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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***爽太さんと私④***

 匂いを追って、十年前のあの日と同じように店を飛び出したが、その結果もあの日と同じようにその匂いの主を見つけることは出来なかった。


 そして人通りの多い原宿駅前の交差点に立ち尽くしていた。

 恨めしそうに風の吹いてきた方向を見つめると、爽やかな風が私の頬をかすめた。


 その拍子に、漸く思い出した名前。


『爽太……。柴田……爽太』


 胸につかえていたことが漸く分かり嬉しさに体全体が暖かく包まれながら、まるで夢遊病者のように原宿駅へと向かう。


 人で混雑する中、誰かに呼びかけているような声が聞こえた。


「あの!AVとか変なアンケートとかではなくて、決して怪しいものでもありません。当事務所には女優の○○さんやファッション雑誌などにも数多くのモデルを輩出しておりますので是非話だけでも聞いて頂ければ……」


 どこかでモデル事務所のスカウトらしい女性が誰かをスカウトしているらしい。


 さすがにお洒落な街だと思う反面、私ももう少しお洒落してスカウトに声を掛けられるようだったら爽太さんも私の傍にずっと居てくれるのかな。

 なんてことを思いながら駅前の横断歩道を渡った。


「あの。お急ぎでしたら名刺だけでも……気が向いた日にお気軽にご連絡いただければ……あ、あのっ」


 後ろから声が追ってきたような気がしたけれど、所詮私には関係ないと思い、構わずに改札へ向かう。


 “どうせ誰かの携帯電話の話し声でしょう”




 南さんが待っている新宿に、早く行かなければ。

 体の大きな南さんが、お腹を空かして待っている姿が頭の中で浮かんだ。


 南さんは、屹度私がどんなに遅れても、先にランチを食べたりはしない。

 もちろん一緒にランチをする約束なんかしてはいない。


 けれども、南さんはどんなにお腹を空かせていても、必ず私と一緒に食事をすることを楽しみにして待っていてくれる。


 だって、彼ったら私の事が好きなんだもん。


 私は、道草を食った分を取り戻す様に、急いで改札を抜けて山手線に飛び乗り南さんが待っている新宿へと向かった。

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