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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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39/88

***南さんと大井編集長と私②***


 ◆◇◆◇◆◇


 ベンチに腰掛けている私達を夕焼けが赤く染める。


 その炎にも似た色に助けられ、勇気を出して爽太さんに「好き」と告げる。

 おそらく真っ赤になっているはずの私の顔も爽太さんの表情の変化も、この夕焼けが搔き消してくれる。

 従順な犬だって飼い主の言うことを聞かない時だってあるし、おとなしい女が悪女になることもある。

 爽太さんの胸に顔を埋めて確りその手を握っている今の私が “それ”。


 爽太さんが困ることも、その理由も、そして松岡麻里がそれを言ってはいけないことも知っているのに、私の想いは留めることができなくて、私は顔を持ち上げて涙で濡れた瞳を見せてそっと囁くようにお願いした。


「抱いて」と。


 躊躇っていた爽太さんは私の肩を抱きよせて、胸に埋めていた頭を優しく撫でてくれる。

 今でも爽太さんが、私がして欲しいことが何なのか分かっていてくれることが嬉しくて、いつまでも爽太さんの胸に顔を埋めて頭をナデナデしてもらっていた。



 ◇◆◇◆◇◆


 日が沈み、あれだけ周り中を赤く染めていた空も真っ黒に染まり、その端に未だ少しだけ残り香のように紫色の部分が残るだけ。


 外灯に照らされてベンチに腰掛けている二人のシルエットは、まるでフランス恋愛映画の一場面のように思いながら木の陰に隠れた大井町編集長の後ろから僕(南雄大)は見ていた。


 二人のシルエットが次第に夜の闇に慣れて来た瞳に色を映し出し、湿気を帯びた夜の空気と闇が、麻里ちゃんを驚くほど妖艶に映し出していた。


 姿は人間松岡真理そのものなのに、違う世界から迷い込んで来た幻影イリュージョンの様にも見える。


 本来なら麻里ちゃんの様に美しい女性なら妖精フェアリーの様に感じると思っていたのに、今は亡き者に見えるなんて不思議に思いながら覗いていた。


 しかしそのイリュージョンの麻里ちゃんと柴田さんの2人の姿は、何故か古くからの恋人同士のように思えてくるから更に不思議で幻想的だ。


 そのうち麻里ちゃんが柴田さんの胸に顔を埋め、その顔を持ち上げて何かを囁いているときにその大きな瞳に光る水滴を見つけると、幻想的な雰囲気に奪われそうになっていた心は急に現実世界へと戻され僕の心は “嫉妬心” に変わる。


「あの野郎!」


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