***処分室から聞こえてくる悲鳴と私①***
最後の取材は、これからダイが入ることになる保護収容棟と、今はもう使われていない処分室。
最初に入った保護収容棟には思ったより少ない数の犬と猫がいて、みんな意外に静かにお行儀よくしていた。ここにはさっきの譲渡会に出ていた犬や猫たちはいなくて、譲渡会に出ていた犬や猫たちは別棟の訓練棟に居て躾や壊れてしまった人との信頼関係を再構築できるように訓練を受けている。
この保護収容棟に居るのは、まだ病気やケガ、それに心のケアや基本的な躾の有無が確認される前の犬や猫たち。
ここである程度ペットに戻る資質なども見られ、再びペットとして戻る訓練を受けて行く。
そして本格的に譲渡会に向けて訓練が行われるようになると、この動物愛護センターの棟を出てNPOやボランティア法人に迎えられ、ダイのように高齢で譲渡会に向かない犬も保護収容棟で各種検査や治療を受けたのちは、ボランティアの施設で大切に見守られることになる。
保護収容棟を見学した後は、今は使われていない処分室へと向かった。
冷たい感じの殺風景なこの部屋は、幸いここ数年使われていない。
檻で囲まれた広い部屋の奥にあるのが処分室で、この広い部屋は、その前室となっている。
つまり処分される犬や猫たちは、この前室で殺処分室の準備が整うのを待つわけだ。
当然、学習能力の高い犬や猫たちは、この部屋に入ったきり戻って来なかった仲間の匂いと次の部屋に漂う不気味な死の匂いを嗅ぎつけて不安になる。
そしてペットとして飼われていた経験を持つものは、飼い主が助けに来てくれることを強く願って吠え叫ぶか、もう自分の力ではどうしようもないことを知り諦めて黙ってしまうかの二通りになる。
決して人間たちが思っているように、何も知らないでノコノコと処分室に入って来るわけではない。
人間も犬や猫も生まれてくる時期や場所を選べないのは一緒。
かつて世界中で戦争が繰り返されていた時代に当たった人たちは、好むと好まざるに係わらず戦争に巻き込まれて哀しい運命をたどっていった。
そして、その戦争が終わって世界の主要国で平和になった今でも、どこかで民族紛争やテロといった戦争が繰り返されている。
犬や猫などのペットも同じで、時代が違えば戦争に合い、国が違えば或る日突然食用にされるため酷い虐待に合って殺される。
そしてこの日本でも生まれる地域により飼い主に見放されたり迷子になったり、そして野良犬として生まれただけで殺される運命が待っている。




