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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***騒々しいお店の外と私②***


 ◇◆◇◆◇◆



 編集長に言われ、走って裏側にまわると、既にストーカーと編集長が対峙していた。


 相手は特に武器になるようなものは持っていないみたい。


 背丈は標準位だけど体つきは華奢な部類だから、安全な部類かも知れない。

 だけどストーカーは追い詰めると、何をしでかすか分かりはしないから、油断する訳にはいかない!



 相手に気付かれないように、後ろからそーっと近づく。


 そして両手を伸ばして、その体をホールドしようとした瞬間、僕に気が付いた編集長がニコニコの笑顔を向けて声を掛けてきた。


「南君、こちらは柴田さんと同じ会社の水沼さんよ」


 羽交い絞めにしようと持ち上げていた手を止め「えっ? ストーカーじゃなかったんですか??」と、呆気に取られて固まった。


「ス、ストーカ~!? 俺が? 失礼だな、君!」


 水沼と呼ばれた男が、怪訝そうに僕の持ち上げていた両手を見たので、バツが悪くて何事もなかったように降ろしてペコリと頭を下げた。


「ホント失礼よ、南君」と編集長も続けて同じことを言う。


 “おいおい、自分で言っておきながら、いきなりの手のひら返しかよ!”


 心の中ではまるでムンクの絵のように頬に手を当ててそう叫んだものの、小文舎の編集長と言う立場と取引先の社員と言う関係では、まさか編集長自らが “実は私がストーカーだと間違えました” なんて言えるはずもないと思い、その叫びを胸に閉まっておく。


 抗議の意味を込めて大井町編集長に目を向けると、まるで僕をお地蔵さんとでも勘違いしているように両手を合わせて拝んでいた。


 “貸し、ひとつですよ。へんしゅうちょう”


「ところで大井編集長、こんな所で何しているんですか?」

 僕に手を合わせている最中、急に振り返った水沼さんに聞かれた編集長の慌てる様子が可笑しかった。


 意外に天然系で、可愛い。


 理由を聞かれた編集長だけど、まさか取引先の社員の目の前で “お宅の柴田さんがうちの社員を連れて、昼食に出たのをつけて来ました” なんて言えやしない。


 さて返答は如何に?


 興味本位で編集長の言葉を待っているところに、近くから蕎麦の好い匂いがしてきた。


 クンクンと鼻で臭いを嗅いでいる僕に、水沼さんは「どうかしましたか?」と声を掛けた。


「いえ実は、帰社するために飯田橋で降りたら丁度お昼時だったので、どこかで食べて帰ろうかってことになりましてね、そしたらどこからともなく蕎麦の好い匂いがするじゃないですか。それでその匂いに誘われてここまで来たんですが、どこですかねぇ?」


 “南君、ナイス!!”


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