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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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28/88

***深大寺へ導かれる私①***

 同僚の水沼に頼まれて原宿で靴を買った日は丁度社内で緊急会議があり、実現しなかった約束を数日前にようやくヤツは果たした。


 数日分の利子が付いた事を水沼に伝えたところ、仕方がないから好きな所で食わせてやると言ったので、俺は水沼に蕎麦を奢らせた。


 俺が当然のように「蕎麦屋に行こう」と言うのを、水沼は予想していたように笑い、お目当ての老舗蕎麦屋に俺を連れて行った。

 蕎麦屋に着いたのは、昼食時間を過ぎていたので意外に空いていた。


 注文した蕎麦をペロリと平らげると、まだ食べている水沼に「お前、本当に蕎麦好きだよなぁ~」と言われたので、いつものように「信州生まれだからな」と威張って見せた。

 そのとき水沼がニヤッと笑い「東京にも蕎麦の名所があってな……」と、ポケットから観光案内所が発行したような賑やかな地図を取り出した。


 イラストで書かれた地図は、どこかのお寺の案内図のようだが参道には沢山の蕎麦屋が書かれていて、寺の案内なのか蕎麦屋の案内なのか分からない。

 地図に載っている蕎麦屋の中には、知っている蕎麦屋も何件かあった。


「なんだ、これ?」

「そこに行って来いよ」


「なんで?」

「そこの寺は、縁結びの御利益がある。柴田ももう直ぐ四十だし、そろそろ所帯を持つ事を真剣に考えてもいい頃だろう」

 余計なお世話だと顔に出ていたのか、断る言葉を出す前に駄目押しの台詞を言われる。


「蕎麦と一緒になら、ついでに寄れるだろう。いつまでも携帯の君ではいかんだろう」

 “携帯の君” と水沼が言ったのは、俺の携帯の着信表示に使っているスピッツ犬の写真のことだ。


『普通ここへ貼るのは彼女とか、お気に入りのアイドルとかじゃないの?』と同僚たちからよく言われるが、入社以来ずっとその写真を使い続けているので仲間達から “携帯の君” と言われるようになった。


 未だに独身の俺が若い女性より、犬のほうが好きな男と揶揄されることもある。

 それで水沼は、俺に縁結びの寺を紹介した訳らしい。


 しかし、蕎麦と聞いて迷った。

 確かにこの狭い地域に、この数の蕎麦屋が揃うなんてところは、そうざらにはない。


 俺の出陳地である長野県の戸隠地方は日本三大蕎麦のひとつで、蕎麦の名店は多いが歩いて行ける範囲内にこれほど密集してはいない。


 ちなみに日本三大蕎麦とは島根県の出雲そば、岩手県のわんこそば、そして俺の地元にある長野県の戸隠そばの事を言う。


 蕎麦屋を回って寺で一休みして、また蕎麦屋を回るのも悪くないかと触手ならぬ食手が動いた。


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