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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***人間に生まれ変わった私①***

 朝目が覚めて、シャンプーして髪を乾かしたあと、長い髪を丁寧にブラッシングしていると遥か昔犬だった頃、飼い主にしてもらった懐かしい記憶が蘇ってくる。


 私には人間に生まれ変わる前の、犬だった時の記憶が今でも色濃く残っている。

 だからこうして自分でブラッシングしていても、昔、私が飼われていた頃によくブラッシングされていたことを思い出してウットリしてしまう。


 でも、今の私は人間。

 しかもOL一年生。

 だから今は、あの頃のようにいつまでもブラッシングしてもらう暇はない。


 犬だった頃は、家族の皆が職場や学校に出た後は、ズーっと暇を持て余していた。

 けれども、今は自分自身が働きに出る方。


 学生時代も感じていたけれど、人間って思った以上に暇がない。

 あーあ、なんで私、人間になんかに生まれ変わって来ちゃったんだろう……。


 犬じゃなくても、猫だったら自由気ままにお散歩に出て、昼間はズーっとお昼寝して過ごすことができるのに。

 ブラッシングをしながら、そんなことを考えていると、鏡に映った壁掛け時計が私に無言の警告を与える。


 “あら、もうこんな時間!”

 私は慌てて髪を整えてから、軽くお化粧をして出勤用のアイボリーのチノパンと白のブラウスに着替える。

 それから首元に、首輪の代わりに青色のリボンを巻く。


 人間に生まれ変わっても、首に何か撒いているのは心細い。


 玄関でパンプスを履いて「行ってきます」と、私の他には誰も居ない部屋に言って外に出た。

 アパートの扉を開けて表に出ると、五月の空が抜けるように青く広がり、吹く風が新緑の香りを乗せて心地好い。


 最寄りの駅までは大通りを通るバスだと十分くらいで着くけれど、私はいつも畑や果樹園などの残る裏通りをゆっくりと時間を掛けて歩いて行く。


 住宅の庭先に植えられた草花や木々香りが、まるで香水のように私を包み。時折、キャベツ畑からモンシロチョウが「あそんで!」と、遊びに来て可愛い。


 藤棚の良い香りに誘われて近付くと、ハチたちが美人の私に気が付いてブンブンとまとわりつく。

 ハチはチョット苦手なので「ごめんなさい」と声をかけて、そそくさと先を急ぐ。


 朝の通勤途中のお散歩は私にとって至高のひと時。


 バスに乗れば、五、六分も有れば駅に着く。

 けれども私は、その道を三十分かけて歩いて行く。

 どんなに忙しくても、どんなに前の夜に帰りが遅かったとしても、これだけは止められない。


 何故ですって?

 だって、躾のいいワンちゃんには、お散歩は欠かせないものよ。


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