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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***スーパーナチュラルな私①***


 メールのチェックをしながら、新宿のコンビニエンスストアで買った “口の中で弾けるメロンソーダ味のパチパチキャンディー” と言うお菓子を一粒口に入れてみた。

 一粒と言っても、その一粒は普通のキャンディーほどの大きさも無くて、砕けて割れた金平糖の欠片くらいの大きさしかない。


 “あれっ、なんか普通じゃん”


 そう思った次の瞬間、パチンと口の中で何かが弾けて溶けた。


 “なにこれ!?”


 おもわぬカルチャーショックに一瞬吹き出しそうになったけれど、今は仕事中。 

 それに編集長と南さんの只ならぬ様子を見ると、とても噴き出して笑うわけにもいかない。

 しかもそのうちの一人、編集長はさっきから私の顔をずっと見ているし……。


 メールのチェックをしながら、今日の事を思い出していた。

 編集長は私がまだチャームと呼ばれていた頃に、捨ててしまったトラウマがあって、私が思うよりもリリーの幸せを祈ってくれている。


 だから今日の打ち合わせも、私に任せてくれた。

 おそらくは、南さんが無理やり引っ張って来たのだと思うけれど、私と爽太さんの様子を見に来てしまった。 

 断ることも出来たはずなのに、断り切れなかったのは、言うまでもなく爽太さんのことが好きだからに違いない。


 考えながら一粒弾けるキャンディーを口に頬張ると、またパチパチと弾けて体が自然にプルプルと震え、吹き出しそうになるのを必死で堪えた。


 爽太さんも編集長と同じ。


 私が一方的に好きだと告白して、私がリリーだと分かったときからズット優しくしてくれてはいるけれど、今日お蕎麦屋さんの前で編集長を見た瞬間の動揺は只事ではない。


 さすがに私が見染めただけあって、みっともなく取り乱したり言い訳したりするようなことはなかったけれど、あの急激な心拍数の上がりようは例えるなら浮気がバレた旦那さん。


 食事中も平常通りの私と南さんとは違って、爽太さんと編集長の心拍数は上がりっぱなし。


 まったく二人とも初心うぶなんだから。 こっちの方がドキドキするじゃない。

 しかし、これからどうしたらいいのかしら?


 編集長は過去のトラウマから、身を引く気満々だし。

 かといって、爽太さんの心もフラフラしているし……。


 これじゃあ二人にとって、私と言う存在は、ただのお邪魔虫じゃない?


 考えれば考えるほど、ムシャクシャしてきてキャンディーを無造作に摘まんで口の中に入れて“しまった!”と、思った。

 ついつい考え事に夢中になって、このキャンディーが弾ける事を忘れて、一掴みも口の中に放り込んでしまった。


 キャンディーは唾液によって溶かされて、その溶かされた飴の中に仕込まれた炭酸が唾液と反応して弾ける仕組み。


 だから沢山頬張ったことに気が付いたあとで思いっきり唾液が出ないように踏ん張ってみたけれど、パブロフの犬よろしく味のあるものが口の中に入ると条件反射的に唾液が出てしまう。 


 それもチョット酸っぱいメロンソーダ味なら、なおさら。

 口の中に含んだ大量のキャンディーが一斉に溶けだし、次々にパチパチと弾けだす。


 それはまさに戦場!

 所狭しと、弾ける爆弾は、あっと言う間に口の体積以上に膨れ上がる。


 “もう駄目! これ以上我慢できない!”


 早く台所の流しに吐き出さないと!


 そう思って、慌てて席を立った。

 しかし、私の席と台所の間には、何故か編集長が立っていた。


 いや、立ちはだかっていた。


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