***騒々しいお店の外と私③***
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小文社の大井編集長に “こんな所で、何をしているんですか?” って聞かれて、返事に困っていた。
独身貴族の柴田だが、密かに想いを寄せている人があるとしたならば、いま目の前にいる小文舎の大井編集長に間違いない。と、俺は睨んでいる。
その大井編集長を前にして “柴田が、おたくの美人編集者にメロメロで、いま二人で蕎麦屋に入っています” なんて言えるはずもない。
俺は、咄嗟に店が外に出しているイーゼル看板の前に立ちそれを隠して「この辺りに、いい中華料理の店があるって聞いて来たのですが、一本通りを間違えたみたいです。 どうですか? 一緒に」
「そっ、そうね……」
大井編集長がそう答えてくれて我ながら上手く誤魔化せたと思った矢先、大井編集長と一緒に来たカメラマンの南君が鼻をクンクン鳴らしながら近づいて来るものだから、体重が後ろ寄りになって隠していた看板を倒してしまった。
ガッシャ~ン!!
看板を倒した拍子に、お店の壁にドンと打ち付けられて転んだ。
「大丈夫ですか!?」と、慌てて飛んで来てくれた大井編集長。
南君は倒れた看板を元に戻し「ああ、いい蕎麦の匂いがすると思っていたら、ここ蕎麦屋さんだったんですね」と、隠していたつもりの看板に気付かれてしまった。




