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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***結界の中の私①***


 お蕎麦屋さんを出て麻里と柴田さんと別れた南君と私は編集部に戻った。

 南君は「さあ、取り掛かりますよ!」と言って、大きなバッグを開き神事の時に使うようなものを取り出して言った。


 南君に、何をするつもりなのか聞くと、ハロウィンの飾りつけだと言った。


 しかし南君がバッグから取り出した物をみると、それはハロウィンで見慣れたカボチャとかコウモリやランタンなどではなく、どう見ても神社で見るような和風のもの。


「でも、なんだかおかしくない?」


「大丈夫ですよ。もうすぐハロウィンなんですから」

「でも、ハロウィンって、西洋のお祭りよ。それだと、おかしいわ」


「でも、でもって、確りしてくださいよ。これは僕にとっても、編集長にとっても、そして麻里ちゃんにとっても大切な事なんですから」


「でも……」

「あー。また、でもが出ましたね。もう、でもは、禁止です」


 そう言いながら、南君はバッグの中から、しめ縄を取り出した。


 ちょうど支度を始めた頃に里美と麻丘さんが戻って来た。


「えー。ハロウィンの飾りに “しめ縄” ですかぁ?」と、里美が言った。


 これには皆ドン引きすると思っていたら、結構みんなノリノリで “しめ縄” を壁に掛けるのを手伝っていた。


 部屋の周囲をしめ縄で囲ったあとは、ふたつの榊立てに水を入れて榊を挿した。

 そしてその中央には線香立てに火打石、そして洗い米を盛った。


 しめ縄を張り巡らせた壁には何枚ものお札を張り、しめ縄には所々に“紙垂(しで)”と言われる半紙で作ったギザギザの紙を差し込むため、南君が半紙で紙垂(しで)の作り方を皆に教えていた。


「おお~! 結構、本格的!!」


 出来上がった和風のハロウィン飾りは、皆が感動の声を上げるくらい本格的で厳か。


「南君の実家って、神社かお寺さん?」

「正解です! と、言いたいところですが違います。でも、これくらいは日本人として造れて当然ですよ」


 特に自慢するでもなく、出来栄えを気にしながら言う南君。

 私はギザギザの紙の名称も、その作り方も知らなくて恥ずかしくて、里美に聞いてみた。


「里美も、こんなの作れる?」

「まさか! 陰陽師じゃないんですから作れませんよ」


 “陰陽師!”


 その名前を聞いて、ようやく南君がしようとしている事が分かった。


 南君は、ハロウィンの飾りつけをしていたわけではない。

 この部屋に結界を張って、悪霊を退治しようとしているのだ。


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