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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***スーパーナチュラルな私②***


 ◇◇◇◇◇◆


 麻里は帰って来るなり、黙々と残った仕事をこなしていた。


 “あれ? 全然結界が効いていないじゃない??”


 驚いてはみたものの、結局 “結界” なんてものは映画やドラマの中でしか見たことがない事を思い出す。

 お化けにしても悪魔や、それを退治する結界にしても結局はSuper natural(超自然現象)だものね。


 あーなんか、まんまと南君に乗せられたわー。

 と、後悔した途端、麻里の異変に気が付いた。


 いつもニコニコしている麻里の顔が歪んで怒っているような顔になり、パソコンのモニターを睨み付けながら、なんだか体がピクピクと震えているしパチパチと薪が燃えて弾けているような音が微かに聞こえてくる。


 “まっ、まさか本当に憑依が解けるの!?”


 私は咄嗟にテーブルに置いたままにしていた聖水を手に取った。

 そう、リリーの怨念と闘うために。


 麻里が急に席を立ち、私の方へ突進してきた。

 その顔は、いままで見た事も無いほどの物凄い形相。


 思わず「南君!」と助けを呼んだ。

 南君は大麻おおぬさを手に取ると、私に向かって「聖水!」と叫ぶ。


 そうだ私の手には、これがあったのだ!



 目を瞑って、突進してくる麻里――いいえ、リリーの怨念に向けて聖水を振りまいた。

 直ぐに南君が隣に並んで、大麻を左右に振りかざす。


 リリーの突進は一時的に止められた気がするけれど、このあといったい何が起こるの?




 時間が止まった世界で、時計の針だけがカチカチと鳴り響く。


 私の前で、聖水を浴びて動きの止まったリリーの喉が「クククッ……」となる。

 その声は、苦しんでいるようにも聞こえ、またあざ笑う様にも聞こえた。


 “ヤバイ! 反撃される!!”


 そう思って逃げようとした瞬間、リリーの様子がおかしいことに気が付いた。


 口の端から緑色の液体がツーっと一筋、糸を引くように流れたかと思うと「カハッ!」と声を上げ、その場にうずくまり咽るように苦しそうに咳をする。


 思わず背中を摩っていると、麻里の体内から異様なものが流れ出ているのが分かった。


 白い大理石調のタイルの床に吐き出されたのは、この世の物とも思えないグロテスクな緑色の物体。

 しかもシュワシュワと泡を吹きながら、まるで燃えるようにパチパチと弾けている。


「編集長、とどめを!」


 南君に言われて、その緑色の物体に追い打ちを掛けるように聖水を浴びせると、激しく唸り声を上げるように、シュワシュワパチパチと鳴ったあと、静かな緑色の水に戻った。



 夢中だった。

 夢中で二度も聖水を掛けてしまった後、気が付いた。



 リリー……いや、私はこの手でチャームを殺してしまったのだと。


 そう思った瞬間、急に体の力が抜けて、その場に座り込んだ。


 目から止めどなく涙が溢れ出て、吐き出されたチャームの怨念の上にポタポタと滴を落としていた。

 私はチャームを捨てただけでは飽き足らず、怨念として生き返ったチャームを殺してしまったのだ。


 私は泣き崩れ、何度もチャームの名前を叫んでいた。

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