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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***さよならを告げる私②***

 言葉の最後、リリーは俺に強く抱きついてきた。

 リリーの決意は揺るぎない。

 だから俺も「わかった」とだけ言葉を返した。


「もうお別れね。いつまでも私の事を思っていてくれて……ありがとう」

「すまない、俺はなにも君にしてあげられなくて」


「いいの。私は十分満足したわ。でも……」

「でも?」


「最後にお願いがあるの。聞いてくれる?」

「いいよ、なに?」


「もし、将来を一緒に過ごしたい人が居るのなら、自分の年齢なんて気にしないで思い切ってプロポーズして欲しいの。そして、いまから言う言葉を付け加えて欲しいの」


「いいけれど、どんな言葉?」

「一緒に犬を飼ってくれませんか? そして一緒にその犬に黄色いテニスボールを投げて遊んであげましょう」


「それって……」

「そうよ。爽太さんが私にしてくれたこと。好きだったなぁ~爽太さんとのボール遊び」


 そう言うとリリーは顔をゆっくりと上げ、目を瞑った。

 リリーが何を求めているのか分かった。

 俺は躊躇わずに、リリーを強く抱き、その唇に自分の唇を合わせた。


 長い、長いキス。

 そして最初で最後のキス。


 キスの途中で、突然リリーの体がピクンと小さく跳ね、俺は不覚にも一瞬手の力を緩めてしまった。

 その拍子に、合わせていた唇が僅かに離れる。


 慌ててもう一度重ねようとしたが、それを拒むようにリリーが強い口調で俺に言った「行って!」と。


「駄目だ、離れたくない!」


 意気地なしの俺が駄々子のように言うと、リリーは再び抱きつこうとする俺の体を突き飛ばし、苦しい息の中で松岡さんの体から離れる霊に戻り成仏してあの世に帰る醜い姿を見られたくないと涙を零した。


「醜くなんか……」


 俺は突き飛ばされて腰を降ろした姿勢から両手をついて四つん這いになり、苦しむリリーに顔を寄せ、その言葉を否定した。

 リリーはデッキの上に寝転がったまま、苦しそうにピクピクと体を揺らしながら、俺の顔に手を伸ばす。


「どうした! 苦しいの、どうすれば良い?!」


 リリーはもう目が見えないのか、震える手で俺の顔を探りながら言った。


「最後に、もう一度キスして」と。


 リリーに言われるままキスをした。

 おそらくこれが本当に最後のキス。

 キスの途中でリリーがまた苦しみだし、俺を突き飛ばす。

 そして、絶え絶えになる呼吸の中から声を振り絞った。



「今まで あり が と うっ   さ よ う な  ら    」


 その苦しそうに閉じられた目からは、幾筋もの涙がつたって零れ落ちていた。


 それが、僕の見たリリーの最後の姿だった。

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