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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***爽太さんの職場に向かうことになった私③***


「もしかして、南君」


「そう。リリーには可哀そうだけど、麻里ちゃんの体から出て行ってもらう。僕は輪廻転生ではなく、これは柴田さんを忘れられないで彷徨っていた犬のリリーの魂が麻里ちゃんに憑依したものだと確信しています」


「どうして、そう思うの?」


「だって輪廻転生なら、物心ついた時が事の始まりにならなければおかしいでしょう? それが中学校の時に富山から東京に遊びに来たとき急にと、言うのが怪しいと思います。 僕が思うにリリーの魂は東京に行った柴田さんを追って自らも東京で彷徨っていた。そしてそこで憑依し易そうな人物として麻里ちゃんを選んだ。つまり麻里ちゃんはリリーの宿主にされたと言うことだと思います。だから僕たちで退治しなければ」


 そう言うと、鞄の中から大麻(おおぬさ)を取り出した。

 (※大麻=お祓いなどで使われる白木の棒の先に紙垂(しで)を付けたもののこと)


「酷いわ!」


「酷くはないと思います。成仏しきれない魂と一緒に暮らす麻里ちゃんの事を思えば、僕は鬼にだってなれる」


「成仏できない……」

「そう。きっとリリーは成仏できなくて、麻里ちゃんに憑依したんだと思います。だから編集長も僕に協力してください」


「私も……何故?」


「いいですか? リリーはこの世に心残りを残して亡霊として彷徨っていたんですよ。それが麻里ちゃんに憑依して、前の飼い主であり心残りの対象者である柴田氏と会うことが出来た。次に来るのはなんです?」

「叶えられなかった想いの成就?」


「そう、そして次に訪れるのは?」


「……成仏!?」 

 それまで南くんに聞かれるまま、気のない返事をしていた私はハッと気が付いた。


「正解です! つまり成仏した後は、もう麻里ちゃんと柴田氏を繋いでいたリリーは居なくなると言うことです」

「いなくなったあとの2人は……」


「年の差も20歳近くありますから、そのままの恋愛が続くのは難しいでしょう。恐らく2人の関係は直ぐに破局へと向かうでしょう。つまり2人の倖せの為に身を引くことが必ずしも2人の為にはならないと言うことです。リリーには悪いが、ここは無理にでも憑依をはらい、抜け出たリリーの魂が悪霊になる前に除霊しなければなりません。協力してもらえますね、編集長」


「わかりました」


 私もようやく決心した。



 ◇◆◇◆◇◆


 あの夜、麻里ちゃんから犬だった頃の飼い主さんに恋をした話を聞いた。

 そしてそれが、その日にやっと巡り合えた柴田さんだったことも。

 

 しかし、それは犬のリリーの話で、今の麻里ちゃんは犬ではなくて人間だ。

 もし、本当に輪廻転生だったとしても、そんな話を聞かされて「あきらめて下さい」と言われても、何を諦めればいいんだ!?


 僕は断じて諦められない‼


 犬のリリーなんかに、人間松岡麻里に恋をした俺の心が分かってたまるか!

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