***小悪魔が降臨した私④***
◇◇◆◆◇◇
私の隣の席に南さんが座り、編集長は私の向かいの柴田さんの隣に座った。
「あっ、すみません。なんかダブルデートみたいな席順になっちゃいましたね」
あれだけ堂々とした態度で、編集長の手を引いてお店に入って来たと言うのに、急にソワソワしだした南さんは「席、変わりましょうか?」なんて言い出す始末。
“もっと男らしく、堂々としなさい!”
腰を上げようとする南さんの太ももをズボンの上から強く抓り、動こうとする足をパンプスで思いっきり踏みつけた。
屈強な元ラガーマンの南さんに対して私の力など到底及ばないと思っていたけれど、踏み付けは以外に利いたみたいで目を見開いて額から汗を流していた。
私に足を踏まれて少し狼狽した南さんは、緊張したような強張った顔で “なにかマズイことでもあった?” と質問するように振り返るので「体格のいい男性が二人並ぶと、窮屈でしょ」と窘めた。
「ああ、さすがに、それはそうか!」
南さんが腕を振り上げて、あの大きな歯を見せて笑い出し、出されたおしぼりで額の汗を拭う。
慌てている様子を隠そうとして、余計に丸分かりな南さん。
柴田さんが、その南さんの様子を不思議そうに見ていた。
これはいけない!
私の南さんが、私の爽太さんに〝おかしな奴″ だなんて思われてしまう。
だから私は慌てて「南さんは大学時代、ラグビーをしてらしたのよ」と爽太さんに自慢げに報告した。
「ほう、ラグビーですか、どうりで良い体格をしていらっしゃると思いました。しかし、日本も強くなりましたよね。で、どこの大学ですか?」
「M大です」
「ほう。これはまた強豪校じゃないですか」
「いやあ……ところで柴田さんは、どんなスポーツを?」
「H大で野球をしていましたが、途中で肩を壊してしまいましてね」
「これもまた強豪校じゃないですか。いや御立派、御立派」
二人は、意気投合して、ノリノリで大学時代のスポーツの話をしていた。
話が盛り上がっている所に、若い女性店員が注文を聞きに来た。
「えっと――麻里ちゃんは何にしたの?」
南さんに聞かれて、正直に答える。
「私は、ざるそばの二段盛りです」
すこし恥ずかしくて、言葉の最後にペロッと舌を出して肩を上げた。
「麻里ちゃんが二段だったら、じゃあ僕も二段にしよう! 編集長も二段盛りでいいですよね」と、南さんは勝手に注文をしてしまった。
「ちょ、ちょっと南君。私二段盛りなんて食べられないわよ!」
編集長の注文を勝手に二段盛りにしてしまった南さんだけど、このあとどうフォローするつもりなのだろうと、興味津々で二人の会話を聞いていた。
「大丈夫ですよ。もしも食べきれなかったら、直ぐ隣に信州産まれで蕎麦が三度の飯より好きな人がいますから」と言って笑った。
“んっ!? それって私が爽太さんに、あげるはずだったのよ”
……もしかして南さん気が付いちゃった??”




