***騒々しいお店の外と私①***
よく見るとその男は、落ち着きなくビルに体を隠しながら顔の半分だけ出して様子を窺っていて、その姿は誰がどう見ても怪しいとしか言いようがない。
“ストーカー!?”
麻里はあのように可憐な容姿だから、ストーカーに目を着けられてもおかしくはない。
“麻里を守らなければ!”
「南君! 通りの反対側にまわって!」
「えっ、なんで??」
「見て分からないの? ストーカーよ、あの男!」
「りょっ、了解!」
ストーカーと聞いて、南君は慌てて反対側の通りに行くために、逆方向に走り出した。
私はストーカーに気付かれないように、電柱や止まっている車の影を利用して巧みに接近していった。
◇◇◇◇◇◇
「何にする?」
爽太さんが広げたメニュー表には、冷たいお蕎麦と温かいお蕎麦の二つの項目に分けられて、何種類かのお蕎麦のメニューが書かれてあった。
「お蕎麦しかないですね」
そう言って笑うと「嫌だった?!」と、爽太さんは急に慌てた顔になり可笑しかった。
「いいえ、予想していました。相変わらずお蕎麦が好きでホッとしました」
「ホッとした?」
「だって、変わっていないでしょ。長野に居たときから」
「そ、そうだね。歳だけは取ってしまったけれど」
出されたおしぼりで汗を拭く爽太さんは、さも愉快そうに笑う。
私も釣られて笑い返したけれど、少し寂しい。
だって私のほうは、爽太さんと同じ時間を生き抜くことが出来ずに一度死んでしまって、もうあの頃のスピッツ犬のリリーのまんまじゃないんですもの。




