***爽太さんとの打合せに心を躍らせる私①***
柴田を会議室に送り出しデスクに戻ろうとしたとき、ちょうど小文舎の大井編集長を会議室へ案内してきた鈴木さんが戻って来たので立ち止まって待って様子を聞いた。
「どう。大井編集長、おめかししてきていた?」
「はあ……」
溜息をつく鈴木さん。
どうも様子がおかしい。
「どうした?」
「それが、いらっしゃったのは大井編集長ではなくて……」
「大井編集長ではない。じゃあ倉橋さんか麻丘さん?」
「……違います。もっと若くて、綺麗な人」
「綺麗な人? どんな感じ?」
「普通の綺麗な人と言うより、女優かモデルさんみたいな人でした」
「芸能人に例えると、どんな人?」
「例えると……たとえると……チョッとハーフっぽくて」
「ハーフっぽいって、ロー〇みたいなガチで外人系なの? それとも中条あ〇みみたいな日本人っぽいハーフ?」
俺は、気になって仕方がなくて鈴木さんの答えを急かす。
「おそらく、日本人ぽい方だと思います……」
「例えるなら、誰?」
「えーっと……」
「誰、誰?」
「ス・スピッツみたいな」
「スピッツ!? そりゃあ男性の音楽グループじゃないか」
「あー、そのスピッツじゃなくて、犬の……ほら真っ白で鼻がキリッとして目のクリクリの」
「美女の例えがスピッツ……それじゃあ、柴田の “携帯の君” じゃないか」
「あっつ、それ! まさにそのイメージ、柴田さんの待ち受け場面 “携帯の君” です!」
鈴木さんが、ハッとして重大なことに気が付いたように、人差し指を立てて言った。
「そんなバカな……」
そう言いながら俺は、打ち合わせ時間を待つ間の柴田の態度が、いつもとは明らかに違ったことを思い出していた。
「これは、なにかある……鈴木さんチョッといい」
「はい?」
俺は、鈴木さんを傍まで呼び寄せると、小さな声で耳打ちした。




