***小悪魔が降臨した私①***
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爽太さんが、せいろの二段盛りを選んだので、私も同じ二段盛りにした。
「大丈夫? そんなに食べられる?」
心配して聞いてくれる爽太さんに
「だって、レディーの前で、いかにも “3段盛りはマズイよなぁ“ って言うお顔をしていらっしゃるから、私が代わりに3段目を注文してあげました」と、悪戯っぽく言葉を返す。
すると爽太さんは、テレビ漫画『サザエさん』に出てくる浪平さんのように「これは一本取られたな」と頭の後ろをポンと叩いてからお店の人に注文を伝えた。
「しかしよく分かったね。俺がいまだに蕎麦なら別腹だってこと」
「だって、好きって言う感情は全てにおいて、そうそう変わるものではないでしょ。好きな食べ物、好きな色、好きな洋服……野球は今でも好きですか?」
「ああ、でも今は観て応援するだけ。
リリーには格好悪くて報告できずじまいだったけれど、結局長野を離れて東京の強豪校に入ったのは良いけれど、3年生でやっと補欠に入るのが精一杯だった。
おまけに大学では肩を壊してしまい、選手として自ら引退してマネージャーとして過ごした。
目の前で、その壊した肩をグルグルと回して見せながら陽気に笑う爽太さんを見ながら、いまでも私はこの人が好きだと思った。
そう。好きって言う感情は、そう変わるものではない。
たとえ、いったん死んで、また生まれ変わったとしても。
そのとき、お店の外でガシャンと何かが倒れた音がした。
更にその後には、ドスンと言う音も。




