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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***ウェディングブーケと私①***

 朝一番の打ち合わせが終わり、次の打ち合わせに向かうために新橋で電車を乗り換えたとき、人混みから離れて外の空気を思いっきり吸いたくなって駅舎を出ようとすると向こうからリリー……いや、松岡麻里さんがこっちに向かって歩いてくるのが見えた。


 挨拶代わりに思わず手を上げるものの、彼女は俺の上げた手に気が付くこともなく人混みの波に流されるように、僅か2メートルしか離れていない通路の端をを通り過ぎて行った。

 以前の彼女なら、俺が気付くはるか前から、向こうから気付いて来てくれたのに。


 やはり本当にリリーは天国に戻ってしまたんだな。


 駅舎を出て、向こうにSLの見える広場のど真ん中まで来て、歩を止めた。

 空を見上げると、白い雲が青い空を駆けていく。

 俺は空に向かってボールを投げる真似をした。

 リリーの好きだった、あの黄色いテニスボールを青い空のどこまでも届くように。



 ◇◆◇◆◇◆


 ジリリリリン♪


 朝、何度目かの目覚ましが鳴ってやっと目が覚めた。

 今日は編集長の結婚式。

 慌ててお化粧をして用意していたドレスに袖を通し呼んでいたタクシーの到着を待っていた。


 タクシーがアパートの前に着き、それに乗り駅まで向かう。


 電車に乗り遅れたらと、気になってタクシーの車窓から見える春のうららかな景色も見ずに、時計ばかり気にしていた。


 タクシーが駅に着くと走って駅の改札を潜り、入ってきた電車に飛び乗った。


 やっと落ち着いてバックから読みかけの文庫本を取り出す。

 文庫本の字を目で追いながら、空いている同じ車両にいる女子高生たちから「綺麗!」とか「女優さん?」という単語が聞こえてくる。


 誰かそんな女優さんみたいな人が乗っているのだろうかと目を上げると、そう言っていた女子高生たちと目が合い、ようやく自分のことを言われているのだと思って恥ずかしくなる。


 私は特別綺麗でもないし女優さんでもないのに。

 屹度そう見えるのは、今日は編集長の結婚式に招待され綺麗なドレスを纏っているから。


 ゴメンナサイ変な勘違いさせちゃって。


 少し恥ずかしくもあり、少し嬉しくもある。

 だって、女の子なんですもの。


 会場近くの駅で電車を降りると、思った通り先に到着していた南さんが改札口で私が来るのを待っていた。


「お待たせ!」


 私が声を掛ける前から南さんが何を言おうとしているのか分かっていたので、近づくのが少し恥ずかしい。


 案の定、目の前まで行くとみなみさんから「綺麗だね」って言ってもらった。


 おそらく南さんは、私が何を着てきても今と同じ台詞を言うのだ。

 それを聞かされた私は今と同じように、嬉しくて顔が赤くなって、そしておしとやかに俯いてしまう。


 そんな筋書き通りにされてしまう自分が嫌だったから、南さんに少し意地悪をした。

 私は俯いた顔を上げて、あることの確認をする。


「南さん。はぁして」


 南さんは私に『はぁ』っと、私に息を吹きかける。


「OKね!」


 私が南さんにした意地悪は、式の前日と式中に絶対お酒を飲まないこと。

 我慢出来たら少し前に受けた、プロポーズを考えてみてもいいと約束しちゃったの。


 先ずは第一関門を突破。

 結構素直な南さんの心に、私もウキウキしてしまい、一緒に手を繋いで会場に向かった。


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