 彼女は昔俺が大切に飼っていた、リリーの生まれ変わりだと言っていた。


 にわかには信じ難いが、リリーの話しを聞いているうちに本物だと思った。

 こうして出会えた奇跡を神様に感謝したいくらい嬉しかった。


 でもあの夜、リリーの魂は秋の多摩川の空に消えていった。


 リリーと別れてしまったあの夜、上野毛にあるペットショップの取材から戻ってきた町子さんと偶然出会った。

 そこでリリーのことを話すため彼女と人の居ないベンチに腰掛け、最後のリリーの様子を話すと、彼女は驚いて泣いていた。


 彼女は泣き止むと、松岡さんが初めて編集部に現れた時から昔別れたチャームを思い出していたことを話してくれた。

 そしてリリーとの約束通り、俺は自分の気持ちを素直に彼女に伝えプロポーズした。


「一緒に犬を飼ってくれませんか? そして一緒にその犬に黄色いテニスボールを投げてあげましょう」と言う言葉を添えて。


 これが俺のプロポーズの言葉。


 そう、それはリリーとの最後の約束の言葉。


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